「ちょ、まじか…」都心からアクセス抜群な立地に四駆乗りの聖地が!? オフロードガチ勢が集う“激ヤバ河川敷”に行ってみた

「ちょ、まじか…」都心からアクセス抜群な立地に四駆乗りの聖地が!? オフロードガチ勢が集う“激ヤバ河川敷”に行ってみた

普通に歩く分にはただの砂利道だが、車の中では振動や傾きが大きく増幅される

「皇居の前でもビクビクせずに走れますから」2児の父が“横転も当たり前”なガチオフロード車を改造し続けた“意外なワケ” から続く

 アウトドア愛好者のなかには、さまざまな「ガチ勢」がいる。そのうち、道なき道を車で突き進むことを無上の歓びとしているのが「オフロードガチ勢」である。

 聞くところによると、そんなオフロードガチ勢が集う聖地のようなエリアが相模川沿いの河川敷にあるという。その河川敷は、一体いかなる場所なのか。果たしてそこには、どのような人物が集まっているのか。

 未舗装路を走れる車を持たない取材班だったが、筆者の義弟が最近オフロード趣味に目覚め、ミニバンからハイラックスサーフに乗り換えていたことを思い出す。既にリフトアップなどのカスタムも済ませてあり、その河川敷にも何度か行ったことがあると聞いていた。

 同乗を快諾された我々は、オフロード仕様の大きな車体に飛び乗り、件の河川敷へと向かったのだった。

■首と腰が常時ガクガク…取材班に降りかかるオフロードの洗礼

 圏央道厚木PAで高速を降り、ものの数百メートル。一本道のガードレールがわずかに途切れたところに、未舗装路への目立たない入り口がある。草木で先は見通せず、一般人の立ち入りを拒むような様相を呈している。

 車が砂利道に入った途端、オフロードの洗礼が始まった。容赦のない振動と突き上げが、運動不足の我々の頸椎をメッタ打ちにする。

「ちょ、まじか……」――取材班の一人が思わず声を上げた。自然と、乗員の誰もが頭上のアシストグリップに手を伸ばしている。普通に歩けばただの砂利道だが、無数の凹凸は車内をアブトロニックな空間へと変えてしまうのだ。

■「ヤバい姿勢」で段差にチャレンジするガチ勢たち

 しかし、これはまだほんの序の口にすぎなかった。

「この辺までは砂利の目も細かいから、普通の車でも全然入って来られるんですよ」

 ドライバーが言うとおり、入り口付近の開けた場所にはミニバンや1BOXが止まっており、そこからオフロードバイクに乗り換える面々も見られた。

 奥に進むにつれて、砂利の目は粗くなり、身体はせわしなく上下にバンプする。徐行のようなペースで進んでいるにもかかわらず、背骨から首にかけて、振動と突き上げの波状攻撃が絶え間なく襲ってくる。

 敷地には急な斜面や大きな段差が点在しており、常軌を逸した角度でそれらを駆け上がろうとする四駆の姿も見られる。こうした「難所」がオフローダーにとってのスポットになっているようだ。

 障害物があれば無条件にそれを乗り越えようとするオフローダーの姿は、初めての遊具に夢中になった少年たちを思わせる。ラジコンを荒れた道で走らせる楽しみを、そのまま実車に引き継いでいるような感覚なのかもしれない。

■わずかな段差がアトラクションに

 いくらか状況を楽しむ余裕のできた我々を見て、ドライバーがサービス精神を発揮し、下り傾斜にあえて車を突っ込ませた。突然前輪がガクンと下がり、落下Gに股間がヒュンと寒くなる。

 落ちるのを待つジェットコースターのような態勢で止まり、「え、これ大丈夫なの?」と車内に不穏な空気が流れる。ドライバーはひとり悠然と車を進め、一方の我々は不細工な悲鳴とともに、意図しない小ジャンプを繰り出す有様であった。

 あとから見ると、その地点の高低差は30cmほどもない。何でもない斜面や段差の一つひとつが、車に乗るとアトラクションに変貌するのである。

■走行コースには「暗黙のルール」も

 開放されているエリアは数キロ四方におよび、ポイントによって地質や地形もさまざまだ。草木が茂り、自然に分かれ道のようになっている箇所もあるが、案内図などは当然掲示されていない。

 傍から見ると、だだっ広い砂利道を四駆やオフロードバイクが縦横無尽に走り回っているように映る。しかしやはり、各自が事故を避けつつスムーズに走行できるよう、「反時計回りが原則」といったルールが暗黙に了解されているそうだ。

 ルートが網の目のように交錯している箇所もあるが、常連の利用者の間では「初心者向け」「上級者向け」といったコース区分が大まかに共有されている。立ち入ってはいけない私有地も隣接しており、初めて訪れる際には詳しい人間に案内してもらうことが必須である。

 今回はもちろん、初心者向けのルートで河原に向かう。時間にすると10分程度ではあったが、砂利道にぬかるみ、草木にほとんど覆われた道と、路面状況や視界がめまぐるしく変わる。

 つねに身体が強ばっているため、助手席に乗っているだけで疲労困憊になり、絶叫マシンに乗ったあとのようなゲッソリ感に見舞われた。

■キャンプベースはストレスフリーな空間

 目的地としていた河原まで辿り着くと、いくつかのグループがキャンプを設営しており、河原で遊ぶ子どもたちの姿も見られた。

 よく見るキャンプ場の風景だが、河原に辿り着くまでには相当な悪路を突破しなければならないため、キャンプベースには「ガチ感」あふれる四駆の車が並んでいる。取材班が加わったグループには、優に20名を超える参加者がいた。

