出馬しても「日本の未来は?」と聞かれ…「Wow Wow Wow Wowと言ってほしいんですか?」元モー娘。市井紗耶香(38)と“政治の壁”

出馬しても「日本の未来は?」と聞かれ…「Wow Wow Wow Wowと言ってほしいんですか?」元モー娘。市井紗耶香(38)と“政治の壁”

出馬しても「日本の未来は?」と聞かれ…「Wow Wow Wow Wowと言ってほしいんですか?」元モー娘。市井紗耶香(38)と“政治の壁”の画像

履歴書を送った企業の採用担当者から「ご本人ですか?」…市井紗耶香(38)が“元モーニング娘。”になって体験したこと から続く

 テレビ東京のバラエティ番組『ASAYAN』のオーディションに合格し、1998年に14歳でモーニング娘。の2期メンバーとしてデビューした市井紗耶香さん。16歳でグループを脱退し、20歳で結婚・出産。シングルマザーを経て再婚し、現在は4児の母となった。

 2019年には立憲民主党の比例代表候補として出馬し、落選。今夏の参院選での再チャレンジは辞退したが、「生活と政治は切り離せないもの」として、実際の政治活動で見た“現実”を語ってくれた。

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――市井さんは20歳ではじめての結婚・出産を経験。12年に再婚し、現在はお子さんが4人いらっしゃるんですよね。

市井紗耶香さん(以降、市井) 子どもは一番上の子が高校3年生、その次が中3、小学4年生、保育園児の5歳です。ちょうどいま保育園、小学校、中学校、高校、きれいに揃ってますね(笑)。

――私は一人でもヒーヒー言っているので、きょうだいを育てているお母さんはみんな本当に国民栄誉賞レベルだと思っております。

市井 コツはほどよく手抜き、ですかね。完璧なんて絶対ムリですから。

――仕事、育児だけでなく政治にチャレンジされたことも、子育て中の同世代として勇気づけられました。

市井 でも、たぶん私が初めてじゃないですかね。芸能界、元アイドルという立場から出馬して落ちたのは。今回改選になる三原じゅん子さんしかり、今井絵理子ちゃんしかり、必ず当選してますもんね。

■出馬を打診された当初の心境は「この人は何を冗談言ってるんだろう?」

――市井さんは2019年の参院選に立憲民主党の比例代表候補として出馬し、落選。今年7月の参院選の立候補は辞退されました。そもそも、2019年に出馬した経緯を教えてください。

市井 共通の知人から立憲民主党の議員さんを紹介されたんです。私が子育てに関する講演などを行っていたのを見てくださっていたみたいで、出馬を打診されました。

――出馬を打診されたときのお気持ちは?

市井 最初の最初は「この人は何を冗談言ってるんだろう?」という感じですかね(笑)。ただいろいろお話ししていくうちに、その議員さんは育児中の男性の方で、男性の育児参画をもっと広めていきたいという思いを持っていたとわかって。その他にも共感できる部分が多かったので、やってみようかなと思えました。

■「芸能界のキャリアを捨ててよく飛び込んだね」と言われ…

――子育てをすると、待機児童問題をはじめ、社会と直結した悩みにぶつかりますよね。

市井 「芸能界のキャリアを捨ててよく政治に飛び込んだね」と度々、言われました。でも、私の中ではそんなに突飛なアクションではなかったですね。

 20歳ではじめて子どもを持ったとき、周りに同年代のお母さんは皆無で、育児ノイローゼになりました。母子家庭の環境で育ち、私自身も再婚するまでシングルマザーを経験しました。金銭的にも肉体的にもとても大変で、子育ての苦しさを解消するために行き着いた先が行政でした。なので、政治はむしろ子育てでぐっと近くなっていたんです。

――ちなみに今は、立憲民主党の党員という状態ですか?

市井 いえ、党員ではありません。ただ前回選挙が「次点」だったので、たとえば現職の参議院議員のどなたか失職するようなことがあれば繰り上げ当選になる、という立場ですね。

――国政に参戦することになったとき、家族の反応はどんなものでしたか。

市井 夫はかなり戸惑っていましたね。ただ、自分自身にできることが少なからずあるのではないかと切々と話をして、最後の最後は「紗耶香は折れないから……」と納得してもらいました。落選してしまいましたけど、挑戦できて本当に良かったと思ってます。後悔はまったくないですね。

