木村拓哉(49)が「信長まつり」に登場…24年前に演じた“はじめての織田信長”が意外とハマり役だったわけ

木村拓哉(49)が「信長まつり」に登場…24年前に演じた“はじめての織田信長”が意外とハマり役だったわけ

「ぎふ信長まつり」パンフレット

 きょう11月6日、岐阜市で開催される「岐阜市産業・農業祭~ぎふ信長まつり~」の騎馬武者行列に、木村拓哉が織田信長に扮して参加する。これは、木村が来年1月公開の映画『THE LEGEND & BUTTERFLY』で信長を演じたことをきっかけに実現した。

 木村拓哉が信長に扮するのは今回が初めてではない。2011~15年に放送されたトヨタ自動車の「ReBORN」と題する一連の企業CMは、木村扮する信長が、ビートたけし扮する豊臣秀吉とともに現代の日本に生まれ変わって旅をするという設定だった。さらにさかのぼれば、1998年3月にTBS系で放送されたスペシャルドラマ『織田信長 天下を取ったバカ』で若き日の信長を演じている。ここでは、改めてこのドラマについて振り返ってみたい。

■『織田信長』視聴率は21.8%

 ドラマ『織田信長』出演当時、木村拓哉はSMAPに所属しながら個人でもすでに幅広い活躍を見せ、高い人気を集めていた。ドラマでも、山口智子と共演した『ロングバケーション』(1996年)など主演作があいついでヒットする。『織田信長』も、視聴率こそ21.8%と、当時のほかの主演ドラマとくらべればやや落ちるものの、話題を呼んだ。

『織田信長』の脚本を担当した井上由美子は、前年の1997年放送の『ギフト』で初めて木村の主演作品に携わり、本作のあとにもたびたびタッグを組んでは、『GOOD LUCK!!』(2003年)や『BG~身辺警護人~』(2018年)などの人気ドラマを生んでいる。演出の生田滋朗も、このあと2000年に木村と常盤貴子主演の『ビューティフルライフ』を手がけ、平成のドラマでは2位となる高視聴率を記録した。
 

『織田信長』の原作は、昭和の戦前から戦後にかけて活躍した作家・坂口安吾の作品集『信長/イノチガケ』(講談社文芸文庫)だ。同書には表題に掲げられた長編「信長」をはじめ歴史小説やエッセイが収録されている。“安吾とキムタク”という組み合わせは異色ながら、小説「信長」の信長が結婚したばかりの妻・濃姫に《オレはまだアンタをもらっていないのさ。人はもらったと思ってるけど、オレだけはね。だけど、いまに、もらうつもりだ》などと現代語で語りかけているのを読むと、意外と木村のイメージに合っているような気がしてくる。ちなみにここに引用した信長のセリフは、ドラマのなかでも形を変えて使われている。

 原作本に収録された作品にはほかにも「鉄砲」と題するエッセイがある。これは戦時中に発表されたものだが、作中の《鉄砲の威力的な使用法を理解した最初の人は信長であった》といった一文からもうかがえるように、いまでは広く浸透した近代人的な信長像が提示されていた。こうした信長像は、安吾が誰よりも早く描いて世に知らしめたものだという(半藤一利『安吾さんの太平洋戦争』PHP文庫)。

■木村拓哉が演じる信長の「型破りな態度」とは?

 ドラマにも、このエッセイの内容を反映したと思しき場面が冒頭に出てくる。又三郎(近藤芳正)という商人が尾張の織田家に鉄砲を売り込みに来た折、父・信秀(夏八木勲)が戦では使えないと断ったのを、若き信長は強い関心を示し、自分が買い取ると言い出したのだ。ただ、所望した300丁分の金はなかったので、代わりに又三郎自身を奉行として召し抱えるという型破りな態度に出る。

 本作における信長は、すでにこの時点で、のちの長篠の合戦で実践したと伝えられる、有名な3段撃ちのアイデアを思いついていた。300丁もの鉄砲を入手したのもそのためだ。設定としてはやや先走りすぎのような気もするが、木村演じる信長は終始こんな感じである。

 そもそもこのドラマはフィクションと断っており、史実を改変したところも少なくない。事実関係を忠実に再現するよりも、ストーリーとしての面白さ、わかりやすさを優先したためだろう。登場人物もかなり絞られている。信長を主人公とする多くの作品でおなじみの今川義元や豊臣秀吉、徳川家康もこのドラマには出てこない。

 物語からして、父・信秀の死後、家督を継いだ信長が、その座を奪おうとする弟の信行と争い、敗れた信行を殺害したところで終わってしまう(ちなみに信行の役は、木村とはそれ以前にドラマ『あすなろ白書』で共演した筒井道隆が演じている)。本来なら見せ場となるはずの桶狭間の戦いをはじめ、その後の信長の活躍を一切描かず、青春時代に焦点を絞った企画が成立したのも、主演が木村拓哉だったからこそだろう。

