〈追悼・小林清志さん〉実は妹がいる、本人より先に“ニセモノ”が登場…ルパン三世の相棒・次元大介はどう演じられてきたのか?

〈追悼・小林清志さん〉実は妹がいる、本人より先に“ニセモノ”が登場…ルパン三世の相棒・次元大介はどう演じられてきたのか?

『ルパン三世PART6』公式HPより

 人気アニメ「ルパン三世」の次元大介役などを務めた声優の小林清志さんが、7月30日、肺炎のため89歳で亡くなった。ルパン三世の声優を務める栗田貫一さん、そして、小林さんから次元役を受け継いだ大塚明夫さんら「ルパン三世」の声優陣が追悼のコメントを寄せている。

 長年にわたって国境を越えて親しまれたキャラクター・次元大介は、小林さんによってどのように“命”を吹き込まれてきたのか。昨年、同役卒業が報じられた際の記事について、ここに再公開する(初出・2021年9月10日、年齢、肩書き等は当時のまま)。

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 9月7日、モンキー・パンチ原作の国民的アニメシリーズ『ルパン三世』(’71年〜)で、ルパンの相棒・次元大介の声を約半世紀にわたり演じ続けてきた声優の小林清志さん(88)が、同役を卒業することが発表された。後任は人気声優のひとりにしてベテラン・大塚明夫さん(61)だ。

 小林さんは1971年に放送を開始した『ルパン三世』(第1シリーズ、通称PART1)から天才ガンマンである渋い二枚目・次元大介の声を演じてきた。日本テレビ系でこの10月から放送がスタートする『ルパン三世PART6』では、初回に小林さんが次元を演じる最後のお話「EPISODE 0 -時代-」を放送。それ以降は大塚さんが引き継ぐことになる。

■五ェ門の存在で明確化されていった“ガンマン”設定

 今でこそ“ルパン三世のなくてはならない相棒”である次元は、じつは原作では第10回が初登場。それも本人ではなく、「ルパンを追う次元大介刑事」(=実際は、自分のニセモノ(ニセルパン)を追うルパンが変装した、“次元大介刑事”)としての登場で、本人が出ないうちに“ニセモノ”の方が先に登場するというかなり異例のデビューだった。

 次の回で満を持してようやく本物が登場。ルパンの相棒となるきっかけも描かれるが、“早撃ち0.3秒”とアニメ版のナレーションで語られるガンさばきはまだ完全には描かれなかった。“天才ガンマン”の設定は、“コンニャクだけは斬れない”斬鉄剣の名手・石川五ェ門とのキャラクター対比の中で、より明確にされていく。

 TVアニメでは第1シリーズの第1話から既にルパンの右腕として登場。以降、皆勤賞……と書きたいところだが、残念ながら第1シリーズの第20話のみ登場していない。

 そのネーミングは“次元が違う”など「次元」という単語がつく言い回しを好んだ、モンキー・パンチ先生のもじりからだという。ルパン、五ェ門、銭形警部と違い、架空もしくは実在人物の子孫でもなく、出自は不明瞭だが日本人で、原作ではルパンの幼な馴染みで妹がいることになっていた。

■宝塚でも演じられてきた次元大介

 テレビアニメ版では一貫して小林さんが演じてきた次元役だが、作品全体ではそうそうたるメンバーが演じている。

 OVA(オリジナル・ビデオ・アニメ)第1作/劇場アニメシリーズ第4作『ルパン三世 風魔一族の陰謀』(’87年)では、『開運! なんでも鑑定団』(’94年〜)の名調子で知られる銀河万丈さんが演じていた。プレステ用ソフト『D2MANGA ルパン三世』(’98年)では郷里大輔さん、コラボOVA企画『ルパンしゃんしぇい』(’12年)ではFROGMANさんが声を演じている。