■子育て、「元モー娘。」…市井さんの直面した政治の壁

――7月の参院選を辞退した理由について、子育てと選挙活動の両立の難しさを挙げられていました。

市井 私が選挙活動するには4人の子どもたちを誰かにケアしてもらわないといけない。たとえばご飯が作れないから外食したり買ってきたもので済ませるにしても、それが続けば金銭的な負担も増える。休みの日や地方での活動依頼があっても、急な場合は特に調整が困難です。

 あとに続く若い人のためにも、政治参画のハードルを下げるためにも、こういった問題は党派を超えて話し合ってほしいひとつですね。

――加えて高い知名度ゆえ、市井さんへの期待値も相当だったと思います。プレッシャーもあったのでは。

市井 子育てに関する生きづらさを変えていきたい思いで政治活動をはじめましたが、その思いよりどうしても「元モーニング娘。」という部分が注目されてしまいがちで、難しさを感じましたね。

■「『Wow Wow Wow Wow』と言ってほしいんですか?」

――具体的にはどんなときに難しさを感じましたか。

市井 たとえば私が誰かの応援演説に行くと、マスコミの方たちが「日本の未来は?」と聞いてくる。「Wow Wow Wow Wow」と言ってほしいんですか?という感じですよね。

 私としてはなんとしても投票行動につなげたい、今の日本の状況を変えたいと必死に訴えていましたが、なかなかそこが伝わらず、「色物」として扱われてしまう。歯がゆかったです。

 あとは、候補者の方から「1分に1回『市井紗耶香は〇〇を応援しています』と言ってくれ」と言われたこともありました。

――候補者が、市井さんのネームバリューで自分のことをアピールしてほしい、ということですね。

市井 私もこの夏の選挙に出る予定だったので、「必ずお返しはするから、顔を売っておくつもりでやってくれ」という意味もあったのでしょう。「選挙は選挙で返す」と言われているそうです。

 ただ、こういった選挙の仕方だとなかなか政治は変えられないのではないか、とも感じました。問題解決のために政治活動に入ったはずが、票固めに重きが置かれてしまい、「問題」のほうが置き去りになってしまう……といったらよいのでしょうか。

 たとえば街宣ひとつとっても、有権者にリアルに寄り添ってくだけた話をするほうが、今という時代には伝わる気がします。投票システム含め、現代的にアップデートしていける部分が政治の場にはたくさんあるのではないでしょうか。

 そういった課題を身を以て知ることができた点も含めて、本当に選挙に出てよかったと思っています。

――また機が熟したら挑戦してほしいです。

市井 記者の皆さん、皆さんそう言ってくださいます。ありがとうございます。ただ、今は広い視野で物事を見ていたいです。バッジが付いていようがいまいが、生きていく限り、生活と政治は切っても切り離せません。だから、日常生活の中で政治の話を自然に話すことができる土壌づくりや、皆さんに喜んでいただけるようなライフワークをしていきたいと思っています。

■「選挙に出ることになったのでよろしく!」と言える家族

――ちなみに、お子さんには政治活動についてどのように話をされたのでしょうか。

市井 「選挙に出ることになったのでよろしく!」です(笑)。

 私が選挙に出たことが関係しているのかはわかりませんが、高3の子は今、政治経済を勉強しています。誕生日が間に合わなくて今回の参院選は投票できないのですが、子どもの10代の目線、私の30代の目線と、違った角度で政治を見て、互いに勉強し合えるのは嬉しいですね。

――国民的アイドルになった10代、シングルマザーも経験しながらはじめての子育てに奮闘された20代、そして政治の場で活躍するようになった30代と、本当に駆け抜けていますよね。

市井 他人事として聞いても、どこで息継ぎしたらいいのか分からない人生ですね(笑)。でも、今はむしろ落ち着いているというか、ゆっくり深呼吸できている気がします。

――それはなぜでしょう。

市井 家族というホームのおかげですかね。独り身だったらもう一回、立候補してたかもしれない(笑)。でも今は私だけの人生ではないですし、いろんな世代の子どもたち、そしてパートナーが身近にいてくれることで、自然とアンテナが多方面に向くようになりました。

 家族が型にはまった考え方を壊してくれるのと同時に、自分にとってそこは息抜きのスペースでもあって。本当に支えられて生きているなと感じます。

――どんな瞬間に家族の支えを感じますか。

市井 やっぱり息抜きできるときですかね。家で「疲れた〜」と言いながらプシュッとビールを開けて、「おいしいね」と言い合える。そして子どもたちと一日の報告をし合うときが幸せでもあり、私が今一番守りたいものなんだなと思います。

写真=三宅史郎/文藝春秋
衣装=MIESROHE

(小泉 なつみ)

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