勉強と筋トレに違いはない NHK『筋肉体操』出演・小林航太弁護士インタビュー

勉強と筋トレに違いはない NHK『筋肉体操』出演・小林航太弁護士インタビュー

©鈴木七絵/文藝春秋

 NHKの番組『みんなで筋肉体操』の第1弾と第2弾に出演し、一躍時の人となった弁護士の小林航太さん(31)。東京大学文科一類に進学し、2016年に司法試験に一発合格した小林さんは弁護士としての顔のほかに、コスプレイヤーとしての顔やボディビルダーとしての顔を持つ。小林さんに、勉強や筋トレ、コスプレにかける思いについて聞いた。

■今年は増量期を設けない予定

――『筋肉体操』に大きな反響がありましたが、出演して変化したことはありますか?

小林航太さん(以下、小林) 仕事の幅が広がりましたね。おかげさまでテレビのお仕事もいろいろお声がけいただいていて。

――筋トレには増量期と減量期があると伺ったのですが、いまはどちらなのですか?

小林 今年は増量期を設けずに、できる限り同じ状態を維持するようにしています。 いかんせんメディア関係の露出があるせいで、あまり太れなくて……。

 身体を大きくしたいときはどんどん食べてどんどんトレーニングして、それからコンテストに向けて余計な脂肪を落としていくことが多いんですけど、僕の場合、増量期は顔がパンパンになっちゃうんです。本当は、年末は増量期にしたかったんですが。

■勉強と筋トレは似ている

――『 東大卒筋肉弁護士のもう後がない状況でも確実に結果を出せる超効率勉強法 』を2月に出されましたが、なぜ筋トレではなく、勉強法の本を?

小林 もともと、筋トレと勉強は似ているなと思っていたんですよ。なので、勉強法について話す機会があればな、というときにちょうどこういう本を作りませんかと声がかかりました。

――どのようなところが似ているのでしょう。

小林 まず、やれば結果が確実に出るというところ。勉強も筋トレも、飛び道具的なことはいらなくて、きっちりと基本に忠実なことをやりさえすれば、確実に結果が付いてきます。

 ただ、努力の仕方は気をつけなければいけなくて、やったつもりになるだけの努力をしても意味はないんですよね。結果というより、努力の過程を重視するという日本的な考え方があると思うんですが、結果につながらない、無駄な努力は避けたほうがいい。必要なことを必要なだけやる努力を続ければ、結果はついてくる、というのが僕の中で思いとしてあります。

――必要なことを必要なだけやる……これは、勉強で言うとどのようなことですか。

小林 基本的には、ゴールを設定して、それに向けて効率よくがんばるということですね。

 たとえば、司法試験の際はどの順位で合格するかをゴール設定していました。司法試験の場合、合格順位がその後の就職活動にもかかわってくるので、良いに越したことはないのですが、僕自身、就職先にはそこまでこだわっていなかったことと、好きな筋トレやコスプレに時間を割きたかった。 そういったことを考えて、どのくらいで合格するのがベストかな、ということを考えていました。

 ちょうど法科大学院に入学する前に筋トレを始めていて、結局、在学中も週2、3回、1時間から1時間半ぐらいトレーニングしていました。

■苦手な教科こそ、予備校に通わない

――東大入試の勉強でも、同じことを意識していたのでしょうか。

小林 東大入試では、科目ごとに自分の得意・不得意から、点数の配分の目標を決めて、そこから逆算して勉強していました。勉強の仕方も、伸ばせる科目は予備校に通って、確実に伸ばす。苦手な科目は傷を最小限にすることを目標に自分で対策する、とスタンスを変えていましたね。

――苦手な科目は、予備校に通わない。世間的には、反対の発想の人のほうが多いように思います。

小林 嫌いな科目にわざわざお金をかけて通ったところで、どれくらい伸びるかな、という疑問が当時からあって。得意な科目だと、塾の講師の指導もハードなんですけど、ちゃんと吸収して伸ばせる。費用対効果を考えると、苦手な教科を教わるよりは、得意な教科を教わるほうがいいんだと思います。

■勉強の効率を上げるノート術

――ここでも効率を意識していたのですね。他にも、勉強の効率をあげるためにやっていたことはありますか?

