長渕剛の「とんぼ」を歌いきれただけで、なぜこんなにも感動するのか――てれびのスキマ「テレビ健康診断」

長渕剛の「とんぼ」を歌いきれただけで、なぜこんなにも感動するのか――てれびのスキマ「テレビ健康診断」

ダウンタウンの松本人志(左)と浜田雅功(右) ©時事通信社

 ダウンタウン、月亭方正、ココリコのレギュラー陣にゲストを加えた10人が、全身黒の同じ衣装を着てマイクを背に立っている。音楽が鳴り始めるとひとりが振り向き「コツコツとアスファルトに刻む〜」と長渕剛の「とんぼ」(作詞・作曲 長渕剛)を歌い出す。1フレーズが終わると、またひとり振り向き「俺は俺で在り続けたい そう願った」と声を合わせ歌う。1フレーズごとにひとりずつ歌う人が増えていく。誰がどのパートを担当するかは事前に決めず、互いに空気を読み合い自分がここだと思うタイミングで歌い出すのだ。これを10フレーズ、最後まで続け歌い切ることができるかというゲームが『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』で行われた「みんなで長渕剛を歌い切ろう〜!!」だ。ただし、2人以上が同時に歌いだしてしまったら、失敗というルールだ。

 なんともバカバカしいゲーム。それが生まれたきっかけが昨年大晦日の『絶対に笑ってはいけないトレジャーハンター24時!』だという。企画と企画の合間にメンバーが待機し雑談をしている中、遠藤章造が突然「とんぼ」を歌い出した。すると、松本人志が2フレーズ目に声を合わせたのだ。そして他のメンバーも歌い出す。彼らは笑ってはいけない状態なのに思わず吹き出してしまった。その妙な可笑しさをゲームにしたのだ。その成り立ちから、ルールの設定に至るまで徹頭徹尾くだらなくて素敵だ。そんな中に、「過剰に空気を読む」ことに対する風刺がうっすら混じっているから余計に面白い。

 最初に誰が歌い出すかも決めていない状態で始めるから、1フレーズ目から複数が歌い出すことも少なくない。逆に誰も歌い出さないこともある。そんな中、チャンスは意外に早くやってきた。浜田雅功から歌い始めた挑戦で4フレーズ目まで順調に進んだのだ。しかし「死にたいくらいに憧れた 花の都“大東京”」で4人が同時に歌い出してしまう。「ここ絶対歌いたいもん!」と。

 その後も「これは無謀な企画」と冒頭に松本が予測したとおり、失敗を重ねていく。だが、一度立ち位置を変更し、出来上がった空気を一旦壊して挑んだ24回目、7フレーズ目まで進むのだ。あと3人というところで、誰も歌い出さずあえなく惜しい失敗。もうこれがクライマックスだと正直思った。しかし、「ラスト」と宣言して始まった38回目でまさかの成功を収めるのだ。「なんで行けたん?」と当の本人たちも驚く展開。もはや「空気を読む」だとか考えられなくなった果てに起きた“何か”。最後、浜田が振り向き「ああ しあわせのとんぼが ほら〜」と全員で声を合わせた瞬間、なんだかえも言われぬ不思議な感動があった。

INFORMATION

『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』
日本テレビ系 日 23:25〜23:55
http://www.ntv.co.jp/gaki/

(てれびのスキマ/週刊文春 2019年3月14日号)

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