「どこに住んでんだよ。教えろよ。パンティー盗みに行きたいからよ」ゴマキ弟・後藤祐樹が刑務所で体験した「最低最悪のイジメ」

「どこに住んでんだよ。教えろよ。パンティー盗みに行きたいからよ」ゴマキ弟・後藤祐樹が刑務所で体験した「最低最悪のイジメ」

後藤祐樹が刑務所で体験した「壮絶なイジメ」とは? ©文藝春秋

毎朝6時40分起床、先輩の言うことは絶対…「懲役囚・後藤祐樹」のあまりに窮屈なプリズンライフ から続く

「姉ちゃん、どこに住んでんだよ。教えろよ。パンティー盗みに行きたいからよ」

 姉・後藤真希のことさえ問答無用でからかいの対象にされるプリズンライフ。5年6ヶ月の刑期で、元EE JUMP・後藤祐樹が体験した「壮絶なイジメ」の実態とは?

 新刊『 アウトローの哲学』 より一部抜粋してお届けする。(全4回の4回目/ #1 、 #2 、 #3 を読む)

◆◆◆

■イジメの実態

「おい、お前。これで歯を磨けよ」

 舎内掃の仕事の一つ、トイレ掃除の最中だった。意地悪な先輩のMが、僕より一つ下のSに言った。

「え、こ、これですか」

「そう。磨けよ」

 Mが指し示したのは便器を磨くタワシだった。あからさまなイジメ以外の何物でもない。

 これが、全員が同じ作業場で仕事をしている製造工場だったら、看守の目が光っている中、なかなかこんなことはできなかったろう。建物の中をあちこち動き回る舎内掃だからこそ、可能なイジメだったと言える。

 見ていた僕も、「先輩、そういうの、あまりよくないですよ」と制止することもできないではない。

 だが当然、「なんだよ、お前。先輩のやることに文句があんの」と今度は攻撃がこっちに向かうだけだ。「これは指導なんだよ。本来ならお前がやるべきことをちゃんとやってないから、俺がやってんじゃないか」

 便所タワシで歯を磨かせてなんの指導かと思うだろうが、ここではこんなバカな理屈も通じてしまう。厳密な序列と、「指導」という名目。イジメの温床を刑務所側がつくっている、と先に言ったのは、こういうことだ。

 刑務所に最初に入った時に「生活のしおり」というものが手渡され、中には「いじめやいやがらせは根絶する」という記述があった。これだけ読めば、イジメなんかやれば刑務所側が厳しく処罰してくれるんだろうなと思ってしまうが、とんでもない。実態は真逆なのだ。

 この後、心あるもっと上の先輩に「Mさんがこんなことをするんです」と訴えることも、これまたできないわけではない。だがまあ十中八九、「ヒドいなとは思うけど、まあ我慢しとけよ」と言われるのがオチだ。

 刑務所で一番大切なのは、なるべく波風を立てずに過ごすこと。巨大な序列の中で、心ある一人が声を上げたところで何も変わりはしない。周りから鬱陶しそうな目を向けられるだけだ。結局、イジメられた者は泣き寝入りするしかない、ということになる。

「おい、後藤。お前、トイレで釣りしてろ」

 僕自身、「部屋長」から言われたことがある。「釣り」というのは少刑内ではやっていたイジメで、つまりは「中でじっとしている」ことだ。この場合、「一晩中トイレに籠ってろ」ということを意味した。

 僕が特に何をしたわけでもない。ただの部屋長の気分だ。もしかしたら何か気に入らないことがあって、それで命じられたのかもしれないが、理由が教えられることはない。

 なんとなく気に食わない奴だな、と思われれば、因縁はなんとでもつけられる。休みの日は室内で新聞も読むことができるが、ページをめくったら「寒いよ、この野郎」なんて言われたりする。

 雑居房は、せいぜい一人分1畳のスペースがあるかないかの狭さに、多い時には10人以上も詰め込まれるので、誰だってストレスが溜まるのだ。イライラの吐け口に、誰かをイジメてやろうということになる。

 雑居房のトイレは、遮蔽扉の上半分は透明で、立っていると外からも見える。刑務官は15分から30分間隔で見回りに来るのだが、廊下からもトイレに立っている者がいるかどうかは見えてしまう。

 さすがに15分も立ちションする奴はいないから、ずっと立っていたら「おい、どうかしたのか」と刑務官も異常に気づくだろう。だが、しゃがんでいたら外からは見えない。そこで、イジメが進行中なんてバレないように、ずっとしゃがんでろというわけだ。

 和式トイレなんて、30分もしゃがんでいるだけで足がシビレて立てなくなるのに、一晩中なのだからこれはたまらない。僕はしゃがんだまま、片脚ずつなんとか交互に伸ばして、朝まで乗り切った。めちゃめちゃキツかった。

■歯を抜くか、親の悪口を書くか

「歯抜き」をやらされた奴もいた。

 ゲームのようなものだが、限りなくイジメに近い。

「お前、これとこれ、どっちがいい」

 選択肢は、歯を抜くか、親の悪口を延々と便箋に書かされるか、というような「地獄の選択」だ。

 刑務所内には一応、医務室のようなところもあって、具合が悪いと診てはもらえるが、むちゃくちゃいい加減だ。「歯が痛い」と言っても、ちゃんとした歯医者さんではないので、ちょっと削って何かかぶせるか、もう抜いてしまうかの両極端。だから「痛い痛い」と言い続けていれば、健康な歯だって抜かれてしまう。その実態を、受刑者ならよく知っている。

