「太った人が笑って楽しそうにしててもいいの?」109kgのおデブアイドルが54kgだった頃を“黒歴史”と呼ぶ理由

「太った人が笑って楽しそうにしててもいいの?」109kgのおデブアイドルが54kgだった頃を“黒歴史”と呼ぶ理由

びっくえんじぇるの大橋ミチ子(左)と多田えり ©文藝春秋

「体型にご飯を我慢するほどの価値はない(笑)」109kgと109kgの重量級アイドルが“ぽっちゃり”ではなく“デブ”と名乗る意味 から続く

 109kgの大橋ミチ子と、同じく109kgの多田えりの2人で活動する重量級アイドルユニット「びっくえんじぇる」。

 2人はこの夏、多くのアイドルが憧れる祭典「TOKYO IDOL FESTIVAL」のステージに登場した。他の出場アイドルの2倍を超えるサイズの2人が登場すると、会場は大盛りあがりだった。

 しかし「びっくえんじぇる」がアイドルの祭典にたどり着くまでには、体型に悩んで摂食障害に苦しんだ日々や、そもそもアイドルと認めてもらえず「デブ! ブス!」と暴言を浴びることもあったという。(全2回の2回目。 #1を読む )

◆ ◆ ◆

――「TOKYO IDOL FESTIVAL(TIF)」はアイドルにとって夢の舞台だと思うのですが、出演が決まった時はいかがでしたか?

ミチ子 TIFに出場するための選抜ライブに出ていたんですが、投票結果が発表された瞬間にえりぴよに抱きついて号泣しました。「びっくえんじぇる」で活動する前から2人ともTIFに出たくて、私にとっては8年越しの夢。「アイドルとして認められた」とやっと思えました。

えりぴよ 嬉しくて変な声出ちゃったよね。

■「『自分に厳しいデブ』になる必要があるんです」

――実際にTIFのステージに立った時の手応えはどうでしたか。

ミチ子 振り付けを一緒に踊ってくださる方が結構いてびっくりしました。ステージの後にエゴサしたら「おデブアイドルすごいじゃん、ちゃんと動いて踊って可愛いじゃん」っていうのを見つけて、また号泣(笑)。

――2018年のデビューから4年、デビュー時は5人だったメンバーも、3人が卒業して2人になっています。そもそもアイドルは大変な仕事だと思うのですが、「びっくえんじぇる」特有の大変さもあるんですか?

えりぴよ たしかにアイドルは競争が厳しいので頑張らないといけないことも多いんですけど、私たち2人がおデブなのって、そもそも自分に甘いからなんですよね(笑)。でも私たちは事務所にも入ってないし、ライブのスケジュール管理やYouTube動画作成、また、衣装や曲などすべて自分たちでプロデュースしているので、結構「自分に厳しいデブ」になる必要があるんです。自分に厳しくするのに2人とも慣れてないから、それが一番大変ですね。

■減量の反動で、泣きながら肉まんを両手に持って食べた日

――そもそも、お2人はどうしてアイドル活動を始めたのでしょう。

ミチ子 私はもともと芸能界に興味があって、「びっくえんじぇる」を始める6年前くらいまで芸能事務所の養成所に通っていました。当時は身長167cmで60kgくらいの標準体型。でも先生に「芸能界を目指すならあと5~6kg痩せてほしい」と言われて、無理なダイエットに手を出しました。水とヨーグルトみたいな生活を半年続けて54kgまで痩せたんですけど、養成所に行くたびに体重を測られるのがどんどん怖くなって、後半はほとんど何も食べられなくなりました。今の私から見たら60kgでもめちゃくちゃ痩せてるんですけど、当時の私は「太ってる、全然ダメ」と思い込んでいました。

――それは苦しい精神状況ですね……。

ミチ子 病院へは行かなかったんですけど、いわゆる拒食症だったんだと思います。でもある日、養成所の帰りにコンビニの前を通った時に揚げ物の匂いがフワッとしたんです。そこから気がついたら両手に肉まんを1個ずつ持って、わんわん泣きながら食べてました。