小林 たとえば、教科書をノートにしちゃうこと、でしょうか。暗記用のノートは作らずに、教科書に直接書き込んで、それを使って暗記したりもしていました。記憶を定着させるためにはインプットとアウトプットを繰り返すことが大事なんですが、そのたびにわざわざ手を動かしていると時間がかかってしまうので。

――ノートといえば、独自のノート術をお持ちだと伺いました。

小林 ノートを作るときは、ある事象の中のキーワードから、次のキーワードを枝葉を伸ばすように書き込んでいました。歴史上の出来事なら、人名やその出来事の名前、関連するキーワードをざっと書き出して線で結ぶだけです。

――なぜそのようなノートを?

小林 キーワード同士のつながりを意識しながら覚えると、その出来事の全体像がよりはっきりつかめるんです。それに、キーワード同士を関連付けて記憶すると、試験の際に覚えたことを引き出しやすくなる、という利点もあります。

 こういうふうに関連付けて覚えることで、最終的には「参考書や教科書の目次の見出しを自分で作れる」ことを目指していました。「目次の見出しが作れる」ってことは、各項目のつながりや流れが頭の中できちんと整理されていて、かつその情報を自由に引き出して説明できる、ということなんですよね。

 特に、東大の世界史試験の論述問題では、与えられた単語で特定の年代に十数行かけて説明するような問題が出るので、こうしたことを重視しました。

■試験当日に何を食べるかまでシミュレーション

――他にも、試験のためにやっていたことを教えてください。

小林 筆記用具は何を使うか、当日何を食べるかなどを、事前に予行練習しておくことでしょうか。

――そんなことまで!

小林 司法試験受験者の間では、珍しいことではないんですよ。試験が4日間も続くので、眠気に襲われたり、集中力が切れたりすると大問題です。僕は模試のたびに「エネルギー補給できるけど、眠くならない食事」を試していました。できる限り本番に近い状況を事前に試しておくと、緊張感はだいぶ減らせますね。

――ちなみに、弁護士としてお仕事していて、法廷で緊張することはあるんですか?

小林 そもそも民事の尋問って聞きに来る人があまりいないので、全然です(笑)。でも、今でも本番前には頭の中でこういった質問をして、その答えに対して……と念入りにイメージしてから臨みますよ。

■勉強と筋トレの違うところ

――先ほど、勉強と筋トレは似ていると言っていましたが、違うところはなんですか?

小林 違うところか、なんだろう……考えたことなかったな、違うところ。

――試験は一発勝負なので、その日の調子で結果が大きく変わる部分があると思うのですが、その点、筋肉は裏切らないのでは?

小林 いや、でも、筋肉も日によってコンディションが違ったりするし、調子のいい・悪いの波がコンテストのタイミングと噛み合わないときもあるんですよ。2回目に筋肉体操に出演したとき、「1回目より大きくなった」という声もいただいたんですけど、実は1回目のときはちょっとコンディションがズレてたんですよね。

――では、勉強は試験で一区切りする側面がありますが、筋トレは?

小林 いや、勉強も続けないとまずいですよね。やめようと思えばいつでもやめられますが、一生続けようと思えば一生続けられる。簡単にいえば、マッチョになりたいという気持ちがあればずっと筋トレは続けられますし、勉強も、仕事に生かしたいという気持ちとか、知識欲があればずっと続けられる。

(一同考え込む)

――勉強と筋トレに、違うところはないのでしょうか。

小林 思いつきませんね。

■筋トレのきっかけはコスプレから

――筋トレは、趣味のコスプレのために始めたと伺いました。

小林 マッチョなキャラを、ちゃんと自分の筋肉でやりたいなという思いから始めたのがきっかけです。だから、筋肉はコスプレの衣装の一部、というつもりで始めたんですよね。

――そもそも、コスプレはなぜ始めたのですか。

小林 衣装作りがおもしろそうだったんです。最初にチャレンジしたキャラは全身鎧を着込むようなキャラで、その作品のことを知っている人がすごく喜んで写真を撮ってくれたりしたのが嬉しくて。その作品やキャラを好きな人たちに喜んでもらいたいというのが、今でも大きなモチベーションとしてあります。

 だからこそ、やっぱり再現度にはこだわりたくて。自分の好きなキャラはこんな貧弱じゃないでしょ、という気持ちがあるので筋トレをしています。

■筋トレもコスプレも、自己満足の世界

――筋トレと、コスプレで似ている点はありますか?

