母の再婚相手から性的虐待を受けた10年間… 被害を公表したマンガ家が“殺したかった”継父に言いたいこと

母の再婚相手から性的虐待を受けた10年間… 被害を公表したマンガ家が“殺したかった”継父に言いたいこと

『母の再婚相手を殺したかった』より

 母の再婚相手から、10年間に渡り性的虐待を受けてきた経験を描いたコミックエッセイ『 母の再婚相手を殺したかった 』。作者の魚田コットンさんは、なぜ継父からの性的虐待を公表しようと思ったのでしょうか。壮絶な体験をブログに描いた理由や、ブログを描いた後の心境の変化についてお聞きしました。(全2回の1回目。 後編 を読む)

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■ブログをはじめるまで絵を描いたこともなかった

──3月に刊行された『母の再婚相手を殺したかった』は、ブログからスタートして、雑誌連載を経て書籍化されたとお聞きしました。ブログは、継父であるツカサの性的虐待について描くために開設したのですか?

魚田コットン(以下、魚田) いいえ、はじめは育児ブログからスタートしました。ちょうど「育児絵日記」が流行っていた時期で、「時計をもらった」と紹介しているブロガーのモニター記事を読んで、「ブログを書いたら時計がもらえるかも」と思い込んでアメブロを始めました。そこから少しずついろいろなテーマで描くようになり、今はアメブロからお引越しして、「NAPBIZブログ」に作品をアップしています。

──最初からマンガで描いていたのですか?

魚田 最初は文章にイラストを添えて、絵日記のような感じで描いていました。自分には絵心も才能もないと思っていたので、ブログをはじめるまで絵を描いたこともなかったんですよ。でも昔からマンガは大好きでよく読んでいましたし、「育児絵日記ならできるかも」と挑戦しているうちに、絵を描くことに対する苦手意識がなくなり、楽しく描けるようになっていきました。

■半ばヤケクソ状態で過去の体験を発信

 それに文章よりもマンガのほうがたくさん読んでもらえるんですよね。もっとたくさんの人に読んでほしいという気持ちから、だんだんマンガへと移行していきました。

──継父による性的虐待について公表しようと思った理由を教えてください。

魚田 数年前に夫が浮気したことがきっかけで自尊心が奪われ、自分のなかでいろいろ気持ちを抱え込むのが苦しくなったからです。アメブロには、ブログの管理者が指定した人だけに公開できる「アメンバー限定記事」というのがあるので、半ばヤケクソ状態で「もう全部ネットの海に投げてしまえ」と過去の体験を含めて発信し始めました。

■何を言われてもひたすらアップし続けた

──それまで育児ネタを読んできたフォロワーからは、どんな反響がありましたか?

魚田 アメンバー限定で記事を公開したのですが、「なんでお母さんに言わなかったんですか?」とか、「どうかお母さんと話し合ってほしい」というコメントをすごくたくさんいただいてしまって……。

 私を心配してくださってのコメントだということはわかるんですが、過去の自分が責められたような気がして、すごく落ち込みました。幼い私にとって母は絶対的な存在だったので、母に嫌われるかもしれないようなことは絶対に言えなかったんですよね。

 しばらくの間は、限定記事での公開はやめ、いままで通りの全体公開記事で育児絵日記を描いていたところ、「NAPBIZブログ」さんからお話をいただきました。そこで、一度心の整理をするつもりで「ツカサのことをすべて描こう」と思い、あらためて整理して発表し始めたんです。「描くからには最後まで描ききろう」と覚悟を決め、何を言われてもひたすらアップし続けました。

■描き直したりしていくうちに、より心の整理ができた気がする

──描いているうちにフラッシュバックに襲われたり、苦しい気持ちになったりすることはありませんでしたか? 完全なフィクションとして発表することもできたと思うのですが、あえて「実話」として公表することに抵抗はなかったのでしょうか。

魚田 育児ブログの時も自分の体験しか描いてこなかったので、それしかできないと思ってましたね。フィクションで描こうなんて、考えてもみませんでした。

 それに、NAPBIZで発表する時点で、もう自分のなかではかなり気持ちの整理ができていたので、過去を思い出してつらくなったり、フラッシュバックに悩んだりということもなく、むしろ「作品」として完成させよう、という意気込みのほうが大きかったと思います。

 さらにそこから、雑誌連載のお話をいただき、今回書籍になった『母の再婚相手を殺したかった』にまとめていただいたのですが、ここまでくると自分のなかで完全に「作品」としてとらえることができたので、「よし、いいマンガをつくるぞ!」という感じでしたね。ブログはあくまでその時その時のエピソードを描いているだけなので、雑誌の連載や書籍化にあたって、「作品」としてストーリーを考えたり、描き直したりしていくうちに、より心の整理ができた気がします。

──ご主人やお母さんに気づかれるかも、という不安や恐怖はありませんでしたか?

魚田 それはないですね。自宅に単行本がたくさんあるので、もしかしたら夫は気づいているかもしれませんが、とくに何も言いませんし、そもそも、そんなことで怒るような人ではないという安心感と信頼感があるので、大丈夫です。

 母も普段まったくマンガを読まず、インターネットにも疎いので、気づきようがないと思いますが、もし気づいたらその時対応を考えようと思っています。

■ツカサはいてもいなくてもどうでもいい存在

──マンガを描くことは、継父への苦しみや憎しみを昇華させるのに役立ったと思いますか?

魚田 マンガを描いたからツカサへの憎しみや苦しみが消えた、ということはありません。昔は、本気でツカサを殺してやりたいと思っていたこともありましたが、あんな最低なクズ人間のせいで自分自身が憎しみの塊みたいになってしまうのもつらいので、ずいぶん前にツカサへの憎しみや苦しみは手放しました。逆に、まだそれが残っている状態だったら、描ききれなかったと思います。

 正直、いまの私にとって、ツカサはいてもいなくてもどうでもいい存在なので、「殺してやりたい」はおろか、「死ねばいい」とすら思わないというのが本音です。本当に死んだらどう思うかはわかりませんけど……。

──マンガを描いてよかったと思うことはどんなことですか?

魚田 自分の気持ちを整理できたことです。ずっと心の底に引っかかっていたことを吐き出せて、スッキリしました。

■死ぬときは母や異父妹に迷惑をかけずに死んでほしい

 あと、同じように性的虐待を受けたことのある読者から、「私も同じ」「励まされた」という共感の声をたくさんいただいて、この本を描いてよかったなと思いました。

──先ほど、継父に対しては何の感情もないとおっしゃいましたが、お母さんに対する気持ちの変化はいかがですか。

魚田 今年のお正月に、1年半か2年ぶりに帰省して母に会ったんです。コロナ禍以来はじめて再会した母が、なんだか普通のおばちゃんになっていて、驚きました。あんなに母のことを完璧だと思っていたけど、実はめちゃめちゃダメなヤツだったのかもしれない、とようやく認められるようになった気がします。

 ツカサに対しては、本当に何の感情もないので、言いたいことも何もありません。ひとつ言うとしたら、死ぬときは母や異父妹に迷惑をかけずに死んでほしい、ということでしょうか。介護状態にならず、さっさと寿命をまっとうしていただきたい。それくらいですね。

「性的虐待されたのによく平気でセックスできるね」「そんなに堂々としてる被害者はいない」 継父から“性被害”を受けた女性が感じた“偏見” へ続く

(相澤 洋美)

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