えりぴよ 揚げ物の匂いで入ったのに、肉まんなんだよね。

ミチ子 そこはほんと謎なんだけどね(笑)。でもその時に、このままだと心が壊れちゃうなと思って、養成所を辞めてダイエットも辞めました。そしたら反動で、今度は過食症になってしまったんです。1日中ずっと食べ続けて、半年くらいで体重は80kg近くまで増えました。太っていく自分が許せないけど、食べることがやめられない。あの時期は地獄でした。

――どうやってその状況を脱したんでしょう。

ミチ子 たまたま書店で「la farfa(ラ・ファーファ)」というぽっちゃり女子向けのファッション雑誌を見つけたのがきっかけでした。ぽっちゃりしたモデルさんが笑顔で水着を着ている姿を見て、すごい衝撃を受けました。「太った人が笑って楽しそうにしててもいいの?」っていう気持ちが湧いてきて、家に帰ってすぐモデル募集に申し込みました。オーディションに合格して撮影に呼んでもらったら、周りの私より太った人が楽しそうにしてるのを見て、太ってても幸せになれるんだ、と気づいたんです。

――「太っている=幸せになれない」だったんですね。

ミチ子 そうですね。でもモデルとして活動するなかで、太っている自分がいろいろなことに挑戦する姿を見てもらったら、体型で悩んでいる女の子たちの「希望の星」みたいになれるかもと思って、おデブアイドルの「びっくえんじぇる」を立ち上げました。

えりぴよ それで私は、みっちゃんが始めた「びっくえんじぇる」の募集を見て応募したんだよね。応募した時点で「唐揚げ」担当は取られてて、マヨネーズになったけど(笑)。

ミチ子 「唐揚げ」は譲れなかった。アイドルで茶色担当もレアだし。

■「自分は駄目なんだ、太っているから可愛くないんだ」

――えりぴよさんは体型についてはどんなふうに考えていたんですか?

えりぴよ 私はみっちゃんと違って3歳ぐらいからずっと太っていて、子供の頃はそれが本当にコンプレックスでした。プールの時間はずっとお腹に力を入れてへこませたりしてましたね。クラスの子や見知らぬ人にもすれ違いざまに「大根!」と言われたりするのは日常茶飯事。昔は「自分は駄目なんだ、太っているから可愛くないんだ」って自分をずっと否定していました。それなのに、痩せたくても痩せられない。人の目が怖いから外にも出たくない、という状態でした。

――アイドルとは正反対の精神状態に聞こえます。人前に出たいと思うようになったきっかけはあったんでしょうか。

えりぴよ コスプレに憧れがあって「死ぬまでにメイド服を着てみたい」と思って探してみたら、ぽっちゃりさんがメイドをするメイド喫茶のイベントの存在を知りました。「75kgの私でもいいですか?」と勇気を出して行ってみたら、みんな私より大きい(笑)。しかも100kgオーバーの人の方がむしろ人気で、「75kgとか細くて物足りない」みたいな雰囲気だったんですよ。こんな世界があるのかと驚いて、それまでの価値観が覆されました。ずっと体型に対してネガティブで自分を否定してきたけど、そんな時間さえも勿体無く感じてしまいました。

ミチ子 よく考えたら75kgってめちゃくちゃ細いよね。今その1.5倍あるよ。

えりぴよ たしかに、いまメイド服着たら人気になるかな(笑)。

■痩せてネガティブだった頃が「黒歴史」

――お2人は痩せていた頃を“黒歴史”と呼んでいるんですよね。

えりぴよ 今より痩せていたけどずっとネガティブだったし、今の方が絶対ハッピーですからね。でも言われてみれば、普通はダイエットして痩せた人が、太っていた頃を黒歴史っていうのか。

ミチ子 でも今の方が幸せだもん。痩せていた頃より100倍幸せなので、私たちの場合はやっぱり痩せていた時が黒歴史で合ってると思います。

■「世の中のデブに対する風当たりを思い知らされたよね」

――「びっくえんじぇる」を結成した時の家族や友人の反応はいかがでしたか。

えりぴよ うちの家族はわりと「できるところまでやってみれば」っていう感じでした。反対はされませんでしたね。

ミチ子 私も家族や友達は優しかったんですけど、「びっくえんじぇる」のために250万円ぐらい借金したことは結構心配されました。衣装はもちろん特注だし、私たちのサイズを作ってくれるところは限られるんです(笑)。曲や振り付けもプロの方にお願いするので、アイドルって意外とお金がかかるんですよ。

えりぴよ しかもみっちゃん、メンバーに借金のことを言わなかったんですよ。全部返した時にやっと教えてくれて、「めっちゃかっこいい、一生ついて行こう!」ってあらためて思いました。

ミチ子 もっと褒めてー(笑)。でもメンバーのおかげで借金もなんとか返して、お給料も払えるようになって、成功したとは全然思ってないですけど、やっとここまで来れたなっていう充実感はちょっとだけありますね。

――4年間の活動の中で、特に大変だったのはどんなことですか?

