“藤井キラー”が目撃した、藤井聡太竜王19歳の素顔「悔しがっているのかなと思ったのですが…」
2022年05月21日 12時00分 文春オンライン

すっかりおなじみの審査員、深浦康市九段(左)と遠山雄亮六段 ©石川啓次/文藝春秋
昨年度の将棋界を「観る将」の視点で振り返る「観る将アワード」も、今回で3度目の開催となった。2021年度は「名局賞」「最優秀棋士賞」「最優秀女流棋士賞」「最優秀解説者賞」「最優秀聞き手賞」「ベストエッセイスト賞」「ベスト棋譜コメント賞」に新たに「ベストYouTuber賞」部門を加えた8つの部門に、100名近いファンの方々からご投票をいただいた。
この投票を参考に、今年も審査員を務める深浦康市九段と遠山雄亮六段に各賞を決めていただいた。会場は、読む将の聖地「ジュンク堂書店池袋本店」。昨年はオンラインのみの配信だったが、今年は、会場にもファンの方がお越しくださり、楽しいイベントとなった。
では、さっそく「名局賞」の選考の様子からお届けしよう。
■名局賞 名局の絶対条件は、際どい終盤
――まず、名局賞のアンケート結果は、票数の多い順からこのようになりました。
1位 竜王戦第4局 豊島将之竜王/藤井聡太三冠
2位 棋聖戦第3局 藤井聡太棋聖/渡辺明名人
3位 棋王戦挑戦者決定トーナメント 佐藤康光九段/郷田真隆九段
――アンケート投票の結果、1位は竜王戦の第4局でした。2位にかなり得票差をつけて大きな支持を集めましたが、この要因はどういったところにあると思われますか。
深浦 まず、今回も多くの方に投票いただきありがとうございました。さて、この竜王戦の第4局ですが、自分はNHKの「激闘!将棋竜王戦ダイジェスト」という番組で解説を担当しており力が入りましたね。みなさんに、いかに藤井さんと豊島さんの考えを伝えようかと必死でした。
――決してわかりやすい将棋ではない?
深浦 盤面に現れたところもすごいんですが、水面下に読みが凝縮されているんですよね。それを探り伝えるのが大変でした。
――遠山先生は、この対局はどう見ましたか?
遠山 最終盤で、豊島さんが大長考するんです(編集注・99分)。終盤戦って、30分くらい考えれば、勝ちも負けもわかることがほとんどなんです。でも豊島さんが90分以上考えてもわからなかった。その複雑さはすごいですよね。
このアンケートのなかで、終盤、豊島さんが「時間攻め」をしなかったことに触れている方がおられてツウだなと思いました。たしか藤井さんが残り10分くらいで、豊島さんがパッと指せば、秒読みのなかで藤井さんもまちがえたかもしれない。でも豊島さんはそれをせず、とことん読んでやろうとしたところから、この名局が生まれたのかもしれません。
――今、遠山先生がふれられた「時間攻め」に関するコメント、ご紹介しますね。
終盤、豊島竜王の方が時間的には絶対有利で、とても難解だった局面。豊島竜王には“時間攻め”という戦法もあったと思うのですが、ご自身が納得できるまで時間を使い考えぬかれました。結果は正解手を見つけられず負けとなりましたが、大変難しい局面を前にして豊島竜王も藤井三冠も“考えている時間がとても楽しかった”、“あの時間がとても幸せだった”、“終わった後もあの局面のことをずっと考えていた”、“(勝ち負けは抜きにして)最善手を指して、もっと先まで指し続けてみたかった”と……。
最終的には藤井三冠のストレート勝ちで終わってしまいましたが、特に第1局・第2局は豊島竜王が勝っていてもおかしくなかった内容で、熱戦続きの見応えがあるタイトル戦でした。(60歳/女性)
――倉敷に藤井竜王の自戦解説に行った方からは、こんなコメントをいただきました。
超難解な将棋、特に終盤戦はABEMAの解説陣も頭を抱えた一局。倉敷市で開催された「藤井聡太竜王誕生を祝う会」で、藤井竜王が心から楽しそうに終盤の長手数の読み筋(打ち歩詰めの変化まで完璧に読み切っていた)を自戦解説し、この日が将棋イベントデビューだった聞き手の狩山新四段が全くついていけなかった。
藤井竜王の退席後、谷川九段をして「普通、棋士はこうした席での自戦解説は当然理解しているのでほぼ聞いていませんが、今の藤井竜王の話は私も初めて気づく変化もありこれだけで1冊の本が書ける」と言わしめた後日談まで含めて名局。(48歳/女性)
