「“にんにく6倍ドン引きペペロンチーノ大盛り”には濃さが判別できない寸前までガーリックを投入した」 ドン・キホーテ「情熱価格」の商品名が過剰に“長い”ワケ

「“にんにく6倍ドン引きペペロンチーノ大盛り”には濃さが判別できない寸前までガーリックを投入した」 ドン・キホーテ「情熱価格」の商品名が過剰に“長い”ワケ

ドン・キホーテ、PBマーケティングチームの中武正樹さん

 大手ディスカウントストア「ドン・キホーテ」が展開するPB「情熱価格」が、今SNS上で話題を集めているのをご存知だろうか。その理由はズバリ、商品名が長すぎること。

「洗濯80回実証!!洗っても洗っても洗っても洗っても洗っても洗っても洗っても洗っても洗っても全っ然色落ちしない!!ホコリがつきにくい素材で黒が映える!色褪せ知らずの黒ストレートパンツ」

 といった具合だ。そこで今回は、ドン・キホーテPBサポート部、PBマーケティングチームの責任者である中武正樹氏にインタビュー。ユニークな商品名の秘密や、消費者からのダメ出しを積極的に受け付けるために開設したという特設サイト「ダメ出しの殿堂」などについて話を伺った。(全2回の1回目/ 後編 を読む)

◆◆◆

――公式サイトに「ふざけた商品名ですが、まじめにつくっています」と書かれており、もはや商品名というより“感想文”にすら思えるネーミングセンスは強烈です。まず、「情熱価格」というブランドが誕生した経緯を教えてください。

中武 「情熱価格」は2009年10月を皮切りにスタートし、2021年にリニューアルしたブランドです。スタート当時からお客様の声を形にすることをコンセプトにして、「こんな商品がほしい」とか、「頻繁に使う商品だからもっとリーズナブルにしてほしい」というような意見を実現させようと、メーカーさんと手を組んだのが始まりでした。

 例えば「100gのものを200gにしてほしい」という意見があるなら、それをどうにか実現させようと奮闘する。他のメーカーさんなどでは、どうしても小さな意見の1つ1つに応えて商品化することは難しいでしょうが、「情熱価格」はそうした消費者の意見に腰を据えて向き合っていこう! と立ち上げたブランドだったんです。

――では、なぜ2021年にリニューアルすることになったのかが気になるところですが。

中武 実は2009年に誕生したときは、お客様の声を形にして多くの方に買ってもらいたいという、少々ありきたりなテーマでの出発だったんです。でも“お客様の声を形にした画期的な商品”って、他社様にも存在しますよね。それでは弊社で買っていただく特別な理由にはなりません。

 ドンキって、店舗に商品をぎゅっと詰め込んだ“圧縮陳列”のインパクトなどもあって、お客様にユニークで面白い業態イメージを持っていただいていると思うんですよ。なのに、そこのオリジナルブランドの商品が「普通で面白くないね」なんて思われてしまっては、買い物にアミューズメント性を与えるという使命を持っている私たちとしては、企業理念を全うできていないことになってしまいます。

 これまでもがんばってはいましたが、振り返ったときに“弊社への世間のイメージとかけ離れてしまっていたのでは?”と自問したことで、ロゴも一新してリニューアルする運びとなりました。

――リニューアル後はどういった特徴を持っているのでしょうか。

中武 実は我々、リニューアルの際に、“驚きのニュースがない商品は作りません!”という宣言をしたんです。“買ったものをただ使って終わり”というのではなく、商品を使っていただいたときや、食べていただいたときに、必ず何かしらの感動を与えたり、クスッと笑ってほしい。そういう気持ちは込めるように心がけています。

 またリニューアルに合わせて「ピープルブランド宣言」というものを行いました。PBとは一般的に“プライベートブランド”の略称ですが、「情熱価格」はお客様に寄り添うという理念から現在は“ピープルブランド”としたんです。

 これは「自社の所有物としてのPB(プライベートブランド)」ではなく、「お客様と一緒に創り上げるPB(ピープルブランド)」へと生まれ変わるぞ、という宣言であり、ドンキにいらっしゃるお客様を中心としたものづくりをしよう、というお約束でもあります。

■ペペロンチーノには“濃さが判別できなくなる寸前”までにんにくを投入

――“驚きのニュースがない商品は作りません!”というのは、具体的にどういうことでしょうか。

中武 冷凍パスタの「にんにく6倍 ドン引きペペロンチーノ 鼻から抜ける異常なまでのガーリックの存在感! にんにく入れすぎ 激辛ペペロンチーノ 大盛り」(正式名称は『にんにく入れすぎ 激辛ペペロンチーノ 大盛り』)を例にご説明します。

 こちらの商品は、にんにくを一般的なペペロンチーノの6倍も入れた商品です。まあ、ほとんどのメーカーさんであれば、こんな万人ウケしなさそうな尖った商品はまず作らないでしょうし、仮に作ったとしてもニッチすぎて小売店さんも取り扱いたがらないと思います(笑)。でも、そういった他社がやらないものを商品化してこそドンキですし、こういう精神は大事にしていきたいんですよね。

