新聞記者、警察、ヤクザの三者が複雑に絡み合う…90年代東京の“闇社会”を描く

新聞記者、警察、ヤクザの三者が複雑に絡み合う…90年代東京の“闇社会”を描く

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 総製作費88億円。WOWOWと米国の動画配信サービスHBO?Maxの共同制作による超大作ドラマ『TOKYO?VICE』(WOWOWオンデマンドで配信中)が話題だ。原作は同名ノンフィクション。米国出身の元読売新聞記者ジェイク・エーデルスタインが書いた日本の暴力団ルポを基に90年代の東京の闇社会をオール日本ロケで描く。

 エグゼクティブ・プロデューサーは『ヒート』など骨太犯罪映画の巨匠マイケル・マン。自ら監督を務めた第1話から彼の強い拘りが見える。御茶ノ水駅近くにJR中央線と総武線、東京メトロ丸ノ内線が立体交差する場所がある。3路線の電車が同時に通過する瞬間は滅多に撮影できないが、劇中では“トリプルクロス”が起きる瞬間をとらえたカメラがズームバックし、刃物が胸に刺さった男の遺体を映し出す。そこへ敏腕刑事役の渡辺謙が現れ、新米記者ジェイクを演じるアンセル・エルゴートも遠くから見つめる。3路線が交差するここはまさに新聞記者・警察・ヤクザの三者が複雑に絡み合い、様々な思惑や陰謀ひしめく物語の舞台“東京”を象徴する現場だ。この地から物語は始まる。

 妥協しない姿勢はオーディションを経て選ばれた日本人キャストにも表れている。国内の知名度より演技のリアリティを優先して配役しているのだ。特にヤクザを演じる俳優陣が素晴らしい。実直さとあどけなさの中に狂気を宿す笠松将、燻し銀の千原会組長・菅田俊、逞しい肉体と渋い声で敵対する戸澤組組長を演じる谷田歩。そして、一際異彩を放つのがその組の若頭役の田邊和也だ。長身の細面に広い肩幅と強靱な骨格からまるで“死神”のようなムードを漂わせる。彼らの堂々たる演技に思わず「日本にもこんなにいい役者がいたのか!」と唸らされる。

「日本からは海外ドラマのような重厚な作品は生まれない」という先入観があるなら、間違いなく覆される一作だ。

『TOKYO?VICE』
https://www.cinematoday.jp/site/tokyo-vice/

(佐々木 健一/週刊文春 2022年6月23日号)

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