遠山 これだけで1冊本が書けるってすごいですね。今、本を書いていますが、本を書くのは本当に大変です(笑)。
■印象的だった最終盤の一手
――続いてアンケート第2位だった棋聖戦第3局(藤井聡太棋聖/渡辺明名人)です。まずコメントをひとつご紹介します。
藤井棋聖初防衛の一局。最終盤の後手7一飛車が印象的です。(55歳/女性)
――遠山先生、これはどういう一手だったでしょうか。
遠山 これは藤井さんが、最後に飛車を馬の利きにタダで捨てたんですね。それを同馬と取ると難しい詰みがある。詰みは難しいし1分将棋の状態だったので、なかなかそこに飛車を動かす人はいないんですけど、藤井さんはパッと動かして詰ませた。この対局の価値がすごく上がった一手でした。内容的にもいい将棋でしたよね。
深浦 いい将棋でしたねぇ。
遠山 終盤、AIが一瞬、渡辺さんにもチャンスありと示していたんですが、これは人間にはその手はほぼ指せないという手でしたね。
深浦 よくありますねぇ。
――それくらい際どい終盤だったと。
遠山 名局の絶対条件は、際どい終盤だと思いますが、まさにそんな一局でしたね。観ている人に最後まで「これどうなるんだろう」って思わせないと。
深浦 なるほど。それはそうかもしれません。
遠山 しかもパッと見たところいい勝負じゃダメなんです。AIのフィルターを通しても競っていないとダメという。
深浦 ハードル高っ(笑)。
遠山 でもこの2つは、それをクリアした名局でしたね。
■対局後に「藤井キラー」として取材が殺到
――深浦先生が藤井聡太三冠に勝利されたNHK杯にも投票がありましたので、コメントご紹介します。
一方的とも言えるほど深浦九段の攻撃が鮮やかに決まって、藤井聡太三冠に勝利。机に伏した藤井さんも印象的でしたが、藤井さんに3勝1敗という、深浦先生の底知れぬパワーをテレビ越しに感じました。(60歳/女性)
深浦 この後、取材が殺到しまして。
――どういう取材なんですか(笑)。
深浦 ほぼ「どうして藤井さんに勝てたのか?」ということについてですね。それで同じことを10件、20件と話しました。
――勝てた要因にはどのようなことが?
深浦 あのとき藤井さんはタイトル戦に出ていて、やはり対策はNHK杯の早指しがメインではないですよね。だから、その間隙を縫えたというのはありましたよね。
遠山 将棋は完璧でしたよ。有利になってからは、ずっと深浦九段がよくなっていって完勝だったなと思いました。
深浦 感想戦のときに藤井さんが、机に突っ伏す感じになりましたよね。自分から見ると悔しがっているのかなと思ったのですが、横からのカメラで見ると、手が動いていたみたいですね。
――変化を考えていたと。
深浦 そうですね、急所の局面で、どうやればよかったのか反省する時間だったんですね。それをファンの方から指摘されて、改めて藤井さんはすごいなと思いました。全国放送のカメラがある前で、形を気にせず反省という時間に入っていたんですね。
――深浦先生は驚きましたよね。
深浦 そうですね。これから感想戦というときに目の前の方が、視界からいなくなってしまったので。
――そうですよね(笑)。ではつづいてアンケート3位の対局は、棋王戦挑戦者決定トーナメントの佐藤康光九段VS郷田真隆九段でした。遠山先生、これはどういう将棋でしたか?
遠山 佐藤九段が棒銀をやったんですが、普通の棒銀は飛車がいるほうの銀を繰り出すわけですね。
――それはそうですね。
遠山 当たり前ですよね(笑)。ところが佐藤九段は、飛車がいないほうの銀を繰り出していって、その銀1枚で相手陣を突破しようとしたんです。ただ、そこから二転三転して、二人の力がぶつかり合った。序盤のインパクトがすごいんですが、終盤もすごく面白い将棋でしたね。
深浦 AIの評価値だと、序盤は佐藤九段の評価は低いんです。でも将棋って面白くって、こういう出だしでも、最後はどっちが勝つかわからなくなる。
――コメントもご紹介しますね。
佐藤康光先生による、暴銀戦法といわれている対局。将棋の可能性を大きく広げてくれた棋譜だと思います。おとなしく収めて平凡な戦いにもできただろうに、あえて受けて立った郷田先生にも感謝です。こういう将棋も観たいんだ。(29歳/男性)
――たしかにこういう将棋も観たいですね(笑)。あと気になった対局などありますか?
