ひとり飲み中の楽天・高梨雄平に遭遇 ポーカーフェイスの奥にたぎる熱い思い

ひとり飲み中の楽天・高梨雄平に遭遇 ポーカーフェイスの奥にたぎる熱い思い

背番号21、釜田佳直がいるというだけで切なくて胸が締めつけられた ©文藝春秋

 球団創設から通算900勝という節目のめでたい勝利を掴んだ次の日、楽天イーグルスファンにとってはある意味節目の勝利以上に尊いものを目にする事となった。釜田佳直投手の655日ぶりの勝利だ。

 怪我に苦しみ、度重なる手術にも想像を絶するリハビリにも耐えてきたのだろう。5回1/3を投げ3失点、本人にとってはまだまだ満足のいく結果ではなかったかもしれないが、マウンドを降りるその背中にはイーグルスファンからの大きな拍手と大歓声が贈られた。

 釜田投手には大変失礼な表現になってしまうのかもしれないが、もしかすると大半のファンは “釜田が投げる。ただそれだけでいい”そんな気持ちだったのではないだろうか? 勝ち負けの向こう側、マウンド上に背番号21がいるというその事実だけで切なくて胸が締めつけられたのは僕だけではないと思う。そんな中、勝ち星までプレゼントしてくれたのだ。この勝利がチームに及ぼすプラスの波を考えるとただの1勝ではない事は明白である。

 さて、4月22日現在12勝6敗1分でパ・リーグ単独首位の我がチームが首位たる理由は何処にあるのか? 打線の調子は勿論なのだが、中継ぎ陣の奮闘ぶりには頭が下がる思いだ。岸孝之、則本昂大の終盤までしっかり投げてくれるダブルエース不在の中、先発投手がしっかり試合を作った後の仕事が今シーズンは非常にレベルが高い。特に森原康平投手はストレートにさらに磨きがかかり、今シーズン大ブレイクすると考えている。

 そんな中、3年目にしてもうベテランの風格、高梨雄平投手の活躍はめちゃくちゃ大きいように思う。21日のオリックス戦でも前の回に得点され、一番から始まる嫌な流れを三振、内野ゴロ、絶好調の吉田正尚選手も空振り三振としっかり3人で終わらせ流れを引き戻した。勿論中継ぎ陣全員が凄いわけだが、個人的に彼には特別な思いがある。あの日の言葉を聞いてしまったから。

■偶然出会った仙台のバーで

 昨年の11月だった。翌日の楽天生命パークでの仕事が早朝だった事もあり、前日の最終新幹線で仙台駅に到着した。そのままホテルへチェックインしてもよかったのだが、知り合いと軽く飲もうという事になり、ホテル近くのバーで待ち合わせた。どうやら先に到着した僕は生ビールを注文し、カウンター席についた。コの字型のカウンター席、店員さんをはさんで向こう側にお客さんの顔が見える。

 カップルがいる。

 そして隣にはまたカップル。

 スーツ姿のおじ様がいて1席空いて、

 高梨雄平投手そっくりのお兄さん。

 えっ? むちゃくちゃ似てるぞ。

 似すぎてる……いや、高梨雄平だ!!

 そこに居たのはまぎれもなく高梨雄平投手本人であった。

 程なく届いたジョッキを片手に気づけばご挨拶に。

かみじょう「こんばんは! 何でいるんですか?(笑)」

高梨「飲んでますっ」

かみ「お一人で?」

高梨「はい」

 どうやらテレビの収録の後、ふらっと立ち寄ったらしい。僕が知り合いと待ち合わせてると伝えると、来られるまでよかったらと気を使って頂き少しお話することができた。結構一人で飲みに行って、知らない場所でも楽しめる話や、料理に凝っていて最近ローストビーフを作った事、松井裕樹投手が最近構ってくれない話(笑)など意外な高梨投手を知ることができた。楽しい時間はあっと言う間に過ぎ、知り合いから間もなく到着との連絡、察してか高梨投手も帰り支度を始めた。

 ただ僕には一つだけどうしても高梨投手に聞いてみたい事があった。ルーキーイヤーから一軍の中継ぎとしてバリバリ働き、2018年シーズンはチーム最多記録となる70試合登板。秋の日米野球サムライジャパンにも選出されていた。チームの最下位が決定的となった9月後半から10月にかけてもガンガン登板する姿に、投げすぎでは……ド素人ながら心配でならなかったのだ。

■どうしても高梨投手に聞きたかったこと

かみ「正直、シーズン終盤、高梨投手が投げなくてもいいのかなぁなんて思う試合もありました。ご自身で行くとおっしゃられたのですか?」

高梨「はい。実は防御率で狙ってたんですが、結構点取られる試合があって一気にハネ上がっちゃったんで……登板数なら狙えるなって思って」

 正直、僕が思う高梨雄平はクレバーで、別段熱くなる事もなく、登板数の新記録? 今シーズンはこれで大丈夫です。来シーズンまたコンスタントにしっかりやります的ないついかなる時も平熱を保つイメージだった。

高梨「何年できるかわからないけど、7、8年普通の成績残して終わりなんて嫌なんです。せっかくプロ野球選手になったんだから何か証を残したいじゃないですか! それでもし2、3年で短く終わっても納得します」

かみ「2、3年は困ります!」

高梨「あと、僕みたいなピッチャーを獲ってくれた球団には感謝しかないんですよねぇ。そのチームの為に投げてくれって言われたらいつでも行きますよっ。まぁガンガン投げられるタイプなんで大丈夫です!」

 はっ? 常に平熱? 何もわかってなかった。あのポーカーフェイスの奥底にたぎる熱い魂を、そしてどんなに偉くなろうとプロ野球選手にしていただいた事への感謝の気持ちと謙虚な心をしっかり胸に刻んでいる事を。実はお話を聞きながらちょっと泣きそうになってました。

高梨「ほなそろそろ失礼しますね」

 程なくして現れた知り合いに高梨投手の素晴らしさを嫌というほどぶつけた事は言うまでもない。

「あの日は酔ってたんで!」

 今度会ったら言われるかもしれない。でももう遅いです。あの日の言葉を聞いてしまったのだから。

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(かみじょう たけし)

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