 アウトドアに馴染みのない取材班は、どのように振る舞うべきか迷っていたが、参加者たちは見ず知らずの我々に気さくに声をかけてくれる。差し入れられたスポーツドリンクが、緊張しきっていた身体に沁みた。

 どうやら決まった楽しみ方はないらしく、テントの中で寝転んだり、車のボンネットを開け談笑したり、数名でオフロード走行に向かったりと、各々がストレスなく過ごしている印象だ。

 岩に乗り上げ、ひしゃげてしまったボディを自身で板金修理する男性の姿もあった。緩やかなつながりを保ちつつ、互いの自由な行動を受け入れる寛容な空気が感じられる。

■ピンチでの「助け合い」がコミュニケーションを生む

「キャンプ趣味の四駆乗り」と聞くと、「陽気で日焼けした、筋肉質の男性」を思い浮かべてしまうが、実際に集まっている人たちのキャラクターは実にさまざまだ。取材したグループを取り仕切る人物は次のように言う。

「親子連れで来る方も多いですし、年齢層としても10代から60代まで隔てなく交流していますね。今日も初めて参加している人がいるんですが、ああいう風に、走るなかで自然にコミュニケーションが生まれるんですよ」(グループ代表者)

 指された方を見ると、ジムニーがブロックを乗り越えようと奮闘しているところに、常連が集まり進入角度についてアドバイスをしている。

「あのような形で、皆さんがお互いに助け合いながら楽しんでいるので、一日過ごせば自然と友達になっちゃうんですよね。そのまま野営して、お酒でも一緒に飲めばもう親友です。

 自分もここで何度かハマって動けなくなったところを、周りの人たちに助けてもらったことがあります。『ありがとうございます』から『今度また遊びに行きましょう!』というように、自然に輪が広がっていくんですよ」(同前)

 スタックや横転のリスクとつねに隣り合わせのオフロード走行においては、少なからずドライバーは緊張や不安に苛まれる。自力では脱出しえない状況に陥ったとき、見返りなく救いの手を差し伸べてくれる周囲の存在は、何よりありがたく感じられるはずだ。

「ある程度の年齢になって、自由な時間ができてからオフロードにハマり、『ジムニーを買ってから人生が一気に楽しくなった』という人もいますよ。60歳を超えてから若い人たちと友達になるなんて機会は、他じゃなかなかありませんけど、ここでは本当に分け隔てのない関係が築けるんですよね」(同前)

 共通する趣味に、トラブルが起きた際の助け合い。自然の開放感もあって、心の壁がおのずと取り払われやすい環境なのだろう。数ある車趣味のなかでもコミュニケーションが生まれやすいジャンルであることから、異なるジャンルからオフロードに移行してくるドライバーも多いのだという。

「若い頃はドリフトとか車高短とかをやっていて、最終的に四駆に落ち着く、という人も結構います。身体の衰えによる影響も少ないですし、家族みんなで楽しめますし。『こんなに家族で遊べる車趣味はなかった』という声はしょっちゅう聞きますね。

 あと、オフロードは数キロしか走らなくても、疲労感と充実感が味わえるので、車の趣味としてはかなり経済的でもあるんですよね」(同前)

■利用者によるマナーの徹底が環境保全に

 オープンな助け合いを通じて形成されるオフローダーのコミュニティは、おのずと利用している場所を保全するための取り組みにもつながっているようだ。

「もともとオフロード用の施設ではないですし、勝手にこうして使わせてもらっているわけなので、なるべく自分たちでいい環境を守っていかないといけない、という気持ちがあります。

 定期的にやっているのがゴミ拾いですね。ここは誰でも入れる場所なので、以前から業者や個人の不法投棄が多いのですが、地元の四駆乗りの人たちや、ショップの人が中心になって清掃活動をしています。SNSで呼びかけると何百人とか集まったりするので、そういうネットワークの強さは四駆乗りの特徴かなと。

 色々規制が多いなかで、この場所をまだ開放してもらえているのは、そうした取り組みもあってのことなのかなと思います。感謝を忘れずに使っていきたいですね」(同前)

 たしかに、ボール遊びのできる公園も少なくなった現代において、公共の河川敷におけるオフロード走行が容認されているこの河川敷の現状は、きわめて特異なケースと言える。

■有志コミュニティが県との協議を重ねて自治される“場”

 河川敷を管理する県の担当部署に話を聞くと、やはり該当エリアのオフロード利用は自然発生的に生じたものであり、自治体として積極的にその用途に向けた管理を行っているわけではないようである。

 河川敷に面する道路沿いにはスポーツセンターや工場が並び、民家からは一定の距離があるものの、走行するポイントによっては砂塵が外に散ってしまうことがある。あるいはエリア内の水門付近での走行が、土手の損壊につながるとして、河川敷への立ち入り禁止が検討されたこともあったという。

 こうした問題に対して、利用者の有志コミュニティが県との協議を重ね、利用者に対して走行禁止エリアの共有や走行時の注意点などを周知徹底することで、現在の自治状況が生まれている。

 今回、実際に利用者たちと交流をもった我々は、彼らにとってこの場所が単なる「遊び場」ではなく、ここで形成されるコミュニティが各々にとっての居場所たりえていることを肌で感じた。

 自治体による住民の声の吸い上げと、有志コミュニティとの連携、さらに利用者によるマナーの徹底・共有が、こうした環境の存続には欠かせない。

(鹿間 羊市)

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