日本の宝・大谷翔平とアメリカンリーグ西海岸の楽しみ方

日本の宝・大谷翔平とアメリカンリーグ西海岸の楽しみ方

大谷翔平選手 ©文藝春秋

 いやー、大谷翔平さんって本当にいい選手ですね。トレードでロスアンジェルス・エンジェルス(LAA)から出されちゃうのかと思ってドキドキしてましたが、別の主力が放出されて今季のエンジェルスは終戦。大谷さんにやりたいようにやっていただくには最高の球団になりました。

 大谷さんが幾ら活躍しても戦績が振るわず、監督が更迭されてもいまひとつパッとしないエンジェルスですが、今度大谷さんが先発する相手のオークランド・アスレチックス(OAK)って球団がもっと弱いんですよ。

 何といっても、アスレチックスは「弱い」「不人気」「カネがない」の走攻守揃ったダメ球団の扱いになってしまい、どうにも残念な状態に陥っております。

■「誰やねん」という若手選手が閑古鳥のなかのびのびプレイ

 アスレチックスと言えば、かつては名優ブラッド・ピットさんが主演とプロデュースをした映画『マネーボール』(原作はマイケル・ルイスさん)で、カネはなく著名選手はいなくても重要な出塁率、すなわち「アウトにならない能力」を持つ格安の選手をかき集めてきてリーグ制覇を成し遂げ、ワールドシリーズで金満球団である当時の大正義ニューヨーク・ヤンキースに挑む、というモデル球団でもありました。

 当時の球団GMであったビリー・ビーンさんは、アメリカ球界きってのアレな感じの人で、私もかつて仕事でほんのりご一緒したことがあるんですが、普通に話している分には何も問題ない割に何かあると実にアレな感じでした。ただ、先般このビリー・ビーンさんもアスレチックスの球団経営ではすっかり偉くなってしまった一方、相変わらずアスレチックスは貧乏であります。

 そもそも、アスレチックスがフランチャイズを置くカリフォルニア州オークランド市はエリア的に治安が悪いうえに、球場であるオークランド・アラメダ・カウンティ・コロシアムは市の中心部から遠いという「これでどうやって観客呼ぶの」って感じの老朽化した状態になっております。しかも、主力選手を市場価値があるうちにどんどん放出してカネにしてしまうので、いまのラインアップもコロナ前から見れば「誰やねん」という若手選手が並び、閑古鳥のなかのびのびプレイしているような状態です、アスレチックス。

■人気投票ではダントツの最下位

 それもあって、オークランド市からはプロバスケもフットボールも次々と撤退・移転されてしまい、いまやどこにも行くあてのないアスレチックスだけが大手メジャースポーツのプロ球団ということで、最近になって1兆円かけて新球場建設をするんやという話が市議会でようやく進みつつあるというのが現状です。ほんとかなあ。

 昔は不人気貧乏球団と言えばサンディエゴにあるパドレスやタンパベイのレイズ(旧デビルレイズ)、アリゾナのダイヤモンドバックスあたりだったわけですけれども、MLBの一部のアンケートなどでの人気投票ではダントツの最下位に輝いたのがアスレチックスなのであります。有望選手(プロスペクト)リストを見ても、マイナーリーグが好きな人でも「誰やねん」という若者が並んでいるあたりも要チェックです。

【OAK】プロスペクトランキング【2022シーズン前】
https://note.com/10_11/n/n9bf761578c9b

■日本での顧客拡大のためのメジャー開幕戦も

 日本では、かつてアスレチックスから南海ホークスにトニー・バナザードさんがやってきてさっそく乱闘となり近鉄・加藤哲郎さんにパンチを見舞うなどの武力の高さを見せつけ、ロッテ戦ではぶつけた荘勝雄さんに逃げられた腹いせにトレーナーさんもついでに殴るなど、オークランドからやってきた名刺代わりの一発をこぶしで披露するなどしておりました。その加藤哲郎さんも「どっちが怖いか言うたら、ロッテのほうやな(巨人はロッテより弱い)」の素敵発言で物議を醸して日本シリーズを巨人にひっくり返されるという事件も引き起こしています。

 まだイチロー(鈴木一朗)さんがシアトル・マリナーズにいるときは、日本での顧客拡大のためにマリナーズVSアスレチックスというイタいカードのメジャー開幕戦を組まれたりもしたのはいい思い出です。その後もコロナ前の2019年にイチローさん引退の顔見世興行的な同カードが組まれ、菊池雄星さんとかもいて日本でのアスレチックス知名度向上にほんのり貢献をしました。良かったですね。

 そんなアスレチックスの魅力は、魅力がないことです。

 コロナ感染拡大がアメリカ的には明けたことになっている2020年シーズンには、強い打棒と堅実なショート守備で鳴らしたセミエンさんが、21年シーズンは主砲の一塁手オルソンさんにゴールドグラブで一発屋のチャップマンさん、先発の柱であった右エースのクリス・バシットさん、左エースのマナエアさん、捕手もできる中堅選手のベタンコートさんまで放出。カネがないんだよカネが。まともに活躍していた選手は、保有期間を1年以上残した市場価値のあるうちに全員見事に放出されました。チーム解体ショーとまで呼ばれるわけですよ。実際、解体されたように見えますからね。

