名作コンビが手がける弁護士モノ 主演の二人のこじらせ役が巧い――亀和田武「テレビ健康診断」

名作コンビが手がける弁護士モノ 主演の二人のこじらせ役が巧い――亀和田武「テレビ健康診断」

有村架純 ©文藝春秋

 弁護士ドラマ『石子と羽男─そんなコトで訴えます?─』が、従来の弁護士モノとはひと味異なる切り口で観る者を飽きさせない。

 W主演は有村架純と中村倫也。東大卒の秀才なのに司法試験を4度落ち続けている石田硝子(しょうこ/有村架純)は、マジメで頭が固いから石子。父の綿郎(さだまさし)が経営する法律事務所のパラリーガルだ。

 硝子がサポートする弁護士の羽根岡佳男(中村倫也)は海外の大学を中退したが、司法試験は一発で合格した高卒弁護士だ。

 自分のルールを頑なに守る石子とは真逆で、己を天才に見せることに腐心する羽男。そんな二人が依頼人にどう対処するかでやり合う口論がテンポ良く、笑える。有村、中村の二人とも、こじらせ役は巧い。

 プロデュース、新井順子。演出、塚原あゆ子。『最愛』『MIU404』『アンナチュラル』を手がけたコンビは今作も冴えている。

 第1話は「カフェで充電したら訴えられた」事件からドラマが始まる。新井Pはそんな「身近なトラブル」に関する本を読み、「小さい事件から物語が大きく動いていく展開が面白いなと思ったのがきっかけです」と語る。

 カフェで充電してたら100万円払えと請求された大庭蒼生(赤楚衛二)の依頼を受けた羽男だが、これは何かあると勘づく。大庭が毎晩通ったカフェの席の、通りの向こうは、少し前まで彼が勤務していた中古車販売会社の支社だ。

 大庭の依頼には裏があるはずだ。支社でのパワハラが判明。さらにその加害者の正体も二転、三転する。

 ポンコツ弁護士として以前の事務所を解雇された羽男だが鋭い推理をみせる。羽男にはフォトグラフィックメモリーという能力がある。一瞬見ただけで覚える。「でも条文や判例を覚えても、裁判で想定外の展開が起きると混乱し」フリーズすると自嘲する羽男。

 第3話ではファスト映画をアップした青年の国選弁護人になる。地味な作風で、一作に10年をかける映画監督(でんでん)の作品が、ファスト動画で流れた。青年は監督のファンだ。これを観た人間は映画館に行くはずと思っていたから、「何が悪いんですか」と罪の意識がない。

 第2弾のファスト映画を観て、羽男はまたも特殊能力で新たな犯人を知る。犯人は製作スタッフの一人だった。監督は「私の映画は時間もかかるし、ヒットとも縁遠い。気づけば65歳。また10年かかったら映画は撮れない」。最初の青年の謝罪にも「未熟で申し訳ないが、謝罪は受け容れない」と静かに拒否し、スタッフの犯人は告訴せず穏便に解雇した。無骨な映画監督の怒りと諦めをボソリ呟く、でんでんの横顔と背中から、じんわり苦い哀しみが伝わる。

INFORMATION

『石子と羽男』
TBS 金 22:00〜
https://www.tbs.co.jp/ishikotohaneo_tbs/

(亀和田 武/週刊文春 2022年8月18日・25日号)

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