■「あまりにこの将棋が面白くって、この夜、寝られなくなったんですよ(笑)」
遠山 女流ABEMAトーナメントのチーム西山とチーム里見の対戦は、4勝4敗で迎えた最終対局がリーダー対決になったんですが、これがばつぐんに面白い将棋でした。終盤もどっちが勝っているか全然わからなく、最後、里見さんが詰ましにいったが、わずかに詰まなかった。私は、あまりにこの将棋が面白くって、この夜、寝られなくなったんですよ(笑)。
――この対局にはファンの方からコメントもきていました。ご紹介します。
4勝4敗となり決勝進出をかけたリーダー対決。藤井猛九段も「僕はこれが見たかったのよ」とコメント。詰むや詰まざるやの終盤にドキドキ。女流ABEMAトーナメントの格を上げた一局。(43歳/男性)
――深浦先生は、他に印象に残った対局はありますか。
深浦 タイトル戦だと竜王戦、棋聖戦と挙がっていますが、王将戦もかなりいいシリーズでしたね。藤井聡太さんについていえば、昨年度の竜王戦と王将戦がどちらもストレート勝ちで終わったというのが衝撃的でした。王将戦の全4局も、藤井さんが渡辺さんを圧倒していましたからね。圧巻の内容でした。
遠山 たしかに驚きですよね。
――では、そろそろ名局賞を決めたいところですが、どうしましょうか。
遠山 難しくって控室でも深浦九段と悩んでいたんですよね。でも、投票してくださった方の熱量から決めましょうか。
深浦 自分が今回注目したのは、竜王戦第4局に対するみなさんのコメントの内容でした。プロが見たらすごい終盤だってわかるんですが、そのすごさがファンの方にもしっかり届いているんだなと。正直、この対局がこれほど投票されると思っていなかったので驚きでしたね。
遠山 やはりこの対局がいいのかなと思いますね。
――では名局賞は、竜王戦第4局、豊島将之竜王対藤井聡太三冠に決定しましょう。
■最優秀棋士賞 いまだタイトル戦で負けなしというのは、想像を絶しますね
――つづいて最優秀棋士賞です。アンケートの結果を集計すると、2位が同数でこのような結果になりました。
1位 藤井聡太五冠
2位 豊島将之九段
2位 渡辺明名人
――まあ、1位はこうなりますよね(笑)。
深浦 そうですねぇ(笑)。
――では、1位の藤井聡太五冠にいただいたコメントをいくつかご紹介します。まずこちら。
将棋界の歴史を次々と塗り替え、その才能と実力もさる事ながら、人間性も素晴らしく、国民的人気と知名度の高さ、師匠とのほっこりとするエピソードの数々まで、もう藤井聡太竜王以外いないです。特に王将戦での笑顔の勝者のコスプレが印象深いです。(60歳/女性)
――もうひとつご紹介します。
いろいろな最年少記録を塗り替えるという点で、マスコミ等に取り上げられることが多いですが、ご本人はそういう点に余り頓着せず、ただひたすらご自分が強くなることのみに集中していることに、10代という若さというより一人の人間として、尊敬しています。(61歳/女性)
――一昨年度は二冠だったのが五冠になった藤井聡太さんですが、その強さについてはどのようにお感じですか?
