差別や偏見があるからこその面白さ 水道橋博士×カンパニー松尾×しみけんによる業界ウラ話(2)

差別や偏見があるからこその面白さ 水道橋博士×カンパニー松尾×しみけんによる業界ウラ話(2)

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★(1)よりつづく

 AV業界を熟知する水道橋博士としみけん、カンパニー松尾監督が見てきた女優たちとは? 「かつてはAV女優として頑張りますって言葉はなかったけど、今は頑張りますの人たちばかり」。大人知的トークで人気のテレビ番組「水道橋博士のムラっとびんびんテレビ」単行本化記念、特別座談会のその2です。

◆◆◆

■博士を刺激したバクシーシ山下の世界観

博士 俺なんかは、芸人の世界で、テレビ対応していない漫才をやろうとしていたわけ。AVで社会派と言われるバクシーシ山下監督なんかがやっていることは、要は、世界にはないことにされている現実を、実はあるんだよ! と拡張して作品にしているわけだよ。事実はこういうもんだぜ、人間はこういうもんだぜ! という世界観をAVでやるから、俺はすげえ刺激されるわけ。俺はアンダーグラウンドで、テレビ以外のところで漫才をやっているから強度の強いものが作れるのに、こうやって映像作品で俺よりもすごいものをやる人がいるんだということで興味を持ったのよ。

*バクシーシ山下 1967年生まれ。岡山県出身。大学在学中にAV業界へ。90年に「女犯」で監督デビュー。社会派AV監督として名高い。

しみけん なるほど。そういう興味を持つ人って今の時代にいらっしゃいます?

博士 しみけんなんか、地下クイズ王だから、もともと興味を持つ人だろうけど、一般にはどうだろうね。俺はパンクで芸人をやっているからね。当時ロック雑誌だった「宝島」に載っていたパンクロッカーの人たちに負けたくなくて、彼らが「出産以外は全部やった」って言うからさ、ダッチワイフ、電動こけし、流血、出産、脱糞とか悪趣味を詰め込んだコントを昔はやってたのよ。それをライブハウスで見て女子高生とかゲロゲロ吐いてさ。これは浅草キッドの伝説のコントと言われるけど、そういうのをパンクだと思ってやってた。気持ちとしては、芸人がパンクロッカーになんか負けるわけないじゃん! ってね、本気で思っていた。だからこういうAV自体も、バクシーシは特に気が狂ったのばっかりやってたから。

松尾 たしかにそうですね。90 年代は面白いことをする合戦みたいな風潮が、V&Rにもあって。それがどんな風に人を楽しませるかとは考えていなかったけど、たまたま社長の安達かおるが率先してうんこを撮ったりしている人だったので、部下の俺たちもあの人があんだけやってて成り立っているんだから、なんでもいいじゃねえか、と調子にのって各自撮ってましたね。

しみけん なんかおふたりの話を聞いていて、俺、悔しいなあと思って。今の時代でもできることがあるんじゃないかって、模索しながら聞いてて。

松尾 ありますよ。気持ちの問題ですから。

■AV差別はなくなるべき?あってしかるべき?

博士 俺たちはなんかさ、例えば、昔だったら学生運動とかをやっているタイプだと思うの。流れで俺は芸人になっているけど、松尾さんは流れでAV監督になっているからさ、昔のAV女優が理由があって仕方なくたどり着いた場所だったように、流されて流されてなっているから。それが今は志願して職業としてAV女優になる子が出てきて、地頭がもともと良い、しみけんとか、筑駒(つくこま。筑波大学附属駒場中学校・高等学校。東大への進学率がトップを誇る名門校)出身の森林原人(もりばやし げんじん)とかクレバーな人が普通に「欲望を職業として見せて何が悪いの?」という風になってきた。AV業界が蔑まれるものではなくて、今は一般との世界の線引きがなくなっているんだよ。俺なんかのころは芸能界はほんとに別世界で、芸人は、被差別者であって、家を勘当されて、家を断ち切ってやっているようなつもりがあったんだけれど、今はもうそういう感覚がなくて、普通に大卒で、京大出ても、よしもとに入ったりするんだよね。

しみけん ぼくたちは、気持ちとしては境界線を持たない方がいいんですかね、それとも持ってるべきなんですかね? たまに悩むときがあるんですよ。こうやってメディアに出させてもらうときがあって、AV男優であるぼくに差別がなくなるべきなのか、あってしかるべきなのかって。

松尾 「あってしかるべき」ではないんだけど、差別というか偏見というのがあるからこその仕事だと俺は思うけどね。世間に対してどれだけふざけていられるかというのが持ち味だから。

博士 差別や偏見があるからそこに挑戦していく。俺がこの「ムラっとびんびんテレビ」をやりたい理由ってそれだもん。はっきり言って、真面目に生きている人に白い目で見られたいんです。

松尾 うんうん。

博士 白い目で見られて、永遠に偏見にさらされて、この人は頭がおかしいんだなって思われたいのよ、俺は。決して立派になって政治家になって欲しいなんて言われないように、だから、事務所にも、この仕事を入れてくれ入れてくれと言ってやるわけよ。誤解というか偏見の目で見られたい!

しみけん ぼくも今の地位に甘んじず、カンフル剤としてうんこは食い続けます!

松尾 それは君の自由だから(笑)。だけど、かぶるかかぶらないか、食うか食わないかだったら、かぶるほうがいいじゃないっていうポジションは、精神性だけでも持つのは大事。いざとなったら脱ぎますという心意気はね、大事。場にもよるから、ここでは俺も脱がないけど。

★(3)へつづく

水道橋博士(すいどうばしはかせ)
1962年岡山県生まれ。ビートたけしに憧れ上京するも、進学した明治大学を4日で中退。弟子入り後、浅草フランス座での地獄の住み込み生活を経て、87年に玉袋筋太郎と漫才コンビ・浅草キッドを結成。90年のテレビ朝日「ザ・テレビ演芸」で10週連続勝ち抜き、92年テレビ東京「浅草橋ヤング洋品店」で人気を博す。幅広い見識と行動力は芸能界にとどまらず、守備範囲はスポーツ界・政界・財界にまで及ぶ。著書に『はかせのはなし』『藝人春秋』他多数。

カンパニー松尾(かんぱにーまつお)
1965年愛知県生まれ。87年にAVメーカーのV&Rに童貞のまま入社。翌88年、監督としてデビュー。2003年に自ら「HMJM(ハマジム)」を立ち上げ、社員監督として活躍している。代表作はハメ撮りを駆使した『私を女優にして下さい』シリーズ。『劇場版テレクラキャノンボール』『劇場版BiSキャノンボール』が社会現象といえるほどの一大ブームになった。

しみけん
1979年千葉県生まれ。男優歴19年、経験人数9000人、年間500本の作品に出演する、日本のAV業界におけるトップ男優。ゲイ雑誌「Badi」でグラビアデビュー後、「ザ・ナンパミラクル」シリーズで一躍有名になる。地下クイズ王としても名を馳せる。著書に『SHIMIKEN's BEST SEX 最高のセックス集中講義』『AV男優しみけん 光り輝くクズでありたい』がある。

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