「誰も住んでる感じはしない、でも…」深夜の山中に佇む“プレハブ小屋”が心霊スポットだとウワサされる不気味な理由

「誰も住んでる感じはしない、でも…」深夜の山中に佇む“プレハブ小屋”が心霊スポットだとウワサされる不気味な理由

©iStock.com

 ライブ配信サービスTwitCastingの怪談語りチャンネル「禍話」。2016年から始まったこのチャンネルでは、これまでに2000話を超える怪談が紹介されており、多くのホラーファンを惹きつけている。

 同チャンネルでホストを務めるのは、北九州に住む書店員のかぁなっき氏と、映画ライターの加藤よしき氏だ。

 今回はかぁなっき氏が知人のSさんから聞いたという友人3人の体験談、「招きプレハブ」を紹介する。山奥に出現した謎のプレハブ群で若者たちが見た、“ありえない存在”とは一体――。(全2回の1回目/ #2 を読む)

◆ ◆ ◆

 この話は、かぁなっき氏が知人Sさんに怖い話がないかと尋ねた際に、「よくわかんない話でよければ……」と遠慮気味に教えてくれたというエピソードだ。この話を実際に体験した人物はSさんではなく、Sさんが20代の頃によく遊んでいた友人たちだという。

「本当に意味がわからない出来事っていうか……。こういう怖い系の話って、だいたい『次はお前だー!』みたいにドキッとするオチがついているもんじゃないですか。でも、なんというか、これは本当によくわかんなくて、だからこれが怖い話って呼べるのかもわかんないんですよね。でも、思い出すたびに、なんか気持ち悪くなるんですよ」

 Sさんはそう前置きしたうえで語り始めた。

■夏の心霊特番の予告が流れた

 関東地方北部に住むSさんは、今でこそ社会人として働いているが、若い頃は少々やんちゃもしていた人物。当時は仲間内にも似たようなタイプの人が多く、夜は遠方まで足をのばして遊びまわっていたそうだ。

 本格的な夏はまだ先だったがジメジメとした梅雨入りをする季節に、Sさんの友人だったAさん、Bさん、Cさんは、いつものようにAさんの自宅へ集まって時間をつぶしていた。

 ザッ、ザッ、ザザッ。

 午後11時頃、Aさんが気怠そうにテレビのチャンネルをザッピングしていると、画面には、夏の心霊特番の予告が流れ、女性タレントが真っ暗な山の中で怯えている映像が映し出されている。スマホをいじりながら、Cさんがぽつりとこう話した。

「そういや、1カ月くらい前に俺、彼女と心霊スポットが原因で喧嘩したことあるわ」

「え、どういうこと?」

「くだらない理由で喧嘩しすぎだろ」

 笑いながらCさんにツッコミを入れるAさんとBさん。しかしCさんの様子は、微妙にいつもと違っていた。

「まあ、お前らには笑えるかもしれねえんだけど……」

■恋人が懐かしんだ“心霊スポット”

 Cさんいわく、恋人のDさんとドライブしている最中、Aさんの自宅からそう遠くない山の一角に差しかかると、急にDさんが過去を懐かしむように、元彼との馴れ初めを語り始めたのだそうだ。Dさんによれば、同じエリアには不気味な心霊スポットがあると聞いて友人数人と一緒に出かけたことがあり、そこで元彼と出会った……という話だった。Cさんはデリカシーのなさに苛立ち、車中で喧嘩になってしまったのだという。

「で、結局どんな心霊スポットだったの?」

「そこ気にする?」

「いや、お前の喧嘩よりそっちが気になっちゃって……」

「なんだっけなあ、なんかプレハブ? がたくさん建ってた、とか言ってたわ」

「それだけ? 幽霊が出るとか、そういう話じゃないの?」

「俺も気になってネットで調べたんだけど、ホームレスが死んでたとか、ババアに追いかけられたとかウソっぽい話しか載ってなかった」

「ふーん……行くか、これから?」

「いいね!」

「思い出の地巡りしようぜ」

「ふざけんなよ。お前ら」

■着の身着のままで車に乗り込んだ

 嫌がるCさんをよそに、深夜ノリが高じて車で現地へ向かうことに。夜の山道へ軽率に足を踏み込むのは危険だが、一行は着の身着のままで車に乗り込んだ。

 Cさんの運転で、夜の道をひた走る。Cさんはそのプレハブがある場所に行ったことはないそうだが、道中、Dさんから聞いた話をゆっくりと話した。

 その山を少しだけ分け入った場所。

 木がところどころ切り倒されてできた、奇妙に開けた空間。

 そこに、プレハブが建っている。

 1畳から2畳くらいの小さなプレハブが、1棟ではなくボコボコと数十棟も。

「でもさ、プレハブって何棟も建てるもんなの?」

「それ俺も気になってた。普通物置とか休憩所とかでしょ」

「俺に聞かれてもわかんねえよ。でも、誰も住んでる感じはしなかったって言ってたな」

■ゾッとするほどの静けさ

 周囲から街の明かりは消え、車窓から見えるのは真っ暗な山道に変わっていく。

 ジャリジャリジャリ。

 砂を踏みしめるタイヤの音。

「ちょっとここからは歩くしかねーな」

 カチャ。

 エンジンを切った途端、彼らはゾッとするほどの静けさに包まれていることに気がついた。車から出ると、そんな静けさとともに、蒸し暑い夜の空気と湿気が肌にまとわりつく。

「暗っ……結構こえーな、おい」

 音と明かりのほぼない空間に、さすがの彼らも恐怖を感じ始める。

「歩きって、まじかよ」

「でも、この先すぐらしいって彼女言ってたんだろ? 大丈夫だろ」

「見つかるかわかんないからな。俺行ったことないんだし」

「まあ、見つかんなかったら適当に帰ればいいよ」

■無数のプレハブが乱立した空間が

 だが、山中は過酷だった。左右が草でみっしり覆われた獣道。歩くたびに葉先や枝が腕や足に擦れていく。すぐに着くはずが、歩けど歩けどプレハブ群は見つからない。

「痛っ! また刺さった……」 

「わりとこれキツいな」

「帰る……?」 

「いや、帰るってここまできて帰るのダサすぎだろ」

「おい」

「うお! 虫か……ビビった」

「おい!」

「なに?」

「あれ……」

 Aさんが、照らしたスマホのライトの先。

 ぼんやりと開けた空間に、無数のプレハブ小屋があった。

( 後編 に続く/文=TND幽介〈A4studio〉)

恐る恐る首を突っ込んでみると…深夜の山奥のプレハブ小屋から出てきた“女の正体”に戦慄「思い出の場所だったのに」 へ続く

(A4studio)

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