〈世の中が変わると評価も変わる!〉約40年続く『信長の野望』でいつの間にか“能力値が5倍以上”になった武将とは?

〈世の中が変わると評価も変わる!〉約40年続く『信長の野望』でいつの間にか“能力値が5倍以上”になった武将とは?

シリーズ名にもなった“看板武将”、織田信長

「現実問題として信長がすべての仕事に指示を出せるはずがありません」『信長の野望』の生みの親がこだわった“戦国時代のリアル” から続く

 戦国大名になりきって天下統一を目指す人気ゲーム「信長の野望」シリーズの最新作『信長の野望・新生』(PC、PlayStation4、Nintendo Switch用)が21日、発売されました。

 1983年に誕生して以来、40年近くヒットを続けるこの人気作。最新作までの道のりを、“生みの親”のシブサワ・コウさんに聞きました。

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■シリーズを経るにつれて評価が向上した武将は…

――「信長の野望」シリーズには、前田慶次や井伊直虎など、世の中で注目が集まるようになって登場するようになった武将たちもたくさんいますね。

シブサワ・コウさん(以下、シブサワ) ゲームは、人生の大切な時間を使って楽しさや感動を得るものです。である以上、世の中の動き、ブームにある程度同期させながら作ることは大切で、それは今回の『信長の野望・新生』でも同じです。

 信長も戦国時代で、新しい“ビジネスモデル”にチャレンジしていたのですから、コロナの中で新しい生き方が求められ、模索していることと、信長の生き方を重ねてもらえればと思います。

――「変化」と言えば、武将の能力もシリーズで変わっているんですか?

シブサワ 歴史の研究が進んだり、新しい資料の発表、新解釈があると変わりますね。

 たとえば、昔は信長に敗れたため評価されなかった今川義元ですが、今は新しい資料から「名君」だと評価されるようになりました。それを受けて、義元の政治の能力値も変化し、以前は70台ということもありましたが、今は90台と高くなっています。

 また、「信長包囲網」を作り上げた将軍・足利義昭も外交に関するパラメーターが90台と高く設定されるようになりました。昔とはかなり違います。社会の評価に合わせて変えた……と言えると思います。

――既に約30年前の『天翔記』(1994年)で、もう女性武将が登場していますし、女性にスポットを当てるのも早かったように記憶しています。

シブサワ コーエー(当時)では、女性向けのゲームも制作していました。だから違和感がありませんでしたし、ファンから「女性を活躍させてほしい」という要望もありました。

 中でもこの人を……とあげるとすると、私が好きなのは立花ァ千代(立花宗茂の妻)ですね。当社のゲーム『仁王』にも登場しましたが、女武将としては一番りりしくて凛としていると思います。

 後は帰蝶(濃姫)ですね。内助の功で信長の草創期に支えていたのは大切だなあと。

――内助の功という意味では、シブサワ・コウさんと同じですね(妻はコーエーテクモホールディングスの襟川恵子会長)。

シブサワ うちのカミさんは会長で、私は社長なので“部下”ですから。それに42年前、私の誕生日にパソコンをプレゼントしてくれて、これがきっかけとなってゲーム開発が始まりましたので、頭が上がらないのです(笑)。

■氷川きよしが楽曲提供、大河ドラマの地図を監修…

――40年近くシリーズが続くようになり、作品を取り巻く環境は変わっていったと思います。今作では氷川きよしさんが曲を提供していますし、シブサワ・コウさん自身も、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で「3D地図監修」も担当されるようになりました。

シブサワ 氷川さんは実はゲーマーで、「信長の野望」もプレーされているそうなんですよ。アニメにも曲を提供されていますし、そうであればゲームでも歌ってくださるのかなと思って、ご相談をしました。企画段階で曲の候補に挙がってきたときからすごく期待していましたし、実際素晴らしい歌唱力で見事な主題歌になりました。

 NHKさんの大河ドラマでいうと、最初に「真田丸」(2016年放送)で参加した時には、ゲーム業界からも多くの反応をいただきました。(『妖怪ウォッチ』や『イナズマイレブン』などで知られるゲーム会社)「レベルファイブ」の日野(晃博)さんからは、直接電話をいただきましたね。テレビとゲームの接点は今後も増えていくと考えていますし、ゲームの可能性を広げたいです。

 いまもツイッターで書き込んでいただいたり、「シブサワ・コウが監修していると安心して見られる」と言っていただけると、うれしいですね。地図は作中の位置関係や距離感も一目瞭然ですし、進軍に困難な地形も、すぐイメージできますから。

■シリーズの“原点”は…

――アーティストにも楽曲を提供されるようになり、メディアにも一目置かれるようになりました。シブサワさんの「原点」ではありませんが、織田信長という存在を最初に知ったのはいつだったのでしょうか?

シブサワ 小学生のころ、(故郷の栃木県)足利市で流行していた戦国武将のカードゲームですね。段ボールを切って、戦国武将名を書いていたもので、近所の子どもたちの手作りだったのでしょう。その時に「織田」という名前に出会ったんです。その後は、大学生か社会人のときに読んだ司馬遼太郎の小説「国盗り物語」ですね。

 足利市は、歴史・文化の町なんです。わが家の菩提寺・法玄寺(足利尊氏の六代前・義兼の正室で、北条時政の娘・北条時子の菩提を弔うために建てられた)が実家のすぐ裏にあり、遊ぶ場所でした。戦国時代と足利氏の歴史が身近にあるんですね。だから武将カードで遊ぶことに違和感はありませんでした。

――シリーズの原点はまさに歴史にあるんですね。

シブサワ 歴史と今の技術をつなげるのも、大事な視点だと思います。実際、今、注目しているのは映像化技術で、ソニーグループもゲームの映像化に積極的に取り組むなど、ゲームと映像の世界が近くなっていますから、我々も積極的になれたらと思っています。

 また、横浜・みなとみらいにゲームアートミュージアム(2026年完成予定)を設計中で、体験型のゲームも設置して、庭園も作り込んでいるので、新しいランドマークになればと思っています。ゲーム『三國志』のファンも泣いて喜ぶと思いますよ(笑)。

■「ゲームを途中でやめられないほど楽しいか」

――最後になりますが、シブサワさんがゲーム制作の上で最も大切にしている“哲学”のようなものはありますか?

シブサワ 時間を忘れてのめりこむ充実感ですね。いまでも、「信長の野望」シリーズを開発するときには、大まかな方針だけを決めたら、あとは(開発チームに)任せるようにしています。最後は自分でプレーして、頭の中で想像した以上の面白さになっているか実際に確かめるんです。

 ゲームを途中でやめられないほど楽しいか……と言い換えても良いかもしれません。そういうゲーム、作品に出会えることは本当に幸せだと思います。

シブサワ・コウ=コーエーテクモホールディングス・襟川陽一社長のペンネーム。主な代表作は「信長の野望」シリーズや「三國志」シリーズなど。大河ドラマ「真田丸」や「鎌倉殿の13人」などの3D地図監修も担当。

?コーエーテクモゲームス All rights reserved.

(河村 鳴紘)

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