韓国版PPAP?「サメの赤ちゃん」の歌がYouTube歴代視聴数TOP20に食い込むまで

韓国版PPAP?「サメの赤ちゃん」の歌がYouTube歴代視聴数TOP20に食い込むまで

Pinkfong社のショップで商品を見る親子 ©getty

「『Baby Shark』はいま地球で最も人気のある楽曲だ」-Quartz

「2019年の文化を調査する未来人は『Baby Shark』を避けては通れないだろう」-CNN

「ベイビー・シャーク、ドゥッドゥッドゥッドゥッ……」一度聴いたら頭から離れない幼児向け楽曲『Baby Shark』が、欧米もアジアも制するグローバル・メガヒットだ。


『アナ雪』を超え、歴代YouTube視聴数TOP20入り

 サメの家族が次々と名乗り出ていくこの童謡をリリースしたのは、ディズニーでも任天堂でもない。韓国の教育系企業Pinkfongだ。

 2015年末に公開されるやいなや韓国で大人気となった『Baby Shark』は、YouTubeやTikTokを通してキッズや若者の間に広まっていき、2017年にはインドネシアやフィリピン等アジア圏で #BabySharkChallenge が社会現象化するメガヒットとなった。

 2018年にはアメリカやイギリスでも火がつき『エレンの部屋』や『The X-Factor UK』といった国民的TV番組で特集され、幼児向け楽曲としては異例のチャート入りまで達成している。

 SNSバイラルを通して世界的ヒットとなった『Baby Shark』は、YouTubeの歴史上もっとも視聴された動画TOP20に仲間入りした。これは『アナと雪の女王』の主題歌『Let It Go』やジャスティン・ビーバーの楽曲『Baby』を上回る記録となる。

■作者不明の童謡を「成人でも聴き飽きないリミックス」に

 実は『Baby Shark』はPinkfongのオリジナル楽曲ではない。アメリカやドイツ、フランス等に根づく作者不明の西洋の童謡に同社がリミックスを加えた作品だ。子持ちのクリエイターを多く抱えるPinkfongは、コンテンツを作る際「子どもが楽しめること」のみならず「親が繰り返し聴いても許容できる作品」を志しているそうだ。

 SNS上のバイラルは自然発生だったというが、もともと踊りやすく聴き馴染みのある童謡を「成人でも聴き飽きないリミックス」にしたことが勝機となり、世界各国の子供や若者に受け入れられたと言える。

■児童向けコンテンツがグローバル・ヒットしやすい理由

 正真正銘バイラル・ヒットとなった童謡『Baby Shark』だが、児童向け楽曲はグローバル・ヒットを生みやすいジャンルのようだ。一例には、日本でも定番となっている『ハッピーバースデートゥーユー』がある。アメリカの幼稚園の校長がつくった童謡アレンジに過ぎなかったこの曲は、口コミ、映画、ラジオによって世界中に普及した、今で言うバイラル・ソングだ。

 ペンシルバニア州立大学で現代児童文化史を研究するゲイリー・クロス教授が stuff に語ったところによると、幼い子どもたちは、成人よりも思考が特定文化にとらわれていない。それゆえ『Baby Shark』のような子供が好むシンプルな楽曲は、適切なテクノロジーを介しさえすれば、容易に世界中に広がっていくのだという。2016年のピコ太郎の楽曲「ペンパイナッポーアッポーペン(PPAP)」の流行にも、こうした背景があったのかもしれない。

 今日、多くの幼児たちは、YouTubeやiPadを操作してお気に入りの歌を何度も再生できる。もしかしたら、昔以上に世界的なキッズ向けヒット・ソングが生まれやすい状況かもしれない。

■日米二強状態の児童向けコンテンツ市場に食い込む韓国

 こうした「グローバルな児童向けコンテンツ」市場において巨大な商業的成功を手にしてきた2つの大国が、アメリカと日本だ。1980年代以降、ハローキティや任天堂といったジャパニーズ・コンテンツは世界を魅了しつづけてきた。ハリウッドやディズニーを抱えるアメリカも、コンテンツ大国であることは言うまでもないだろう。

 その任天堂とハリウッドがタッグを組んだ2019年公開映画『名探偵ピカチュウ』は、世界的ヒットが約束されたも同然とばかりに予告編ひとつでSNSの話題を独占してみせた。

 そんな日米が二大巨頭とされてきた児童向けコンテンツ市場において、『Baby Shark』を輩出した韓国の存在感が近年増している。

■アジアの児童向け作品は「教育」よりも「遊び心」を重視する

 その理由の一つに、日韓カルチャーの共通点を挙げる専門家もいる。前出のクロス教授によると、アジアの児童向け作品は「教育」や「伝統」よりも「子供たちにとっての遊び心やファンタジー」を重視する傾向にあるのだという。子供視点と言えるこの姿勢こそ、国際競争における日韓の強みであるようだ。

■ヒットを下支えしたK-POP的要素

 西洋の童謡をベースとするPinkfong版『Baby Shark』だが、その世界的ヒットはK-POPのグローバル・パワーを証明するものでもある。

『Baby Shark』は韓国でヒットした後、インドネシアやフィリピン、シンガポールなどでバイラルしたが、これらの地域では、BLACKPINKやRedVelvetやNCTなど、アジア圏で広い人気を誇るK-POPスターたちが同曲をカバーしていったことがヒットの導火線とされている。この影響を鑑みた経済誌 Forbes ?は「東南アジアでビジネスを始めるのならK-POPスターを採用すべきだ」と提言した。

『Baby Shark』に合わせて踊るK-POPガールズ・グループのメンバーたち


 K-POP要素は『Baby Shark』の音楽面にも潜んでいる。Pinkfong社の親会社SmartStudyのジェイミー・オーは、Pinkfong社が曲作りで意識していることとしてトレンディなビートや陽気なリズム、フックのループ構成を挙げており、Pinkfongの楽曲群を「次世代のためのK-POP」と定義している。実際、アメリカでは、Billboardなどのメディアが『Baby Shark』を「K-POPビートの童謡」だと紹介している。ベースにした曲が西洋製でも、Pinkfong版は韓国テイストだときちんと判断されているのだ。

 こうした受け入れられ方は、K-POPの音楽スタイルがアジア圏のみならずアメリカでも浸透しつつあることの証左ではなかろうか。『Baby Shark』の世界的成功は、コリアン・ポップカルチャーのパワー増大をまさしく象徴している。

(辰巳JUNK)

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