『マイファミリー』の二宮和也、松本潤、相葉雅紀、櫻井翔…活動休止後の嵐メンバーのドラマ出演を振り返る

『マイファミリー』の二宮和也、松本潤、相葉雅紀、櫻井翔…活動休止後の嵐メンバーのドラマ出演を振り返る

日曜劇場『マイファミリー』(TBS公式サイトより)

「煮るなり、焼くなり、二宮和なり」(伊藤ハム「The GRAND アルトバイエルン」のCM)――ダジャレすら渋く聞かせてしまう演技派・二宮和也主演の日曜劇場「マイファミリー」(TBS系 日曜よる9時〜)が好評だ。

 要因のひとつは初回から圧倒的だった二宮の演技力。鳴沢温人(二宮)、未知留(多部未華子)の娘が誘拐されたことから始まる「マイファミリー」は二宮の真に迫った演技が緊張感を高め、視聴者をぐっと物語に没入させる。

 誘拐事件は意外にも第3回で解決……と一瞬拍子抜けしたものの、その後、鳴沢夫婦と関わりある夫婦たちの子どもが次々と誘拐され、温人が交渉人となったことで逆に犯人の疑いがかかりはじめる。が、5月22日(日)放送の第7回で温人は犯人を突き止めて……。

 温人の立場に変化もあるとはいえ、誘拐→犯人からの連絡→要求された身代金を届けに行く……基本は同じこと(誘拐)が繰り返されている。にもかかわらず世帯視聴率はそれなりにキープしている。考察ドラマとして、また、日曜劇場の視聴習慣を利用した画期的なドラマとして快調だ。それも二宮和也でなければもう少しダレたのではないだろうか。

■「働く大人」を演じる二宮和也のリアリティー

 何度同じようなシチュエーションを繰り返しても二宮は常にぴりっと深刻さをキープしている。演技をしていない二宮和也のときはどちらかというと脱力系の雰囲気があるが演技をすると途端にただならない集中力を発揮し、深みを醸し出す。大御所キラーな面があり、重みある演技で倉本聰、クリント・イーストウッド、蜷川幸雄、山田洋次(50音順)などに重用された。

 大御所たちが二宮を信頼していた点は、自分を追い込んで演技に没頭する若者特有の素朴さではなく、冷静に演技をコントロールできる希少なクレバーさであったように感じる。

 2020年12月31日をもって嵐としての活動を休止した後、二宮和也は俳優としての活動を増やしていくかと思ったら、21年4月にYouTubeで「ジャにのちゃんねる」を開設、後輩たち(中丸雄一、山田涼介、菊池風磨)とエンタメ企画をやっていて、それはそれで面白い。

 それでもやっぱり演技する二宮和也が観たい。……と思っていた21年の1年間を経て、22年の正月、スペシャルドラマ「潜水艦カッペリーニ号の冒険」(フジテレビ系)に主演。彼の代表作であるイーストウッド監督の「硫黄島からの手紙」や山田洋次監督の「母と暮せば」などのように戦争もの、昭和ものの似合う俳優という印象を改めて感じさせてくれた。

 二宮和也には古き良き日本人の心というような、日本の息子代表みたいな雰囲気があった。

 それが「マイファミリー」はうって変わって、ゲーム会社の社長役で父親という本人の実生活とも少し重なる部分も取り入れたかのようなオリジナル現代もの。古き良き日本人の息子代表のようだった二宮が親となり大人世代になったことを示す新たな役柄になったといえるだろう。

 さすがと感じるのが、温人が仕事や交渉に疲れたときの雰囲気のリアリティー。風呂にも入らず労働する人間を細胞レベルで演じて見せる二宮。日本の息子から、働く日本の大人代表になったといえるだろう。この後は映画「TANG タング」、「ラーゲリより愛を込めて」が控えている。

 二宮の連ドラ主演で、活動休止後の嵐のメンバー(大野智を除く)がひと通り、連続ドラマに主演したことになる。ここで、ほかの3人のこの1年間の俳優活動も振り返ってみたい。

■庶民的で不器用な役も演じる、松本潤

 まず、松本潤。23年の大河ドラマ「どうする家康」(NHK)に主演が決まっていて、撮影に向けて準備が着々と進行しているようだ(「鎌倉殿の13人」は21年6月、「青天を衝け」は20年7月にクランクインしている)。国民的番組・大河で国民的ヒーロー・徳川家康とはかなりの重責であろうと期待と注目を一身に浴びる松本は、日曜劇場(TBS系)のヒット作「99.9-刑事専門弁護士」が21年暮れに映画化、22年1月期にはドラマ「となりのチカラ」(テレビ朝日系 木曜よる9時〜)に主演し、ドラマ、映画と着々と活躍している。

「となりのチカラ」の主人公はこれまでの松本のイメージとは異なる。松本は嵐のコンサートの演出をつとめていることもあってキレ者の印象がある。演じる役も出世作「花より男子」(2005年TBS系)の御曹司・道明寺司などの華やかな役や「99.9」の弁護士などのように変わり者だが鋭い役が多い。否応なしに目立つ存在の役を演じてきた松本が「となりの〜」ではともすれば見逃されてしまいそうな目立たない主人公を演じたことが新鮮だった。

 団地のように見えるマンションに妻(上戸彩)とふたりの子供と4人で慎ましく暮らしているチカラ(松本)の仕事はゴーストライター。他者の話を聞いてその人の代わりに文章にする裏方である。