深浦 まず、いまだタイトル戦で負けなしというのは、想像を絶しますね。
遠山 藤井さんとやるときは、みんな最高の研究をぶつけていくわけですよね。そのなかでこの結果ということにさらに驚きますよね。
深浦 あの渡辺さんが対局中にこうやって首を振るんですよね。自信なさそうにしているので、その相手がいかにすごい棋士かってのがわかりますよね。
――2位は豊島将之九段です。コメントご紹介します。
藤井聡太現竜王との19番勝負を忘れない。結果的に叡王と竜王を失冠し無冠となり、スコア的には差がついたが、内容的にはほぼ互角の見応えある番勝負は長く語り継がれるのにふさわしい。竜王失冠直後のJT杯決勝で藤井聡太竜王を破り意地を見せたのはさすが。今年1月に収録されたドラフト会議で深浦康市九段を指名し「(森内先生指名の時に)藤井さんにくじで負けてしまったので、藤井さんキラーの方を取ってなんとか将棋の対局になった時に一発入れられたらと思いました」と真顔でジョークを飛ばし、笑いのツボを直撃された藤井竜王が爆笑したシーンは観る将的名場面。(48歳/女性)
■日光東照宮で「早速ご利益あったよー」
――このコメントにもありますが、深浦先生は、今年度のABEMAトーナメントで豊島さんとチームメイトになられました。
深浦 今年の初め、自分は日光東照宮で家族旅行をしていまして。一年がんばりますという気持ちで参拝していたのですが、そのときに豊島さんからメールがきまして。
――日光東照宮で(笑)。
深浦 はい(笑)。「チームメイトに選ばせていただきました。よろしくお願いします」というメールだったんですけど、早速ご利益あったよーと家内と喜んで。
遠山 早いご利益ですね(笑)。
――豊島さんから指名される予感はありました?
深浦 まったくなくて。昨年度のチーム菅井での成績が惨憺たるものだったので、もう今年はないだろうなって思っていました。
――ドラフトのときに「藤井さんキラーとして」と豊島先生が言っていましたが、あの場面も番組で初めてご覧になった?
深浦 あれも番組で初めて知りました。あのとき藤井さんが笑っているというのも面白かったですね。
――まだ出番は先ですが、もうチーム豊島で集まったりしていますか?
深浦 連絡を取り合ったり、研究会をやったりはしています。
――チームメイトとして接してみると、豊島さんはどういった人ですか?
深浦 これ豊島さんファンの方はしっかり聞いてもらいたいんですけど(客席から笑い)、豊島さんって頼もしいんだなって感じますね。研究会などで、チームメイトの丸山さんも私もそれぞれ意見は言うんですけど、最後は豊島リーダーが、じっと2、3秒考えられて、あ、このときには豊島さんと目が合ってます。
――見つめあって(笑)。
深浦 はい(笑)。そのあと「これがいい」とズバッと言ってくれるので、チームがまとまっていきますね。豊島さんは自分の考えがあって、かつチームメイトの考えも掬い上げてくれる人なんだって感じています。
――豊島さんは、今まで同年代か年下の方とチームを組んできましたけど、どういう心境の変化なんですかね。
深浦 藤井聡太さんも年上の方を指名したりして、何が起きているのかわからないのですが、ありがたいことです。
遠山 豊島さんも、きっと深浦九段から学びたいと思って選んでいるんでしょうね。いい光景だなと思って見ています。
■藤井さんがいなければ、今、最強と言われていてもおかしくない
――もうひとりの第2位が渡辺明名人です。コメントご紹介します。
名人として安定した成績を残されたから。藤井聡太五冠への巻き返しも期待しています。(43歳/男性)
――渡辺名人についてはいかがですか?
遠山 昨年度でいえば2つ防衛して1つ取られて、1つ挑戦に失敗。8つあるタイトルに4つ出ているんですね。
――そう考えるとすごいですね。
深浦 本当にすごい。
遠山 にもかかわらず、若干、影が薄めなのはなぜでしょうか(笑)。
――本当ですね。
遠山 藤井さんがいなければ、今、最強と言われていてもおかしくないと思いますよね。名人戦は、今のところ2勝0敗ですよね。挑戦者の斎藤さんがA級を2年連続8勝1敗という好成績ですから、さすがに今回は名人も危うしと思っていたのですが、それだけに、なおさら強さを感じますよね。普通なら最優秀に選ばれても不思議じゃない。
――では、最優秀棋士を決めましょうか。これは、これだけの成績だと文句のつけようがないですよね。
遠山 そうですねぇ。
深浦 はい。
――では最優秀棋士は、藤井聡太五冠とさせていただきます。
受賞の言葉(師匠の杉本昌隆八段から代理コメントを頂戴しました):
