〈本人解説〉「あとで後悔してしまうような一打はしたくない…」実戦譜で振り返る“勝負師” 黒沢咲の“リーチについての思考”とは

〈本人解説〉「あとで後悔してしまうような一打はしたくない…」実戦譜で振り返る“勝負師” 黒沢咲の“リーチについての思考”とは

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「『鳴いたほうがいいのかな?』と思うことはもちろんあります。でも…」“強気のヴィーナス”黒沢咲が明かした“高打点”を狙い続けるワケ から続く

 プロ雀士の中でも、ほんの一握りのトッププロだけが出場できるプロ麻雀リーグ「Mリーグ」。そんな強豪ひしめく環境において3年連続3桁プラスの好成績を残し続けているのが黒沢咲氏だ。強気な麻雀で役満との縁も多い彼女は、いったいどのようにリーチ・手組みを思考しているのだろうか。

 ここでは、同氏が麻雀の魅力をたっぷり語った著書『 黒沢咲の 鳴かずに勝つ! セレブ麻雀 』(KADOKAWA)の一部を抜粋。実戦譜とともに、彼女がどのような考えで牌に向き合っていたのかを紹介する。(全2回の2回目/ 前編 を読む)

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■自分の手と信念に基づいて麻雀を打つ

 私はいつも、まっすぐな気持ちで麻雀を打つことを心がけています。有効だとしても、対戦相手を撹乱させるような小細工は考えずに、素直な気持ちで牌に向き合いたいんです。

 なぜそう思うようになったかというと、不思議なことに、私がそういう「よこしまな考え」を持って麻雀を打つと、そのあと必ずバチが当たるんです。自分の打牌で相手を操縦しようと考えると、痛い目に遭う。

 あの人がやるとうまくいくのに、なんで私だけ……と思ったこともありましたが、今は毎回、罰を与えて教えてくれた麻雀の神様に感謝しています。ごちゃごちゃ考えていた頃より、ずっと力強い麻雀が打てるようになりましたから。

 私のリーチは打点が高いことが多いので、「黒沢のリーチは怖い」とよく言われます。それはうれしいことですが、だからといってその印象を利用して足止めリーチを打つようなこともしません。

 押し返されたときに、後悔したり、なんとなく恥ずかしい気持ちになるんです。「なんでこんな手でリーチしたんだろう?」って。

 私がリーチの際に心がけているのは、とにかく後悔しないと覚悟を決めること。結果によって、あとで後悔してしまうような一打はしたくないと思っています。自分が納得してリーチを打ったなら、その局はうまくいかなくても、切り替えてまた一から手を作ればいいと思えるので。

 次のページからは、私のリーチについての思考や、手組みをしていく上で意識していることをお伝えしていきます。

■手変わりはギリギリまで追ってみよう(2021年10月5日 第2試合 南三局)

 麻雀において、リーチはとても強い役です。そして、リーチは手役やドラと絡めることで、その威力がさらにパワーアップします。手が高くなる可能性があるなら、安易にリーチをかけずにさらなる手変わりを追ってみてもいいかもしれません。

 これは、南三局で全員が2万点台の接戦だった場面です。私は11巡目にピンフのみ、「二筒」・「五筒」待ちでテンパイしたのですが、リーチはしませんでした。ダマテンで1000点を拾いに行ったわけではなく、私としてはこの手をもっと高く仕上げたかったんです。ほしかったのは「四萬」! 高目タンピン三色、一牌変わるだけで3翻もパワーアップするんですから!

 実際には、ここですぐに「二筒」が打たれて1000点を出アガリするんですけど、もしここで「二筒」を引いたらツモアガリしないで、「一萬」を切ってフリテン3メンチャンでリーチをかけようと思っていました。いくらリャンメン待ちとはいえ、1000点の手を2000点にするリーチは私のなかで手牌に蓋をしてしまうリーチで、この接戦の場面でも全然決定打にならないですよね。一手変わって満貫や跳満をアガることができれば、トップがグンと近づきます。

 私は、ピンフのみの手はMリーグのルールでも一発裏なしのルールでも、結構ダマテンにすることが多いです。Mリーグルールの場合はリーチがセオリーという風潮が強いと思いますけど、その手にまだ高く変化する可能性があるならば、私はギリギリまで手変わりを待ちたいと思っています。

■リーチをするなら納得のいく形で(2021年10月19日 第1試合 東二局)

 麻雀は思いどおりに手が進むことばかりではなくて、むしろ不本意な形でのテンパイにたどり着くことも多々あります。ただテンパイしたからといって納得のいかないままリーチをかけると、あまりうまくいかないことが多い気がします。ですから私は、自分のなかで「これなら行ける!」と思えるリーチをかけることを、いつも意識しているんです。

 この場面ではタンヤオ・ドラ1、「二萬」・「二索」のシャンポン待ちに構えていたところで、「三萬」・「六萬」待ちに変化する「一萬」を引きましたが、ツモ切って今の待ちを続行しました。確かにリャンメン待ちにはなるのですが、役をなくしてまで「三萬」・「六萬」待ちがいいとは思えなかったんです。「四萬」引きならタンヤオがつくので「三萬」・「六萬」待ちに変えてリーチなんですけど、「一萬」引きで役なしリャンメン待ちにするくらいなら、このシャンポンのままでいいと思っていました。