 本当は自分の作品を書きたいがその夢はなかなかかなわない。その仕事のおかげもあってか他者の気持ちに寄り添うことができるためマンションの住人のトラブルを見逃せず、みんなの力になろうとするが、それもまたなかなかうまくいかずにから回りする不器用なチカラ。個性の強いイケイケな役ではない庶民の生活に寄り添う役によって松本潤のイメージが変わった視聴者もいるだろう。

 比較的保守的かつ高齢の視聴者が多そうな印象のあるテレビ朝日で、誠実で親切な役を演じることで、古くからの大河ドラマ視聴者との親和性を図る戦略も感じるし、この体験を経てから演じる“徳川家康”はどんな雰囲気になるのか楽しみだ。

「家康」の番宣で、現場では「食事係」と発言していた松本。つねにおいしいものを差し入れるとか。そういう現場のムードをもり立てていくことはとても大事なことで、さすがだなあと感じる。広い目で全体を見通している印象のあるチームマツジュン、チーム家康に期待したい。

■変わらず親しみやすさを大事にする、相葉雅紀

 ふつうっぽい青年役といえば相葉雅紀の得意ジャンルである。嵐のなかでは最もふつうの人物を演じることを得意として来た相葉。スターであるジャニーズアイドルがふつうの役を演じることは貴重であったわけだが、いまや時代が追いついて来て、ふつうの役こそ主流になってきた。

 昨今は突出したヒーロータイプや屈折した個性的な人物など、いずれにしても目立つキャラよりは、街に溶け込んで自己主張しない、まわりに配慮しているようなキャラが共感を呼ぶ。そんなときこそ相葉雅紀である。21年10月期に放送された金曜ナイトドラマ「和田家の男たち」(テレビ朝日系)は彼の真骨頂であった。

「和田家の男たち」はジャーナリスト三代の物語。新聞記者の祖父(段田安則)、テレビ局員の父(佐々木蔵之介)、ウェブライターの主人公・和田優(相葉)による男3人のホームドラマで、3人で食卓を囲みながらいろいろな話をして、それぞれの価値観をぶつけあう。最初は祖父や父ほどジャーナリズムにこだわりがなかった主人公がウェブで記事を書き、バズリを体験して少しずつ変化し自身の信念に目覚めていく。……書くと硬派ふうだが、相葉演じる優が毎週、おいしそうな料理を作る場面にほっこり。「優クンの台所(@wadayu_recipe)」というインスタアカウントも作られて人気を得た。

 相葉雅紀はこのような料理を作る役や、志村けんの冠番組「天才!志村どうぶつ園」(日本テレビ系。志村が亡くなったあと「嗚呼!!みんなの動物園」と改題し相葉が司会を引き継いでいる)のレギュラーとして動物に触れ合うような役割と癒やし系の世界が似合う。いつも穏やかな笑顔を絶やさず、女性や子どもたちが共感する世界を体現すること。これが自然にできることは大きな武器であろう。

 この先は舞台「ようこそ、ミナト先生」や映画「“それ”がいる森」が控えている。嵐が休止して、ライブ活動がなくなり、ファンと生で触れ合う機会がないなか、いち早く、生の舞台に出ることで親しみやすさを大事にしていることを感じさせるのも好感度が高い。

■知性的な役の貴重な演じ手、櫻井翔

 最後は櫻井翔。嵐きっての知性派としてキャスター、MC業に邁進している印象がある。

 ニュース番組「news zero」(日本テレビ系)の月曜キャスター、バラエティー番組「櫻井・有吉THE夜会」(TBS系)、「1億3000万人のSHOWチャンネル」(日本テレビ系)とフィクションの世界よりもノンフィクションの世界で才能を発揮している。

 世界を俯瞰して見ながら巧みに人やものごとを動かしていくゲームメーカー的な特性は年々、盤石なものとなっている。それは日々、世の中の動きに目を凝らし、学び、他ジャンルの人たちと出会い教養を深めているからにほかならない。

 櫻井のこの知性的な特性はフィクションの世界でも生きる。21年4月期、広瀬すずとW主演した連ドラ「ネメシス」(日本テレビ系)では探偵役を演じた。過去に様々な仕事を経験してきたことが探偵業に役立っているという博識キャラは櫻井ならではだろう。広瀬すずをサポートしながらの狂言まわし的な役割もバツグンの安心感があった。

 物語世界に没頭することなくどこか冷静なまなざしが役の計り知れない底深さにも通じるところがおもしろい。過去作「先に生まれただけの僕」(17年)、「家族ゲーム」(13年)、「ザ・クイズショウ」(09年)などでも存分に発揮されてきた。

 知識が豊富過ぎて、また、ものごとを深く考え過ぎて底知れず怖いという要素はどんなに演技力があっても演じきれない部分である。演じることができる俳優の限られるジャンルで櫻井翔は数少ない貴重な演じ手。たまにはフィクションにも出演してほしいと願う。

 以上、ざっと、嵐休止後、ドラマ活動を中心に、メンバー4人の仕事を振り返った。ここに飄々としてつかみどころなく天才肌な大野智がいないことが寂しくもあるが、どこかで自由に暮らしているのかなと思わせる。それもまた彼のキャラらしい気もする。それでもやっぱり5人が共演する「ピカンチ」シリーズをもう一回観たい。

(木俣 冬)

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