 健康な歯を抜かれるくらいなら、まだ親の悪口を書いた方がマシだと感じるかもしれないが、そいつはそれには耐えられないと思ったのだろう。別にそれを手紙として出されるわけではないが、部屋のみんなに読まれてしまう。それよりは歯を抜く方がまだいいと判断したのだろう。

 医務室に申告して、歯を一本抜いてもらった。

 そんなことをしたからといって、部屋長が何か得をするわけでもない。単なる気分。ストレス解消のゲームなのだ。

 受刑者どうしでどうにもならないのなら、もっと上、刑務官に訴えたらどうか、と思う人もいるだろう。確かにそうすれば、舎房内で問題を起こしたということでイジメた側に懲罰が課され、工場を移される可能性はある。

 ただしそうしたら、仲間内で「あいつは先生にチンコロした」という噂がはびこってしまう。言った者の立場は最悪となり、一人だけでなく複数がイジメを仕掛けてくることになるだろう。

 このような構造の中で、イジメがなくなることなどあり得ない。ヘタに良心を発揮することなく、じっとしているのが結局は一番なのだ。

■「トンデモナイもの」を食わされることも…

 舎内掃工場の後、僕は内掃工場に移動になった。前者が建物内だったのに対して、今度は建物の外を掃除する仕事だ。

 実は、ちょっとしたことが問題になっての移動だった。

 同房の友達どうしで本の貸し借りをしていて、彼は移動になったのだが、うっかりして返すのを忘れていたのに後で気がついた。それでとりあえず自分の本棚に並べておいたのだが、「総検」(刑務所内の一斉検査)で見つかってしまったのだ。

 懲罰まで食らうことはなかったが、僕はもともとここの先生に嫌われていたらしく、それで移動になった。「番手」もこれで一からやり直しだ。

 ここにも別な、Mというイヤな奴がいた。

 刑務所の敷地はむちゃくちゃ広く、芝を刈るだけで大仕事になる。木の枝を切ったりという剪定の作業もあった。穴を掘って、除草した草をそこに埋めるのも仕事の一環だった。

「おい、なんでこんなとこに穴掘ってんだよ」

 Mが、僕より一つ下のHにカラみ始めた。Hは性格もよく、僕とは仲よくつき合っていた。

 確かに掘る場所がちょっと違ってはいたが、別に作業に大した支障が出るわけではない。

「おい、後藤。お前ちゃんと指導しなかったのかよ」

 僕は立場的に、Hに指導すべき立場ではあった。だがこのくらい、放っといても構わないだろうと判断したのだ。そこにカラんできたのだった。

「はい。まあ」

「お前、自分の立場がわかってんの。それともこんなのにも気づかなかったの」

 言い返せないことを知ったうえで、ネチネチ責め立ててくる。本当に最低の奴だった。

「おい、これ食えよ」

 Mの手にあったのは、カブトムシの幼虫だった。外の作業で、あちこち掘り返すものだから、いろんなものが出てくるのだ。

 せっかく外を動き回れて、本来は気分のいい仕事内容のはずだったにも関わらず、Mのせいで最悪だった。地面から変なものが出てきませんように、とビクビク祈るような心地だった。

「樹液を舐めろ」と言われたこともあった。

■姉ちゃんの住所教えろよ

 ある日など、昼食中にオ●●ーを始めた。平日は房の外に出て作業だが、土日は一日中部屋から出ることはない。刑務官はさっきも書いたとおり、15分から30分間隔でしか回ってこないので、その間ならなんでもできるのだ。

 飯の上に精液をかけて、「これを食え」とHに迫った。このようにMのイジメには、「あれを食え」「これを舐めろ」が圧倒的に多かった。

 実際的な虐待に加え、こたえるのは言葉の暴力だった。

「なんだよお前、こんなこともできねえのかよ。使えねえ」

 人間、そんなふうに罵倒され続けるとやはり落ち込む。自分はやっぱりダメ人間なのか、と思えて精神的に参る。

 会社でのイジメでもそういう「何々ハラスメント」が問題になっているが、娑婆ではまだ家に帰るという逃げ道がある。ところが刑務所では仕事が終わり、部屋に帰ってもずっとそいつと一緒なのだ。一日24時間、気の休まる暇もない。

 家族のことを言われるのも辛かった。「俺、お前より先に出るからな。奥さんのとこに行って、可愛がっといてやるわ」

 口だけだとわかってはいる。それでもやっぱり、家族のことを言われると精神的にこたえるのだ。

 当然、マキちゃんの存在もからかいの対象になる。

「姉ちゃん、どこに住んでんだよ。教えろよ。パンティー盗みに行きたいからよ」

 元芸能人ということで、カラんでくる奴。ミーハーに近寄って来て、芸能界の話題をあれこれ聞きたがる奴。両極端なのは娑婆の不良と一緒だった。

 こんな環境にいると当然、精神的に病む者も出てくる。

 朝食が終わり、工場に行くために「出房」となって先生が扉を開けるのだが、一人だけ出て来なかったり。前にも言ったとおり、工場に行かないと「就業拒否」となり、戒告の対象となるのだが、本人からすればもうどうなってもいい、という心境に陥るのだろう。とにかくこの場から逃げたい、と自暴自棄になるのだろう。

 悩んでも誰にも相談することができない。

 この人なら、と思っても、実はやっぱり上の人に、「あいつ、あんなこと言ってましたよ」とチンコロされるかもしれないではないか。誰も信用できない。疑心暗鬼。

 精神的におかしくなるような環境が整えられているのだ。刑務所を「矯正施設」といっているが、逆のための施設としか思えない。

(後藤 祐樹)

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    裁判中に自分のう・ん・こを食べて無罪になった猛者もいるよね。後で医療刑務所に送られたよね。

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