小林 自分が納得できるかどうか、自己満足の世界という点では似ているかもしれませんね。結局、ゴールがないと言えばない。衣装もどこまで細かくこだわるかって、完全にその人の趣味なので。

コスプレも筋トレも、他人にケチつける人が多いんですよ。

――そうなんですか。

小林「ここが違う」とか、ああだこうだ言う人って結構いるんです。

 たとえば、ダウンタウンの松本人志さんが大胸筋を鍛えているのに対して「胸しかやってないじゃん」って揶揄する人もいるんですけど、別に本人が好きでやってるんだからいいじゃないかって思うんですよね。別に胸が好きなら胸鍛えたっていいし、脚鍛えたくなかったら鍛えなくていいんだし。

 自分の好きなものを突き詰めるという意味では、筋トレもコスプレもオタク的な趣味ですよ。

■これまで印象に残ったコスプレ

――これまでで一番満足できているコスプレはなんですか。

小林 一番満足できたコスプレか、何かなあ。どれも満足できてるといえばできてるし、できてないといえばできてない。どこかしらちょっと足りないな、と思いつつやっているところがあります。

『ストリートファイター』のプロレスラーのキャラクター「エル・フォルテ」のコスプレは結構気に入ってますね。それはね、身長が一緒なんですよ(笑)。僕も168センチで、いつも「身長が足りないな」と思いつつ、いろいろなキャラのコスプレやっているところがあるので。体重も増やして、筋肉の上に脂肪が載っているような、プロレスラーっぽい体を作ったんですよね。

――筋トレをはじめたきっかけになったコスプレもあるのでしょうか。

小林 きっかけになったのは2013年の冬にやった『ジョジョの奇妙な冒険』のカーズのコスプレです。ちょうど法科大学院に入る直前だったんですけど、「お前こんなガリガリの身体でコスプレをしたのか」と、当時の写真をいまも今も戒めとして見返したりします。

――それから筋トレも始め、法科大学院に入り……リベンジはできたのですか。

小林 しました、しました。司法試験に合格した後の、2016年の夏コミで。もう別人みたいな身体になっていました。本当に勉強したのかって感じ(笑)。

――いま筋トレブームが過熱していますが、なぜここまで流行っているのでしょう?

小林 なんでだろう……取材を受けていても、筋トレはメンタルにいい作用があるのか、仕事に効果があるのかとか聞かれるんですけど、正直、僕自身はそこまで考えたことないんです。憂鬱なときは、筋トレもあまりはかどらないですしね。

 単純に、かっこいい身体が欲しいからやっているので、今ブームの筋トレ観と、僕らの筋トレ観はちょっとずれているような……。でも、どちらにしろ筋トレが広まるのであれば、それはそれでいいことだと思ってます。これで、もうちょっとマッチョに優しい世界になるのかなっていう。

■マッチョは生きづらい

――いまはマッチョに優しい世界ではないのでしょうか。

小林「マッチョ好き」を自称する方でも、いわゆるジャニーズ系の細マッチョを指して言ってたりするんですよ。

――えーっ! では、モテの方面では、筋トレの効果は出ていない?

小林 全然出てないですよ! それなのに、入るスーツはなくなるし。生きづらいですよ。

 あとは、筋トレしていると、人付き合いが悪くなりますね。

――どうしてですか。

小林 筋肉のために飲み会に行かない、みたいなことをやっていくと、どんどん友人が減っていくわけです(笑)。 合コンでそのカネ払うんだったら、その時間で筋トレしてステーキ食べたほうがいいな、みたいな。 飲み会にも、合コンにも呼ばれなくなる。

――むしろモテから遠ざかっているような……。

小林 でも、筋トレをしていたおかげで、つらい司法試験も乗り越え、ちょっとずつ理想の体に近づき、人よりちょっと筋肉があるってだけでいろいろ取り上げてもらってますから、基本的にはいいことずくめです(笑)。 死ぬまで勉強と筋トレは続けたいと思ってます。

 今後も、もっと身体は大きくしていきたいですね。まだまだ大きくなれると思うので。次は『グラップラー刃牙』のコスプレに挑戦したいです。

写真=鈴木七絵/文藝春秋

(「文春オンライン」編集部)

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