「何をやってもキムタク」木村拓哉(49)が直面した“主役から降りられない問題”…復活のカギは竹野内豊にアリ?

「何をやってもキムタク」木村拓哉(49)が直面した“主役から降りられない問題”…復活のカギは竹野内豊にアリ?

『未来への10カウント』テレビ朝日公式サイトより

 鳴り物入りで始まった木村拓哉主演のドラマ『未来への10カウント』(テレビ朝日系、木曜夜9時)の周辺が騒がしい。

 第3話、第4話の世帯視聴率が「一桁台に突入」と報じられると騒ぎに。予定より1話短く9話で打ち切りか、という記事が出たかと思えば、すぐに削除されるというドタバタ。

 情報は錯綜しました。結局、最終回の繰り上げ報道について「間違っています」とテレビ朝日会長が否定。とにかくザワついています。これも大物「キムタク」ゆえでしょうか。

 世帯視聴率だけ見ればたしかに、第2話10.5%から第3話9.9%、第4話9.6%と一桁台に。キムタク主演ドラマとしては初の試練でしたが、しかしその後また二桁台へと回復しています。

 そもそも、春のドラマが始まる当初。「キムタク主演のボクシング青春ドラマ」と聞いて、「ああ、またヒーローものね」と引いてしまった人も実は多かったのではないでしょうか? 

 何を隠そう私自身もそうした偏見と喰わず嫌いから、いったんは録画したまま放置していた一人です。

 しかし、「視聴率一桁台の屈辱も有り得るかもしれません」という芸能記者のコメントを目にした頃から、急に内容が気になり始めた。きちんと中身を見たくなった。そう、これも「キムタク効果」と言えるでしょう。

■低視聴率ながら伝わった「木村拓哉の役者魂」

 ドラマを見てみると……実に演技が細かい。

 目の動き、間合いの取り方、小さな動作。スリッパを引きずってみたり、ちょっと舌を出したり、人ってたしかにこんなしぐさをするよね、こんな風に話すよね、と独特の微細な表現がリアルで丁寧。

 やはり木村拓哉は演技巧者だと、素直に唸らされました。いやそれ以上に、ある意気込みが伝わってきたのです。

 木村さん自身が49歳という等身大の自分に向きあおうとしている。もはやスーパーな男になる時間は終わったことを自覚し、徹底的に今回のキャラクター造形に力を注いでいる。そのこだわりが随所に感じられる。

 そう、主人公・桐沢祥吾は格好良いヒーローではなくて、「ここまで腐っている人間は初めて」と木村さん自身が語るほど「落ちた人」です。

 高校時代はボクシング4冠の天才ボクサー。しかし、網膜剥離で引退を余儀なくされ、妻は病によって若くして逝去、何とか気を取り直して取り組んだ焼き鳥屋はコロナ禍で行き詰まりピザ配達のバイトで食いつないでいる。

 そこへ母校の高校ボクシング部コーチの話が舞い込んで、桐沢は生徒たちと向き合うことに……。

「そういう人生だから、どうしようもない」「いつ死んでもいい」などネガティブな言葉を口走る木村さんから、新キャラクター作りの意気込みが伝わってきました。「疲労が残る」というセリフを意図的に口にしたりするのも、老いから逃げない表現かと。

 いやこのドラマ、主役だけではない。キャスティングも贅沢です。満島ひかり、安田顕、柄本明、村上虹郎、波瑠、市毛良枝、内田有紀、富田靖子……。

 中でも、満島ひかりさんがいい。木村さんにまったくひるまず対等に全力でぶつかっていくコメディエンヌぶりはイヤミがなく、時に彼を喰ってしまうほどの存在感もちらつかせる。それがまた木村さんを光らせる。

■キムタクゆえの期待度の高さと混乱

 じゃあ、いったい何がいけないのか? なぜ、ことさら「一桁台に転落」「打ち切りか」とネガティブな話が噴出するのか。

 今どき世帯視聴率だけで右往左往するのも疑問ですが、今期ドラマの全視聴率の平均値をみても、『マイファミリー』(TBS系日曜午後9時)に続く2位と好位置につけているのに。