ミチ子 アイドルイベントになかなか出してもらえなかったのは辛かったですね。事務所がないので自分でイベンターさんに営業するんですけど、挨拶しても私たちの体型を見て「ふーん」みたいに雑に断られることも多くて。やっぱり「アイドル」の枠の中に入れてもらえない感じはありました。

えりぴよ そうそう。私たちは「デブでもアイドルになれる」って思って活動を始めたけど、世の中のデブに対する風当たりを思い知らされたよね。でもそれと戦うのが「びっくえんじぇる」かな、とも思いました。

――アイドルイベントなどで、お客さんの反応はどうだったんでしょう?

ミチ子 面白いと思ってくれる人もいるし、細い子の方が好きっていう人ももちろんいます。ただ「デブじゃん」って言われるのは全然いいんですけど、「体型とかどうでもいいから楽しく生きようよ」っていう私たちの考えががうまく伝わらない時は辛かったですね。「痩せたいの? デブ売りなの?」みたいな反応は今もありますし、TIFを目指してた時は「太ってるのが珍しくてTIFに出られるなら、デブがアイドルになれば全員TIFいけるじゃん」と言われることもありました。

――それぐらい「デブ=悪いこと」という価値観が根強いんですね。逆に、ファンや視聴者に言われて嬉しいことはなんでしょうか。

ミチ子 私は大雑把な性格なのでYouTubeにすっぴんで出たり豪快にご飯を食べたりするんですが、そういう時に「ありのままのミチ子が好き」って言ってくれると一番嬉しい(笑)。もちろん本当に直した方がいいことは直していきたいと思ってるんですが、ダメなところも含めて私なので、そこを受け入れてもらえると嬉しい。

えりぴよ 体型で悩んでるファンの子に「悩んでいたことがなくなりました」とか、「元気になりました」って言ってもらえるのも嬉しいよね。

ミチ子 うんうん。この間、ファンの摂食障害の方が手紙をくれて、「2人が何も気にせず楽しそうにご飯を食べている姿を見ていたら、食べることって楽しいことだったんだなって気付けました」って書いてあったんです。私も昔は食事が怖かったから、その気持ちはすごいわかるんですよね。だから、今それに苦しんでいる人がちょっとでもそう思ってくれたらいいよね。

えりぴよ 私たちは好きで食べてるだけだから、ウィンウィンすぎる(笑)。

■ファンは「9割ぐらいは女性」

――「びっくえんじぇる」はファンの方を“ヘルシー”と呼んでいますが、どういう由来なんでしょう?

えりぴよ ファンの方が増えたら歌って踊るライブの回数が増えて、痩せて天界に帰れるので、つまりファンってすごいヘルシーだなと思ったのが由来です。

――どんな方が多いんでしょう。

ミチ子 9割ぐらいは女性で、私たちのYouTubeを見て知ってくださった方が多いです。YouTubeの視聴者も92%ぐらいが女性ですね。男の人に応援してもらうのももちろん嬉しいんですけど、女性が体型に悩む気持ちはとてもよくわかるので、そういう人に好きになってもらうのはやっぱり嬉しいんですよね。

えりぴよ ライブでも8割くらいは女性のイメージだね。

――活動4年でTIFという大きな目標を達成されましたが、今後の目標はありますか?

ミチ子 叶えたい夢や目標は沢山あります! でも、1番大切なのは、ヘルシーと一緒に笑顔で楽しい人生を送ることです。

えりぴよ これからもヘルシーのみんなや「びっくえんじぇる」の事を支えてくださる方々を大切に、私たちらしく全力で突き進んでいきます♪

(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))

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    文春の取り上げ方の貧弱なことったら。 生きる気力なくすどころか、こんな記事垂れ流してとまらない環境に生まれてきた自分がかわいそう

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