「そこは私の席じゃないんだ…」灰原哀役・林原めぐみが『名探偵コナン』の現場で抱いた“嫉妬のような気持ち”とは

「そこは私の席じゃないんだ…」灰原哀役・林原めぐみが『名探偵コナン』の現場で抱いた“嫉妬のような気持ち”とは

灰原哀 『名探偵コナン』アニメ公式サイトより

「感情がないわけではなく、感情を知らない」林原めぐみが綾波レイを演じる過程でたどり着いた“人間の表と裏” から続く

『新世紀エヴァンゲリオン』の綾波レイをはじめ、『名探偵コナン』の灰原哀や『スレイヤーズ』のリナ=インバースなど、数々の人気キャラクターを演じてきた林原めぐみさん。ほかにも『らんま1/2』女らんまや『ポケットモンスター』シリーズのムサシなどを演じ、世代を超えて愛されている声優の一人だ。

 そんな林原さんは、自身の演じたキャラクターとどのように向き合ってきたのか。ここでは、林原さんの著書『 林原めぐみのぜんぶキャラから教わった 今を生き抜く力 』より一部を抜粋して、『名探偵コナン』灰原哀が持つ“役目”について紹介する。(全2回の2回目/ 前編を読む )

◆◆◆

■コナンくんにこき使われる幸せの意味

『名探偵コナン』という作品が放送されていることは知っている…程度の認識だった頃です。途中参加で番組に加わり、コナンの秘密を握っているという「ミステリアスな少女」を演じることになりました。

 初登場は衝撃的でしたね。ランドセルを背負って、かわいらしく、質素に登場する転校生。ところが拳銃は撃つわ、泣きまねはするわ、江戸川(えどがわ)コナンである工藤新一に揺さぶりかけるわ…。どっからどう見ても悪役的要素満載な彼女。

 一方スタジオでは、コナン役の高山みなみ嬢に頼り切り。わからないことや、今までの経緯など、あれこれレクチャーを受けながら、アフレコは順調に進んでいきました。参加当初は哀ちゃんの出ている回に毛利(もうり)蘭(らん)ちゃんや、(毛利)小五郎さんが一緒に出てくることはなく、灰原哀として、コナンや少年探偵団のみんなと過ごす週がしばらく続きました。

 そんなある日、スタジオ入りしたところ、先週まで私が座っていた席に、蘭ちゃん役の山崎和佳奈ちゃんが座っており、仲睦むつまじく、みなみちゃんとお話ししている! 個人的には仲の良い、和佳奈ちゃんではありますが…なんでしょうかねえ、あの時の敗北感。ああ、そこはもともと私の席じゃないんだ…。そうじゃなかったんだ、もう何年も前から…。

 自分が途中参加であることを今さらながらに痛感し、遠く離れた、しかも二人がよく見える席を陣取り無言で座る…(大人げない)。

 とはいえ、哀ちゃんは、(阿笠)博士と一緒に登場することが多く、スタジオ入りした博士役の緒方賢一さんが「哀くんの席を取っておいたよ」と、ご自分の荷物を椅子に置き、私の席を確保しておいてくれたり、「灰原さん、灰原さん」と、何かと哀ちゃんを真正面から好いてくれる(円谷?)光彦役の大谷育江ちゃんも、私の隣に座るようになり、右手に博士、左手に光彦くんというなんともあったかい座席が定位置となって、今も続いています。

 本編同様、嫉妬のような、モヤモヤした気持ちがしばらく続きましたが、結局のところ、幸せだった工藤新一と毛利蘭を引き裂くことにもなった薬「アポトキシン4869」の開発者は自分なわけで、コナンくんに守られたり、助けられたりした中で生まれ出た感情は、世にいう恋愛感情ともほんの少しだけ違い、罪悪感や孤独感が入り混じる中、自分の状況を誰よりも理解している、ある意味運命共同体の唯一無二の人として、心の中では処理していっているように思います。

 最近ではすっかり“相棒”としてのポジションも定着し、「相棒と言いながら、ただただこき使っているだけじゃないの?」と言い返したくなるほど、江戸川コナン専用検索エンジンと化していますが、見えない場所で、明らかに彼にしか出来ない何かをやっている状況を支えられるのは、お互いの信頼の上に成り立っているわけで、話の途中で電話を切られようが、用件のみの連絡だろうが、時に腹も立てつつ、「サンキュー灰原」の一言で収まりがつく。

 いつも、どこかで死を考えていた哀ちゃんにとっては「誰かの役に立つ自分の存在」は、ある意味幸せな場所なのだと思い、大切なお役目に取り組んでいます。

◆◆◆

 この続きは、『林原めぐみのぜんぶキャラから教わった 今を生き抜く力』(KADOKAWA)に収録されています。※海外では翻訳版(英語・簡体字・繁体字)も発売中。

?

(林原 めぐみ)

関連記事(外部サイト)