■見た目だけで年俸総額は3,000万ドルを切ってしまう

 そればかりか、2022年オフにはオークランドを長年率いてきた、まあまあいい監督であるイケメンのメルビン監督までパドレスに取られてしまいました。なんということでしょう。サンディエゴと言えば、故障後コマンドが通用しなくなり引退間近かと煽られていたダルビッシュさんが無事復活を果たしたことで有名な球団です。ちなみに、マナエアさんの放出先もパドレスです。大事に使ってね。

【SD】パドレス新監督にボブ・メルビン就任
https://note.com/tsukamiotoko/n/nda5df522b9b9

 さらにこの7月末になって、まだ放出し足りないってことで、故障明けの右先発・モンタスさんに救援守護神のトリビーノさんをトレードで放出。結果として、アスレチックスの全選手の年俸総額は見た目だけで3,000万ドルを切ってしまうわけですよ。それも、水面下で先方球団が年俸負担をしてくれる「死刑囚割引」も一部あるかもしれず、実際にはもっと安いカネしか選手に払ってない恐れもあります。

■超強いアストロズに奇跡の3連勝のスイープ勝ち

 そんな中でも、先日アメリカンリーグ西地区首位を走るヒューストン・アストロズとの3連戦で、アスレチックスは奇跡の3連勝のスイープ勝ちを果します。それも、主力を放出した結果、この前までAAとかで先発してて、今年前述のバシットさんとのトレードで何となくオークランドにやってきたオラーさんが投げてたりするんですよ。これで超強いアストロズに勝っちゃうんだから、野球というのは分からないものです。

 誰やねんこれって思いますよね。

 長年、アスレチックスのファンをやってる私でさえ、「誰だっけこいつ」ってなりますし。

 振り返れば、今年のオークランドは確かに主力全部放出しちゃってクソ弱ダメ球団みたいな扱いになっているけれど、プロスペクトのような潜在能力の高そうな若手の積極起用と特徴のある中堅選手の併用で何とかやりくりする方針であるようで、前半戦はセンターにパチェさんという23歳の若き守備職人が、また、内野にもニック・アレンさんという井端弘和さんみたいな守備職人も定着。その後、両打のスカイボルトさんがセンターに定着したり、誰やねんという状態のまま先発ローテーションに入れられオールスターに選出されたブラックバーンさん、中継ぎにAJパックさん、スニードさん、アセベドさんといった、総じて誰やねんというラインアップであることはぜひ知っておいていただきたい。

■世界の大スター・大谷翔平さんとの一戦の相手になれるだけで興奮

 そして、主力が放出した後で中軸を打つのは、キャッチャーだけどまあまあ打つショーン・マーフィーさんや、打率1割台で全然打たないけどアスレチックスの中ではまあまあ打つ扱いになっているボートさん、ステロイド打ってて出場停止になってたけど打撃ではあまり打たない割にアスレチックスの中ではまあまあ打つほうになってるラウレアーノさん、普段はあまり打たないけどたまに満塁ホームランとか打つピンダーさん、抜けた主力の穴埋めには全然なってないけど主力打者が右打者ばっかりだから大きいのが打てる左として起用されているセス・ブラウンさんなどが、相手先発に応じて左右病患者の監督によって適当に起用されているような感じであります。

 何といってもアスレチックス、オールスター前後まで「空前のチーム低打率」で記録的な貧打を誇っており、シーズン平均打率.210というメジャー史に残るゴミ打線なんです。それでいて、大正義ヤンキースや常勝球団アストロズに一泡吹かせることがあり、そんなどうしようもないアスレチックス打線に対して大谷さんがどんなピッチングを披露してくださるのか楽しみでなりません。

 中でも、個人的にイチオシであったトニー・ケンプさん、去年に比べてだいぶ三振が増えてしまって、売りであった「三振より四球が多くて地味に出塁率キング」って状況ではなくなってしまって、昨今ではピンダーさんやピスコッティさんとの併用になってしまって残念です。もっと四球を選んでほしいと思います。

 よく分からないけどオールスターに選ばれたブラックバーンさんも、後半戦初戦で5回途中10失点降板とかいう往年の園川一美的ロッテ臭のする投球を披露し、やっぱりなと思わずにはいられないんですが、そういう魅力のない魅力に満ちたオークランド・アスレチックスが世界の大スター・大谷翔平さんとの一戦の相手になれるというだけで日本人の私は興奮するんですよ。

 仮面ライダーに立ち向かうショッカーの戦闘員さんの群れが、案の定蹴散らされて敗北するわけですが、大正義のヒーローというものは、偉大な相手が好敵手となってそれを打ち負かして初めてみんなの声望を集めるわけでありまして、そんなやられ役であるオークランドのことも少しでもいいから知っていて欲しいなと思います。

 大谷翔平さんの引き続きの活躍を、心よりお祈りしております。

(山本 一郎)

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