 ちなみに開発裏話として、実はペペロンチーノに通常の10倍のにんにくを入れるという案があったんですが、商品開発の段階で6倍以上入れても威力が変わらない、というより鼻と舌が違いを認識できないことがわかったんです(笑)。なので、同商品はある意味“限界までにんにくを入れた商品”と言えるでしょう。

■ターゲットに届くような商品作りを心掛けている

――ちなみに『にんにく入れすぎ 激辛ペペロンチーノ 大盛り』は冷凍パスタでは1番人気なのでしょうか。

中武 うーん……人気なことに間違いはありませんが、1番人気ではないです(笑)。そもそも我々は、どれが1番人気なのかをあまり重視していません。というのも、にんにくがほしいお客様もいますし、辛さがほしいお客様もいますし、量が多いことを重視しているお客様もいます。それぞれ“これがほしい”というお客様に向けて商品を販売しているので、なにもにんにくを食べたくない人にまで届けなくてもいいわけです。

 もちろん、日配品のような趣味趣向が大きくわかれないものに関しては、ごくごく普通の商品も多数置いております。ですが、お客様の希望が入るものはターゲットに届くような商品作りを心掛けていますね。

■“長すぎる商品名”に込められた想い

――リニューアル後の「情熱価格」は、次のような“長すぎる商品名”がSNSなどで大きな話題になっています。

「洗濯80回実証!!洗っても洗っても洗っても洗っても洗っても洗っても洗っても洗っても洗っても全っ然色落ちしない!!ホコリがつきにくい素材で黒が映える!色褪せ知らずの黒ストレートパンツ」

「人はまだまだダメになれる ゲーム廃人発想から誕生!好きなスタイルでベスポジを見つけ出せ!!!24時間夢中になれちゃう!?ゴロゴロ快適ゲーミングマットレス ゴロゲー」

――なぜこのような“長すぎる商品名”が誕生したのでしょうか。

■商品紹介が商品そのものに書いてあるデザイン

中武 少々複雑なのですが、厳密に言うと正式な商品名は『色褪せ知らずの黒 ストレートパンツ』、『ありえねぇ情熱価格 ゴロゲー ゲーミングビーズマットレス』です。つまり、「洗濯80回実証!!洗っても洗っても〜」や「人はまだまだダメになれる〜」の部分は、いわゆるキャッチコピーに相当する文章ということになりますね。

 ただ、確かに商品パッケージには、あたかもすごく長い商品名かのように記載しています。一見長すぎて混乱されるかもしれませんが、我々は商品パッケージを紙面に見立てているんです。ですからこういった商品名は社内で“ニュース”と呼んでいるんですよ。要するに、パッケージに「こういう商品なんです」とか「これを使えばこんなメリットがあります」とか、商品の自己紹介をそのまま書いてしまっているんです。

 ドンキの店舗には商品を手に取って説明する販売員がほぼいないので、これまでは手書きのPOPを使って商品紹介をしてきたのですが、それが商品そのものにも書いてあればよりわかりやすいんじゃない? という発想から始まったのがこのデザインです。

■“80回洗っても色落ちしない”

――ただのウケ狙いではなく、商品の特徴やウリを的確に消費者に届けたいという想いが根底にあったということですね。

中武 はい、おっしゃるとおりです。例えば、正式名称『色褪せ知らずの黒 ストレートパンツ』という商品を紹介するときに、開発担当者が一番お伝えしたいのは、“80回洗っても色落ちしないこと”です。せっかく商品を手に取ってくれた人がいても、80回実証していること、それほど色落ちしにくいことがお客様に伝えられなければ、「どうせ一般的な黒いパンツと同じなんでしょ」と購入を見送られてしまうことだって考えられます。

 だから我々は「洗濯80回実証!!洗っても洗っても洗っても洗っても洗っても洗っても洗っても洗っても洗っても全っ然色落ちしない!!ホコリがつきにくい素材で黒が映える!色褪せ知らずの黒ストレートパンツ」と、その商品の売りが一目でわかるキャッチコピーも、まるで商品名のようにパッケージに載せることにしているのです。

 先ほどの『にんにく入れすぎ 激辛ペペロンチーノ 大盛り』でも同じことが言えますね。にんにくのパンチが効いていそうな商品写真をパッケージにしても、それだけではどれだけ凄いのかをお伝えしきれず、購入には繋がらないこともあるでしょう。ですから、どうやったら伝わるのかを考えあぐねた結果、このような長すぎる商品名が誕生したんです。

(文=あかいあおい〈A4studio〉、撮影=平松市聖/文藝春秋)

「ダメ出しの殿堂」には月3000件の“文句”が… オリジナルブランド「情熱価格」でドン・キホーテが“譲れない”ところ へ続く

(A4studio)

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