まさしく“野球小僧” ドラゴンズの危機を救ったのは21歳の捕手・石橋康太だった

まさしく“野球小僧” ドラゴンズの危機を救ったのは21歳の捕手・石橋康太だった

石橋康太

 立浪和義監督率いる今年のドラゴンズは面白い! 

 そう感じていたゴールデンウィーク明け、ドラゴンズを激震が襲いました。新型コロナウイルスによって、正捕手の木下拓哉選手、大砲候補・石川昂弥選手、期待の新人・鵜飼航丞選手、頼れるベテラン・平田良介選手が登録抹消になってしまったのです。

 首位打者だったベテランの大島洋平選手は死球に見舞われて故障、抜群の守備の京田陽太選手も不調で二軍。シーズン当初、レギュラーを張っていた選手の半数近くが一軍から姿を消してしまいました。

 折しも5月10日からはドラゴンズが苦手にしている神宮と東京ドームのビジター6連戦。「これはヤバい……」と感じたドラゴンズファンも少なくなかったはずです。

 しかし、6連戦の結果は3勝3敗の五分。惜しい試合もあったので、勝ち越しも夢ではありませんでした。

■キノタクの大きな穴を埋めてくれた男

 チームから主力が抜けてもガタガタッと崩れなかったのは、代わりに入った選手が高いモチベーションで試合に臨み、めぐってきたチャンスをものにしたからです。こういうことって、なかなか去年までは見られませんでした。いつ何時でも戦う姿勢でいなければいけない“立浪イズム”が選手に浸透してきていると感じます。

 難しいショートのポジションも、京田選手の穴を三ツ俣大樹選手が埋めてくれていました。今年はオープン戦ではなかなか名前が挙がりませんでしたが、二軍でしっかり結果を残して、その勢いのまま一軍で活躍しています。つなぎもできるし、長打も出る。守備も堅実で、本当に頼もしいです。

 そして、木下拓哉選手の離脱の穴を埋めて、頑張って投手陣を引っ張ってくれていたのが、石橋康太捕手です。チームの危機を救ってくれたといってもいいのではないでしょうか。

 石川昂弥選手は「ようやく来たぞ!」という時期の離脱だったので本当に残念だったのですが、サードには高橋周平選手がいますし、セカンドには絶好調の阿部寿樹選手がいるから、心配はしていませんでした。ただ、正捕手であるキノタクさんはチームの大黒柱とも言える存在です。投手陣からの信頼は絶大ですし、バッティングでも結果を残しています。

 そんな中、実績のある大野奨太選手、今年は外野にまわっている打撃のいいアリエル・マルティネス選手や郡司裕也選手がいる中で、高卒4年目、21歳の石橋選手は大抜擢されたと言ってもいいと思います。そして、しっかりチャンスを掴んで結果を残しました。ワンバウンドもしっかり止めていて、見ていて安心感があります。キノタクさんの穴を埋める選手がこんなにもすぐに出てくるなんて、正直、驚きました。

■思いきりがいい! 面構えがいい! 頼もしい!

 石橋選手の良い部分は、とにかく打撃も守備もリードも思いきりがいいところです。キノタクさんはどっしりしていてリスクをあまり冒さないタイプのキャッチャーだと思いますが、石橋選手は守備でも攻めの姿勢を崩していないように見えます。

 高橋宏斗投手と組んだ5月14日の巨人戦では、無死満塁の大ピンチで前日決勝ホームランを打った中田翔選手と続く大城選手に対して、恐れずにスプリットを要求してそれぞれ打ち取ってみせました。満塁で3ボールになれば、ストライクを取るためにストレートを要求したくなるはず。若さゆえの大胆さなのか、若くして打者心理を読み取っているのかはわかりませんが、いずれにしても攻めのリードだったと思います。

 同世代の投手はもちろん、大野雄大投手や柳裕也投手をはじめとする年上の投手にも堂々と振る舞っていますよね。わかりやすいジェスチャーで「低めに来い!」とか「腕を振って!」とマウンドの投手に自分の要望を伝えている姿を見ていると、石橋選手の気持ちが見ているこちらにも伝わってきます。

 捕手というポジションは迷いが出たら務まらないポジションだと思いますが、石橋選手のプレーや表情を見ていると、内心には不安や迷いがあったとしても、そういう部分を絶対に見せません。本当に頼もしいと思います。

 面構えもいいんですよね。キャッチャーマスクの奥の目が生き生きとしていて、いかにも「野球小僧!」という感じ。二軍でこんがり焼けているのもあって、高校球児がそのままプロにやってきたように見えます。社会人の名門トヨタ自動車を経験してきた大人のキャッチャー、キノタクさんとは好対照ですね。今はまっすぐでピュアな感じの石橋くんが打者との駆け引きやいい意味でのズルさを覚えたら、どんなキャッチャーになっていくのか楽しみで仕方ありません。

 そういえば、僕は野球の道具が好きでよく見ているのですが、石橋選手のキャッチャーミットは縦に深くポケットを作っているんですよね。そうするとボールがこぼれにくくなってクロスプレーにも強くなるんです。ミットはすごくキャッチャーの個性が出る部分で、キノタクさんはオーソドックス、ソフトバンクの甲斐選手はミットがすごく浅くて知られています。石橋選手のミットについて、いつか話を聞いてみたいですね。

 石橋選手が一軍で自分らしさを前面に出して、物怖じせずにプレーしているところを見ていると、いつかドラゴンズの正捕手争いに割って入っていくんだろうな、と期待が膨らんでいきます。

 一軍で抜擢されて実力を発揮できたのは、二軍でしっかり準備していたということでしょう。いつでも一軍で出番があるんだぞ、だから準備しておかなければいけないんだ、ということが二軍の選手にも伝わっていたのが嬉しいです。立浪ドラゴンズはこれまでとちょっと違うな、と思わせてくれる大きな部分だとすごく感じます。

 コロナでの選手の離脱はチームとして非常に痛かったのですが、石橋選手をはじめとする若手選手たちが一軍で経験を積むことができたと考えることもできます。試合で悔しい思いもいっぱいしたはずです。だけど、それもすべて勉強なんですよね。厳しい試合が続きますが、これから主力選手が一軍に戻ってきたとき、ドラゴンズがどんなチームになるか、僕は楽しみでなりません!

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(辻本 達規(BOYS AND MEN))

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