 やはり、「キムタクゆえの期待度の高さと混乱」としか言いようがない。

■木村拓哉が直面した「50歳の壁」

 もちろん、100点満点の完璧なドラマとまでは言いません。特に後半になり、「キムタクゆえ」に陥ってしまったと思える難点がたしかに存在している。

 木村さん自身は「カッコよかったキムタク」のステージから何とか降りようとしているのに、どうやっても「降ろさない力学」があちこちに働いているようです。

 例えば第5話。桐沢が4人の半グレ不良たちと対決し、生徒を救うために鋭いパンチを繰り出し、手のナイフをたたき落として最終パンチのお見舞い。見事にダウンさせた瞬間、桐沢の上にヒーローのイメージが蘇ってきている。

 あるいは第6話、生徒一人一人とリング上で延々スパーリングをして対峙する桐沢の姿は、不滅のヒーロー。キャッチコピーのとおり「何度でも、立ち上がる。」。

 つまり、脚本がやっぱり木村さんを「ヒーローというリングから降ろさない」力となっています。

 キムタク像に忖度してか、ついつい過去のヒーロー像を再生産してしまう脚本や演出。「キムタクだから」「キムタクゆえに」数字に過剰反応するマスコミや業界。木村さんにヒーローのカッコ良さを延々と求め続けてしまう、ファンや取り巻き。

 では、50歳を迎える木村さんの進むべき道とはどこか……? 50歳の壁をどう越えるのか。「何をやってもキムタク」の揶揄を封印する手段はあるのか?

 近年の木村さんの出演作や同世代の役者を見ると、手段はありそうです。それは「3つの引き算」です。

 1つ目の引き算。『教場』『教場U』(フジテレビ系2020・2021年)で演じた風間教官を思い出してみたい。白髪交じりの髪、「両方の目をサングラスによってシェードし、しかも片目は義眼」の不気味な姿。木村さんの特徴のクリっとした丸い2つの目を封印することで、別の存在を見事に出現させました。

 目を隠す、といったことは引き算手法の1つと言えますが、例えば主人公ではなくて脇役に徹するというのも、新たな境地を拓く引き算戦略になるかもしれません。

■「二枚目を捨てた」大森南朋・竹野内豊

 2つ目は、徹底的にダサイ人物に成りきるという引き算。

 たとえば大森南朋さんが大喝采を受けた『私の家政夫ナギサさん』(TBS系2020年)のようにエプロン姿の家政夫、完全オバサン化してイケメンを引き算してしまう。そして別の存在に脱皮してしまう手法です。

 モデル出身の竹野内豊さんも『この声をきみに』(NHK総合、2017年)で成功しました。ファッションはダサく偏屈で孤独な准教授に成りきり、二枚目要素をすっかり捨てた時に、むしろ竹野内さんの持つ人間味や声の響きの方がぐんと立ち上がってきた。

 そう、人間性や内面性へと視聴者の視点を完全にシフトさせる方法です。ただし、『未来への10カウント』の桐沢のように、途中で二枚目やヒーロー像が中途半端に蘇ってきてしまったら効力は薄まってしまいます。

 3つ目は、「キムタク」の固定イメージやこびりついた偏見が限り無く引き算されたゼロに近い環境で、一人の役者として勝負すること。例えば海外作品もチャレンジの一つかもしれません。

 奇しくも国際ドラマ『THE SWARM』(2022年世界同時放送・配信予定、日本はHulu配信予定)が撮了しているとか。これから海外ドラマの中で新たな役者・木村拓哉が出現するのかどうか、興味は膨らみます。

 私としては日本のジョージ・クルーニーを目指して、大人の色気と円熟味、知的で味わいある50代にぜひ突入していって欲しいと願っています。

(山下 柚実)

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