 また、最初の実写映画『ルパン三世 念力珍作戦』(’74年)では『北の国から』シリーズ(’81〜2002年)の黒板五郎役で知られる田中邦衛さんが、2014年公開の実写映画『ルパン三世』では玉山鉄二さんがめいめい個性的に次元を演じていた。ミュージカルの世界では、『ルパン三世 I’m LUPIN』(’98年)でホシノケンジさんが、宝塚歌劇団によるミュージカル『ルパン三世 -王妃の首飾りを追え!-』(’15年)で、宝塚女優の彩風咲奈さんがそれぞれ華麗に次元を演じていた。

■「次元大介調で」「そういう注文が多いんだよね(笑)」

 小林さんは『ルパン三世』第1シリーズ終了後、後番組のドラマに顔出しで出演している。これは当時、スピン・オフと呼ばれ、前番組の出演者が、視聴者をそのまま後番組に引っ張るために後番組にも出演するテレビ独自の風習にならってのことだった。

『ルパン三世』の後番組はさいとう・たかを先生原作の特撮ヒーロー番組『超人バロム・1』(’72年)。同番組で小林さんは、主人公のひとり、木戸猛の父親で警視庁きっての鬼刑事・木戸燐太郎役を演じていた。アニメ作品から実写作品へのスピン・オフ出演も珍しいが、刑事に追われる身(殺し屋役)から刑事役へのバトンタッチも面白い。「もちろん『ルパン』の流れだけじゃなく、小林さんの名演技に惚れ込んでのことですけどね」とは同番組のプロデューサー・佐野寿七さんの弁。

 小林さんの美声は次元の声にとどまらず。石原プロモーション製作の名作TVドラマ『西部警察』シリーズ(’79〜’84年)や『仮面ライダーBLACK』(’87〜’88年)、それに『列島警察捜査網 THE追跡』シリーズ(’11年〜)のシブいナレーターとしてご記憶の方も多いことだろう。

 映画・ドラマの企画・プロデュースもさせていただいている筆者も小林さんの大ファンで、『犬刑事 INU-DEKA』(’99年)というオリジナル・ビデオ作品で猫のヤクザ、猫の又三郎というぬいぐるみキャラの声を演じていただいた。

 半ば当然の如く「次元大介調で」とお願いしたわけだが、「そういう注文が多いんだよね」と苦笑されながら、ものの見事に渋く演じてくださった。小林さんが演じると、愛くるしいはずの猫の着ぐるみの顔までナイスミドルに見えてしまうからじつに不思議だ。改めて小林さんの“声力”のすごさを痛感した。

■「俺はそろそろずらかるぜ。あばよ」

『ルパン三世PART6』の公式サイト上で小林さんは「ルパンは俺にとって一生ものの仕事であった。命をかけてきた。我儘(わがまま)を言えば90歳までやっていたかったが残念。あとは、明夫ちゃんに委ねます。頑張ってちょうだい。最後にこれまで応援してくれた人たちにお礼を申し上げる。ありがとうございました。ルパン。俺はそろそろずらかるぜ。あばよ。―?小林清志」(一部抜粋掲載)と、次元に成りきってのコメント……というよりは、次元同様、仕事に命を懸けるひとりの男としてのコメントを発表されたが、思わず “あの声”で脳内変換されて読んでしまった。

 後任の大塚さんは、第1シリーズで五ェ門役を演じた大塚周夫さんを父に持つ名優中の名優。明夫さん主演のTVアニメ『ブラック・ジャック』シリーズ(’04〜’06年)も大好きな筆者としては、ミーハーチックに大塚さんの次元にも期待を寄せているが、父子二代で『ルパン三世』の名キャラ二人を演じるレジェンドぶりにも感動を覚えてしまう。

 約半世紀を経て、キャラクターの声が継承されるなど、アニメ大国の我が国ならではのことではないだろうか? 小林さん、本当にお疲れ様でした。そして、こちらこそありがとうございました。大塚さん、新・次元を楽しみにしています。

(岩佐 陽一)

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