自分になくて大地にあったもの…元広島・今村猛が明かす同級生・大瀬良大地という存在

自分になくて大地にあったもの…元広島・今村猛が明かす同級生・大瀬良大地という存在

筆者・今村猛 ©森田和樹

 はじめまして。昨季まで広島東洋カープでプレーしていた今村猛です。今何をしているのかとよく聞かれるんですが、そのときは“何でもチャレンジしたい人”と答えています。

 野球が終わってから、いろいろと考える時間がありました。もちろん野球に対して、続けたい気持ちが全くなかったわけではないですが、カープ以外でプレーするという選択肢が僕の中でありませんでした。

 それで、今まで野球しかやってこなかったので、やってこれなかったことをやってみようと。18歳でプロに入ってから、30歳という年齢的にも、ちょうどいいタイミングなのかなと思って、YouTubeやフルマラソンなど、いろんなとこにチャレンジしています。

 カープの情報もニュースなどでちょくちょくチェックしています。現在上位争いをしていますが、やはり先発に防御率2点台が4人もいると安定した戦いができますよね。そして、今回はせっかくの機会なので、その先発陣を引っ張っていく存在である大瀬良大地について話したいと思います。

■「どうやって接したらいいんだろう……」

 大地と初めて出会ったのは2009年、高校3年の県予選で投げ合って負けた試合でした。自分はその年の選抜大会で全国優勝も経験していて、ちょっと偉そうに聞こえてしまうかもしれませんが、正直なところ、県内にこんなに良い投手がいるなんて思っていませんでした。なので、対戦したときは「今まで何で出てこなかったんだろう……」と驚きましたし、投球を見て「これは負けたな……」と思いました。

 その後、なぜか大地のことが気になってしまい、どうにかこうにか連絡先を聞くことができました。「最近元気?」みたいな感じで、たいしたやりとりはしていませんでしたが、大学での活躍も知っていましたし、いずれプロに来るだろうなとは思っていたので、定期的に連絡を取っていました。

 そこから時は流れ、晴れて大地がカープに入団して再会を果たしました。報道などでカープが指名するだろうなというのは知っていましたが、たしか、あのときはドラフト中継を同学年の堂林翔太とか庄司隼人(現パ・リーグ担当スコアラー兼編成)とかと、秋季キャンプ中に日南で見ていて、まさかくじを引き当てて本当にチームメイトになるとは思っていなかったので、嬉しかったのを覚えています。

 これまで連絡は取っていましたが、実際に会って話すというのは高校生以来だったので、なぜか緊張したのを覚えています。「どうやって接したらいいんだろう……」って。でも、一瞬でその不安はなくなりました。話していてなんか波長が合っていたんでしょうか。そこから気が付いたらよく一緒にいました。ただ、いつもふわっと一緒にいて、ふわっと話しすぎていて、何を話していたとかは記憶にないんですよね(笑)。

■大瀬良大地っていう選手像に憧れていた時期がありました

 もちろん、野球の話はしていました。でも、その日の反省とかはやるんですけど、結局答えがわからないまま終わったりして。「あのときこのボールを投げて打たれたから、こっちの方が良かったのかな?」みたいな話って、正解なんてわからないじゃないですか。でもそれを聞いてもらって安心して、よしじゃあ飲もうみたいな感じでした。相談役というわけではないですけど、それに近い存在だったと思います。

 あと、覚えているのは「ちゃんと体のケアをしなさい」って何回も言われたことですかね。自分になくて大地にあったもの。いろいろあると思うんですけど、一つは野球に費やす時間の長さだと思います。自分なんかは中継ぎなので投げる日、投げない日もあるし、下手したら3球で終わる日もあって。重要かもしれないけど、先発ほど重要じゃないのかなとか考えたこともありました。そこに対する時間のかけ方は大地の凄いところですよね。自分が背負っているものに対して、しっかりと向き合って行動ができるのは尊敬していました。

 今更言うのも恥ずかしいんですけど、大瀬良大地っていう選手像に憧れていた時期がありました。みんなが思い描いているような、野球が上手で、周りが見えていて、チームを引っ張っていく役割をちゃんとこなしている姿。近くで見ていて冷静に凄いなって思っていました。ずっとプレッシャーのかかる立場にいて、いろいろなものを背負わなければならないところで、ちゃんと応えてきていて。そういう選手に自分もなりたいなって。

 今でも12月〜1月の自主トレ期間とか、若い投手陣が大地のメニューで練習しているんですけど、そこでついてきてくれる後輩たちがいて、その上で自分にも自分以外にも厳しくやれていて。自分だったら後輩への甘さとか出ちゃうだろうなって思いますよね。

■「もし監督になったら絶対コーチで来させるからな」

 昨年12月に現役引退を直接伝える機会があって、「ご飯行こう」って誘ったんです。そんなしんみりした感じもなく「野球辞めるわー」って。あんまり暗い話にするわけにもいかないですし、いずれ辞める日はくるものなので、「じゃああとは頑張ってねー」くらいの感じで。大地も「自分が決めたんだったらそれでいいと思うよ」って言ってくれました。

 3年くらい前から思うように投げられなくなって。ごまかしながらやれてた……のかはわからないですが、何をしても上手くいかなくて、気持ち悪いな、嫌だなって思うこともありました。でも、そんなときでもいつも変わらず大地は接してくれていましたし、自然とたくさん支えてもらっていたと思います。改めて感謝したいですね。

 そういえば、引退を伝えたときに大地が「もし監督になったら絶対コーチで来させるからな」って言ってくれたんです。彼はそういう人間なんですよね。でも、僕は「嫌だよ」って断りましたけど(笑)。

 自分は先に辞めてしまいましたが、そのぶん大地には1年でも長く野球をやってほしいですね。そして、プレースタイルもそうですけど、今まで通り変わらずに、変に着飾ったりとかせずにいて、これからもたくさん大瀬良大地に憧れる人を作ってもらいたいです。

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(今村 猛)

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