多くの支持をいただいての受賞、誠にありがとうございます。藤井聡太竜王に代わりましてお礼申し上げます。
竜王戦第4局は私も現地におり、対局後の深夜に藤井新竜王の感想をたっぷり聞くことができました。好奇心に満ちた少年のような表情が印象的で、充実の対局であったことが伝わってきました。
トップ棋士のプライドや意地がぶつかり合い、そこにドラマが生まれます。観る将ファンの皆様には、今度も沢山将棋を楽しんでいただけますようお願い申し上げます。
■最優秀女流棋士 分厚い女流トップに挑み続けての念願
――続いて、最優秀女流棋士賞です。アンケートの結果は、このようになりました。
1位 伊藤沙恵女流名人
2位 里見香奈女流四冠
3位 西山朋佳女流二冠
――1位は、伊藤沙恵女流名人です。伊藤沙恵さんは、念願のタイトル獲得となりました。
遠山 タイトル挑戦9回ですか。
深浦 長いね。
遠山 ちょっと想像できない世界ですね。
深浦 木村一基さんと重なって見えますね。
――奨励会にも長くおられたんですよね。
遠山 年齢制限も迫るなかで周りに女性も少なく、精神的には辛いですよね。その後、女流棋士に転向されたときにみんなで食事を一緒にする機会があったんですが、そこで晴れやかな表情をされていたのが印象に残っています。いろいろ苦労も多かったと思いますが、それが涙につながるんでしょうね。
深浦 何度も分厚い女流トップに挑み続けての念願ですから、よかったですね。今回、加藤桃子さんも清麗のタイトルを取られましたよね。タイトルをようやく取れた方の喜びというのは、私も同じような経験があるので、共感するところがありますね。
――コメントご紹介します。
伊藤沙恵女流名人と称号付きでお呼びできることが嬉しいです。加藤桃子清麗とも迷いましたが、おふたりとも負け続けてた里見香奈四冠に勝ってのタイトル獲得で、おふたりから「女流は2強とは言わせない」という意気込みを感じました。沙恵さんを選んだのは、女流ABEMAトーナメントでのチーム里見との対戦の際、沙恵さんが出てくるであろうところに香奈さんをぶつけられて「(香奈さんが沙恵さんに)勝つと思われてるわけですね?」と静かだけど感情を剥き出しにしていた姿を忘れられないからです。(38歳/女性)
遠山 師匠は屋敷九段ですよね。ABEMAの女流トーナメントで屋敷さんが監督になられて、そこからタイトル獲得。同じく女流トーナメントで、加藤桃子さんの監督を渡辺名人がされていましたが、これはタイトルにつながっているのではないですかね。
深浦 なるほど。
――最初、トーナメントの監督ってどういうものなのだろうと思いましたが。
遠山 あれは単なる名前だけじゃなかったんですよ。棋士の人はみんなちゃんとやるわけです。渡辺名人も自宅に呼んで教えていたみたいなので、そういう効果はすごくあったんじゃないですかね。山口恵梨子さんも、ABEMAトーナメントで西山さんのチームに入っていましたが、それ以降の勝率がとても高い。あの西山さんに選ばれたというのも、かなりモチベーションアップにつながっているんじゃないですかね。
■活躍の場が広がる女流棋士たち
――2位は、里見香奈女流四冠でした。コメントご紹介します。
11月には清麗戦、女流王将戦、女流王座戦、倉敷藤花戦と4つの番勝負を並行して戦い、このうち3つを獲得してタフさを見せた。男性棋士にも9勝7敗と勝ち越しており、若手強豪を圧倒してしまうこともある。(43歳/男性)
――3位は、西山朋佳女流二冠でした。こちらもコメントご紹介します。
女流棋士として本格的に活動をスタートし、各棋戦を始めABEMAトーナメントなど、活躍の場面が多かったから。また、企画などで盤外の活動も多く、新たな一面を知る機会が多かったから。(36歳/男性)
――そのほか山口恵梨子女流二段、加藤桃子清麗などに票が集まっていました。
遠山 ただ今回は念願のタイトルを獲得された伊藤沙恵さんという感じがしますね。
深浦 そうですね。
――では、最優秀女流棋士は、伊藤沙恵女流名人とさせていただきます。
受賞の言葉(伊藤沙恵女流名人):
この度は最優秀女流棋士賞に選んでいただきありがとうございます。大変光栄です。
ようやく夢を叶えることができたこと、またたくさんの方々が祝福してくださり本当に嬉しいです。ずっと応援していただき、それがとても力になりました。感謝の気持ちでいっぱいです。
これからもさらに高みを目指して精進してまいります。
「佐藤の銀が止まらない」観る将ファンが選んだ2021年度のベストシーンとは へ続く
(岡部 敬史)
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