日韓合同のIZ*ONEの歌詞はやっぱり深読みしたくなるね――近田春夫の考えるヒット

日韓合同のIZ*ONEの歌詞はやっぱり深読みしたくなるね――近田春夫の考えるヒット

絵=安斎肇

『好きと言わせたい』(IZ*ONE)/『微炭酸』(Juice=Juice)

 IZ*ONEの『好きと言わせたい』を聴くべく、映像付きを立ち上げてみたら、歌詞や曲や歌唱のうんぬんより振付(何ともキレのよいフォーメーションワークよ!)のレベルの高さに、ついつい目がいってしまった、持っていかれてしまったのである。

 時に、私のよく利用する地下鉄のドアの上には液晶のモニターが埋め込まれていて、四六時中、お馴染みなCFの類などが流されているのだが、車内がゆえに音声は当然ミュートされたままという。そこで気づいたのは、この消音状態の“電車版”の方が、普段家のTVに映る音付きの画像よりも――俺に限っての傾向なのかも知れないが――何故かコマーシャルの中身に気持ちが集中しやすく、結果、商品に興味を抱いてしまう頻度が高い、ということである。

 これは場合によっては、広告宣伝的な効果の観点から、すでにそのあたりに何らかの活路/勝機を見いだしている大企業もとい大代理店(!)も案外あんじゃね? っつうのが、最近の私の見解なのだが、ひらったく申せば、確信犯的“サイレントCF”の可能性てな話にでもなりましょうかね。あっ! それ、意味としては動く印刷物ってとらえても構わないのかしらん……。

 そういやそろそろ、紙ほどにも薄い液晶が一般化する? のかどうかは俺も門外漢なのでよくわからないですけど、この、IZ*ONEの動画とかが、満員の通勤電車の乗客の頭上で“中吊り広告”と化して一斉に「音も無くヒラヒラしている光景!」など想像するとかなりの“近未来”でせう。しかもそこに、例えばあたかも御託宣を窺わせるような演出で、歌詞がずーっとスーパーインポーズされてたりしててでもごらんなさいましな。ね! そりゃファンの坊やちゃん達ならずとも、もうどんな曲になっているのか知りたくてウズウズ、買って聴いてみたくなっちゃうヨォってぇ人間続出なのが、あーた。“人情”というものなんじゃぁありませんかえ? あ、勿論。当然楽曲オンエア解禁の前にやるのよ。だって“気持たせ”という文脈ならこんな「究極のティーザー」もないじゃないですかァ!(笑) おっと、根拠もない茶々を入れてばっかりで、いっこう本題に入れず申し訳ない。

 タイトルからも斟酌出来る通り、この作品/歌詞は、負け戦さと承知しながらも健気に振舞ってみせているひとの心理がテーマだ。いま、正に微妙な関係にあるふたつの国をまたいでの――如何に芸能といえどもだ――プロジェクトであることを鑑みると、この主人公の設定は、解釈問題として、いくらでもほじくり返せる要素を多分に含んでいるだろう(笑)とかなんとか。そんな訳で、とにかく現在、秋元康より他に、ここまでひとに歌詞を“深読み”させてしまう作詞家はなかなかいないということが、段々と分かってきた私なのであった。

 Juice=Juice。

 そうやって眺めるとこちらの作詞家は違うタイプだね。

(近田 春夫/週刊文春 2019年3月7日号)

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