 前巡にカン「三索」待ちにも変化させられたのですが、それもしませんでした。もしマンズの形が「二萬」・「二萬」・「四萬」・「五萬」・「六萬」であれば、ソーズ「二索」・「四索」からの“456”三色も見えるので、カン「三索」待ちにしていたと思いますけど、この形から三色変化を見るのは少し遠いですからね。

 この局はシャンポン待ちのまま出アガリをしました。だけど、もしその前に「六萬」を引いてきたとしたら、「一萬」を切ってはいますけど、フリテン3メンチャンでリーチをしていたと思います。

 ちなみに、このシャンポン待ちでリーチをかける気もありませんでした。待ちに自信があればリーチをすることもありますが、自分のなかでは本手という感触がなくて。リーチをしてツモれば満貫ですけど、個人的にはそういう理屈より、自分の感覚に素直に従うようにしています。

■勝機があるなら巡目にかかわらず勝負!(2022年3月1日 第2試合 東一局)

 私は、自分の手が勝負になると感じたときは、残り巡目が少なくても攻めの一手を打つほうだと思います。

 この局は「三筒」を暗カンしていた親から先制リーチが入って、私はオリぎみに手を進めていました。「發」をトイツで持っていましたが、これを鳴いてテンパイを取っても、「二萬」が3枚切れていたので、正直言ってアガリは難しいと思っていたんです。そうしたら、なんと最後の「二萬」を自分で引いてきました。

 残りツモは1回だけでしたし、リーチをすると放銃するリスクもありますが、このときは勝負する価値があると思いました。私の場合はこれをリーチして放銃しても、あまり後悔はありません。

 麻雀において、リスクを下げる選択をするのは大事なことだと思います。でも、私のように高打点を狙うスタイルを考えれば、この加点チャンスを逃すほうが罪深いと思うんです。 だから、「打って後悔なし!」という気持ちで思いきってリーチをかけました。そうしたら、テンパイで粘った対面から一発で發が出て、満貫をアガることができたんです!

 この場面は、ツモ回数が少ないですし、打ち出す「八筒」も安全牌とは言えませんから、テンパイすら取らない人もいると思います。また、テンパイを取るにしても、ダマテンに構える人も多そうです。

 人それぞれ、いろいろな考えがあっていいと思いますが、覚悟を決められるなら、残り一巡に懸けてみるのもひとつの選択肢だと思います。

■ドラ1カンチャンは本当にリーチ?(2021年12月9日 第1試合 東三局2本場)

 時代によってセオリーと呼ばれる考えは変化していますが、最近は、「役なしドラ1・カンチャン待ちはリーチが有利」と言われているようです。さまざまな角度から数字を検証した上でそう言われているのでしょうし、一局単位で見れば確かにそうなんだろうなとは思います。

 これは私がリーチ・ドラ2・赤1、カン「三萬」待ちのテンパイをした場面です。私はここで「二萬」を切ってテンパイを外しました。先ほどのセオリーで言えば、ドラ1どころかドラが3枚もあるこの手は即リーチなんでしょうけど、個人的にはこの手にはまだ変化があると思いました。たとえば「五萬」を引けば「三萬」・「六萬」待ちになりますし、白がアンコになってもうれしい。それと、これは感覚なのですが、「三筒を引くかもしれない」と思って打っていたところもありました。2枚切れなのはわかっていましたけど、「三筒」を引けば「一筒」・「四筒」・「七筒」っていう最高の待ちになるじゃないですか! そうなればアガリがグンと近づきます。

 この手は私にとって完全に勝負手なのです。必ずアガりたい手なのです。だからこそ、自分の形で勝負する。打点的にも最高形を目指す。焦ってこの愚形のままリーチに行ったり、とりあえずテンパイを取っておいたらツモっちゃった、では終わらせたくありませんでした。

 そんな気持ちでテンパイを外したんですけど、次の巡目でいきなり「三萬」を引くんですよね。「よりによって一発なの?」って思いましたけど、その場合はフリテンリーチに行こうと思っていたので、すんなりリーチをかけられて、最終的にはツモって裏ドラも乗り、跳満のアガリになりました。最短のアガリは逃しましたが、こういう意思のある選択がうまくハマったあとは、とても気分よく麻雀を打つことができますし、それが半荘単位で見てもよい結果につながることが多いです。

 麻雀を打つ上で、セオリーやロジックは確かに大事だと思います。でも、麻雀って自由に打っていいゲームですし、一見損な選択に見えたとしても、自分の感覚に従って打つことは、麻雀を楽しむ上ではすごく大切なことじゃないかと思うんです。

 ちなみにリーチ後ですが、「三筒」は本当に引いてきました。こういう私の感覚って、結構当たるんです(笑)。

(黒沢 咲)

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