マーティン、デスパイネ、そしてパスクチ…なぜロッテの外国人は愛すべき選手が多いのか

マーティン、デスパイネ、そしてパスクチ…なぜロッテの外国人は愛すべき選手が多いのか

マーティンとレアード

 昨季はシーズン最終盤まで優勝争いを繰り広げた末、惜しくも2位に終わった千葉ロッテマリーンズ。『頂点を、つかむ。』というスローガンを掲げた今季は、昨季の悔しさをバネに絶対優勝するという決意が伝わってくるけど、ゴールデンウィーク明け(5月8日)の時点での成績は12勝20敗。開幕前の期待値からすると、波に乗り切れないなんてものじゃない。ファンも「こんなはずじゃなかったのに……」と、モヤモヤする日々を過ごしています。

 チームの調子が上がってこない要因はいくつも考えられるけど、そのなかでも外国人野手の成績がなかなか伸びていないことはかなり痛い……。

 思い返してみれば、昨季も打線は外国人野手に牽引してもらいっぱなし。レアードは29貫もの寿司を握り、マーティンもここぞという場面で何度も殊勲打をかっ飛ばしてくれました。本当に頼りになったなあ。

 特にマーティンは終盤に右足甲骨折というアクシデントに見舞われ、レギュラーシーズンは絶望とまで診断されたのに、完治を待たず2週間で戦線復帰。万全とは程遠いコンディションでも激走を繰り返し、プレイでチームを鼓舞し続けてくれました。

 骨が折れているのに運動するなんて、想像するだけで痛すぎて変な汗が出てきますよ。常人のオッサンはちょっと筋肉痛になっただけでもしんどいですからね。なのにプロ野球という最高峰の舞台で、優勝したいという一心で激痛を我慢しながら強行出場し続けたマーティン。チーム愛あふれるその姿に心を打たれないマリーンズファンは皆無だったでしょう。

■チーム愛あふれる外国人選手に恵まれるマリーンズ

 日本のプロ野球チームにとって、基本的に外国人選手は“助っ人”。だからこそ起用できる人数には制限があるわけですが、貴重な枠を使っているのに成績が上がらなければファンから罵声を浴びせられ、チームの負けが込めばその責任を押し付けられるという厳しい立場になりがちです。

 でもマーティンやレアードがどんなに不振にあえいでも、僕は罵声を浴びせる気持ちには一切なりません。それは彼らがマリーンズというチームを大切に思い、チームのために献身的にプレイを続けていることがビシビシと伝わってくるからなんですよね。

 マーティンは昨季終盤の強行出場のほかにも、2試合続けてサヨナラ打を浴びて空港で一人ぽつんとしていた益田投手に声をかけて近くで寄り添ったとか、若手選手やエチェバリアの打撃練習に付き合ってアドバイスを送ったとか、その“聖人エピソード”には事欠きません。

 レアードも流れを変える一発を放っては三木選手とのパフォーマンスで盛り上げ、ヒーローインタビューでもファンを楽しませてくれてます。試合後のグラウンドウォークには愛息を連れて姿を現すこともあるし、レアードが通算200号本塁打を放った試合はたまたま僕の前の席にレアードの家族が座っていて、大喜びしている姿を見ることもできました。家族と一緒になってマリーンズでの生活を楽しんでくれているんですよね。

 ロメロだって今季初勝利をあげた際に「引退するまでこのチームでプレイしたい」とチーム愛を公言してくれたし、エチェバリアもインスタグラムでファンの投稿を積極的にシェアして交流を楽しんでくれてる。

 マリーンズというチームの雰囲気がそうさせるのか、マリーンズはチーム愛にあふれる外国人選手に本当に恵まれているなと改めて思うわけです。

 過去にマリーンズに在籍した外国人選手を遡ってみてもそう。2005年限りで引退する初芝清氏が少しでも長く野球を続けられるようにと神社で日本シリーズ進出を祈ったベニー。国の事情で泣く泣くソフトバンクに移籍した年にオールスターでマリンスタジアムに凱旋し、マリーンズ時代の応援歌に乗って一発を放ったデスパイネ。外国人枠の関係で起用法が安定しないなか、どんな場面でも献身的に左腕を振ってくれたチェン・グァンユウ。結果はあまり残せなかったけど、パラデスやバルガスだってナイスガイだったなあ。

■イタリアンバズーカ・パスクチさんとの思い出

 そんな過去の外国人選手で、僕にとって特別な思い入れのある選手が一人だけいます。2005年と2006年に在籍したイタリア系アメリカ人のヴァル・パスクチです。もちろんすべての外国人選手をリスペクトしているけど、ここでは特別な愛を込めて“パスクチさん”と呼ばせてください。

 2005年開幕2戦目、東北楽天ゴールデンイーグルスを相手に26−0というプロ野球史上最大タイの得点差をつけた試合で、パスクチさんは4安打7打点2本塁打と大暴れ。ゲーム「リブルラブル」のBGMが原曲の陽気な応援歌も人気を集めましたが、この年は第5の外国人という立場もあって出場機会は限定的に。結局2005年は120打席で8本塁打を放ちながらも出場はわずか33試合にとどまり、プレーオフや日本シリーズでも出番がありませんでした。

 なのに、甲子園での日本一の胴上げの写真では中心になってバレンタイン監督を担ぎ上げる大男の姿が確認できるんですよね。僕はテレビの前で歓喜の涙を流しながらも、「出番が全然なかったのに、日本一になったことをこんなに喜んでる。絶対パスクチっていいやつだな」と印象に残ったのを鮮明に覚えてます。

 翌年は出場機会が2倍以上に増えたものの、三振かホームランという大胆なバッティングや、なんでもない外野フライにスライディングを試みて逸らすなど粗いプレイが目立つようになり、残念ながら2006年限りで自由契約に。それでもなぜか8月だけは信じられないほど打ちまくって月間MVP候補にあがったり、サヨナラホームランを打ったり、インパクトの強い活躍もあったのです。

 特にサヨナラホームランの場面。軽く振ったように見えたのに、しかも振り遅れているようにも見えたのに、なぜか打球は右方向にグングン伸びてライトスタンド中段にドカーンと着弾。まさかの結末になぜか爆笑してしまいました。サヨナラホームランという感動的なシーンでなんか笑えるって選手、ほかにいます?

 マリーンズ退団後はアメリカに舞台を移し、メジャー昇格を目指して3Aで躍動していたパスクチさん。その動向はいつも気にかけていたし、僕はレプリカユニフォームに「PASCUCCI 43」と刺繍。インスタを使ってつたない英語でパスクチさんに報告したら、写真をシェアして喜んでくれて、嬉しかったなあ。

 現在は打撃コーチとしてまだ野球に携わっているみたい。ぜひパスクチさん本人のようなロマンあふれる長距離砲をたくさん育成してほしいな。

 少し話はそれたけど、今マリーンズに在籍している外国人選手たちもパスクチさんと同様に、マリーンズを離れたあともずっと気にかけたくなるような愛すべき選手ばかりなのです。

 プロの世界はシビアだから、今年結果が残せないままならマーティンもレアードもオフにはいなくなってしまうかもしれない。でもそれは寂しいと思える選手たちだからこそ、なんとか調子を上げて今年もまたマリーンズを引っ張ってほしいのです。

 シーズンはまだまだ始まったばかり。愛すべき助っ人たちの打棒の復活に期待しようじゃないですか!

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(野島 慎一郎)

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