■当時25歳、初めての時代劇だった

 当時25歳の木村にとっては初めての時代劇とあって、脇を固める俳優も豪華だ。特別出演として、前出の信秀役の夏八木勲のほか、信長の母・土田御前役でいしだあゆみ、守役の平手政秀役で小林稔侍、そして美濃の斎藤道三役で西田敏行が登場した。

 西田演じる道三は尾張にいずれ攻め込むつもりでおり、その手始めとして娘の濃姫(中谷美紀)を信長に嫁がせる。その際、道三は、信長が世間で噂されるとおり本当にうつけであれば殺せと言って、短刀を彼女に渡していた。しかし、濃姫は、信長と接するうち、しだいに彼に惹かれていく。

 その後、道三が信長に面会を求めてくると彼女は、父は夫を殺すつもりだと勘づき、信長に例の短刀を渡して見送った。濃姫役の中谷美紀は当時22歳で、若手女優として注目されつつあったころだが、勝ち気な役柄にハマっていた。本作では役そのままで語りも務めている。

■木村が見せた「うつけぶり」

 道三と信長の面会は、道三が事前に娘婿の姿を確認しておこうと、彼の通る道沿いの小屋に隠れ、窓からうかがったというエピソードとともによく知られる。このドラマでも後半、ひとつの見せ場としてこの様子が描かれる。

 このときの信長の隊列は、例の300丁の鉄砲をはじめ多くの武器を持参しており、道三を驚かせるが、当の信長はといえば、いつもの小汚い格好で馬に後ろ向きにまたがり、食べていた干し柿の種を口から飛ばすという“うつけぶり”であった。しかし、面会の場では一転して正装で現れ、道三を再度驚かせる。会っているあいだ2人はほとんど言葉を交わさなかったが、道三は信長をすっかり気に入り、彼が帰ったあとで、家臣の土岐(明智)光秀(渡辺いっけい)や堀田道空(岩崎ひろし)に自分が死んだら信長に仕えるがよいと勧めるほどだった。

 本作では、信長と濃姫・道三の関係とあわせ、弟の信行との関係が大きな軸となって物語が展開される。信長とは対照的に信行は内向的で、兄に羨望を抱いていたが、それはやがて嫉妬となり、さらには憎しみへと変わっていった。母の土田御前や家臣の林通勝(津嘉山正種)も彼の反逆を後押しする。信長が道三と会った直後には、ついに兄弟が互いに兵を率いて争うことになった。

■信長と木村のイメージが一気に重なった場面は…

 この戦いは結局、信行の敗北に終わる。彼は一旦は信長に許されるも、兄弟が二人きりで向き合ったとき、いきなり刀で斬りかかり、信長から逆に討たれてしまう。それでも信長は弟の名誉のため、彼が謀反を詫びて切腹したのだとほかの者たちに説明するのだった。

 劇中では、信長と信行が争ったいわゆる「稲生の合戦」が、道三との会見の直後に起こったかのように描かれていたが、実際にはこの戦いは信長が道三と会ってから3年後の1556年のできごとであり、信行が殺害されたのはさらにその2年後である。しかも信長は信行を直接手にかけたわけではない。このようにかなり史実が改変されているが、それも愛憎入り混じった兄弟の関係を強調するためだったのだろう。

 ライバルであった信行を心ならずも討ち果たしたのを機に、信長は天下を目指すと身内の者たちに宣言する。これをラストとして、ドラマはその後の彼の活躍をほのめかしながら、濃姫の「その孤独な心の奥に、時代を変え、戦のない世界を望む気持ちがあったことは何人の人が知っていたでしょうか」との語りで締めくくられる。弟を殺したことと天下を目指すことがどう結びつくのか、いまひとつわかりにくいが、木村拓哉が演じるとなぜか納得させられてしまうから不思議だ。

 粗削りではあるが、果敢に行動する若き日の信長は、やはりこの時期の木村拓哉に見事にハマっていた。そのことを筆者が一番感じたのは、ドラマの前半、信長が手兵たちに鉄砲の撃ち方を指導するシーンだ。このとき、父・信秀が見に来て、「田舎のガキだと聞いていたが、なかなかいい手兵じゃないか」と褒めたところ、信長が「俺と同じ、自分知らずなだけだ。自分を知っちゃったやつは先に行けないだろう」とぶっきらぼうに言うのを聞いて、信長と木村のイメージが一気に重なり合った。

■木村は今年50歳、信長の享年をすでに超え…

 このドラマが放送されて24年、木村拓哉は今月13日には50歳となる。まもなく公開される『THE LEGEND & BUTTERFLY』では、信長が最期を迎える本能寺の変まで描かれるという。実年齢でいえば、木村は信長の享年(数え年で49)をすでに超え、ここ最近はドラマ『教場』で警察学校の教官を白髪頭で演じるなど、新たなイメージを創出しつつある。そのなかで再度演じる信長が一体どんなものになるのか、公開を楽しみに待ちたい。

(近藤 正高)

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