“鳥谷チルドレン”の私が巨人・直江大輔、井上温大、大勢の沼へとはまった理由

“鳥谷チルドレン”の私が巨人・直江大輔、井上温大、大勢の沼へとはまった理由

9月23日の中日戦でプロ初勝利をあげた井上温大

■千里の道もにわかから!

 みなさんの推し選手は誰ですか? なぜ好き? いつから好き?

 巨人コラムだけれど隠さず言おう。私は鳥谷チルドレンだ。2003年に鳥谷様に出会い(画面越しで)、今では人生の選択肢はすべて鳥谷様を見て判断して生きている。でも19年前はなんとなく、すごい人が阪神に入ったんだ。かっこいい守備だな。リップサービスとかしないんだな。同期の青木宣親選手の方が目立っていて悔しいな。あれ? なんで悔しいんだろう? あ、私は鳥谷選手が好きなんだ。そんな気づきから、鳥谷チルドレンの「千里の道」は始まった。

 にわかは罪か? そうじゃない。嘘が罪なのだ。好きじゃないものを好きということ、好きじゃなかった期間も好きだったと偽ること、それが罪なんだ。私は常々そこにストライクゾーンの境界線を引いている。そんなに詳しくないけど、この人のことがなんだか気になります。それはとても素敵なことじゃないか。それは物語の起承転結の「起」なんだから。

 というわけで、今回私の中で芽生えている巨人の「起」について書く。詳しい方、ご教授ください。私、彼ら3人と千里の道が始まるかもしれないんです。

■第一の「起」:直江大輔

 ファン感謝デーが近づくと思い出すのは、彼女だ。そう、直子。いや、名前は今適当につけたが、直江大輔投手の女装姿のことだ。男性ががんばってメイクしたんだね、やっぱり筋肉のたくましさは隠し切れないね、じゃなくて純粋に「女性として」ものすごくかわいかったんだ。(ぜひ 公式Instagram をご参照ください)

 

 そんなこんなで正直見た目から(かわいい女の子として)気になりはじめて、試合を見てみたらどうだろう。マウンドさばきの清涼感。背筋ピンな投球フォーム。回を追うごとに上がっていく球威。どことなく原監督から注がれる大きな愛に翻弄されているようにも見えるわびしさ(河野調べ)。

 先発として起用され始めた当初は4回2失点と好投していても、ピンチを迎えるとあっけなく投手交代を告げられるようなことも。もうちょっとで勝ち投手の権利ゲットなのに、ダメですか原監督!? 先発の枚数が足りてないようでしたら、もっといい場面で直江投手起用していただけませんか原監督!?

 素人のくせにおこがましくもそんなことを感じているうちにこちらも意地が出てきて、いつの間にか私は直江投手絶対勝ってほしいマンになっていた。今季はここまで9登板、うち3試合が先発で1勝1敗、防御率3.38。来季こそは先発ローテーションを直江投手が回してほしい。切実に願うほど愛は育っている。

■第二の「起」:井上温大

「阪神の岩崎優投手に似たタイプ」

 井上投手の2019年ドラフト評だ。岩崎投手はこれまた私にとって特別に大好きな選手だ。だから正直、井上投手ご本人のピッチングを見る前から推しを公言してしまった。値札を見ずに買った宝石のような。真価を知る前に、ほんの軽い気持ちで推し始めた。まさに「にわか」からのスタート。

 それが今年8月。東京ドーム。ついに井上投手のピッチングを初めて生で見た。なんだこの投手は……とてつもないじゃないか……! 6回からリリーフ登板し1回2/3を投げたが、「俺の球、打てるなら打ってみ!」と叫ぶかのようなゴン攻め。

 巧打者揃いの広島打線相手に一歩も引く気はなさそうで、テレビで見るより何倍も気迫の火力が強かった。勝手にシャイで物静かなイメージを持っていたから興奮倍増。球団公式SNSのオフショット動画だとカメラに目線を一切くれないのに、マウンドに立つと獲物から一切目をそらさない。完全に狩られる小動物から狩る獰猛な肉食動物に豹変している。

 岩崎投手に似ているというのは一部理解した。下半身のどっしり感とフォームの雰囲気など。ただ、当たり前だがまったく別物だ。あなたにはあなただけの輝きがある。それを目の当たりにして、「にわか」から「ガチ勢」への起承転結がひとつ進んだのを感じた。

■第三の「起」:大勢

 推しにベタも何もないけれども、やっぱり目立っている人を好きになるのはなんだか悔しい気持ちになる。私だけ? 誰に対しての悔しさ? 何、この感情? 流行りの曲なども、一旦手を出さずに置いておいて、喉元過ぎて世間が熱さを忘れた頃フラットな気持ちで聴きたいタイプだ。

 だけど今季この選手はさすがに避けて通れなかった。新人王に最も近いドラ1ルーキー・大勢投手。ピッチングフォームがまずセクシー。一度つま先立ちみたいになってからグニョッと柔軟な軌道で投げ込んでくるあのフォルム。触手みたい。不思議。

 もともと私はリリーフ大好きマンだ。シーズン当初から新人ながら守護神に抜擢され、あまたの厳しいシチュエーションも「フゥン?」みたいな表情でサクサク封じ込めていく姿にシビれないなんて無理だった。好きになりそう…好きになりそう…という感覚はずっとあり、私の心の牙城が崩れているのは感じていた。

 が、結局決め手となったのはいつか。誤解を恐れずに告白する。Yohji Yamamotoのユニフォーム初戦の9月6日。DeNA・佐野選手に延長11回勝ち越しホームランを打たれた姿だ。あの失意の顔が妙にセクシーで、私の心はついに陥落した。打たれた直後に少し膝に手をついたあとの眼が良い。失意から「ちくしょう」という執念に切り替わる瞬間が良い。この速さで切り替えて後続を断つんだから大勢はガチ。大勢には追い付けない。大勢は宇宙次元。

■好きになろう限りなく

「河野さんは平等に野球が好きでいいね」と、たまに言われる。が、フタを開けるとこんなものだ。いつだって一方的でわがままな偏愛。見に行った試合で活躍した選手に自分の人生を重ねたり、はたまた一枚の写真や記事の一文で軽率に気になり始めたり。ファンは自由だ。嘘をついたり攻撃したりしない限り。

 気ままに応援して、それが自分の歌の根拠になり、好きな選手の力に(グッズを買えばお給料に)なるならいい。直江投手、井上投手、大勢投手、恵みをありがとうございます。どうぞこれからも沼らせてください。

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(河野 万里奈)

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