福原愛さんの「魔球」が冴え渡るツイッター戦術

福原愛さんの「魔球」が冴え渡るツイッター戦術

©getty

 卓球台からようやく顔が出るか出ないかの少女が、悔し涙を流しながら卓球をする姿がテレビで話題となったのは今から20年以上前のこと。それ以降「卓球の愛ちゃん」として、本人が望むと望まざるとにかかわらず勝手に成長を驚かれたり、喜ばれたり、時に苦言を呈されたりしてきました。そう、福原愛選手のことです。ある年代以上の人間全員がここまで“疑似親気分”に浸るって、えなりかずきか愛ちゃんくらいなもんです。

 そんな福原選手がこのたびツイッターを開始。29日現在で軽く12万フォロワーを超えて卓球の愛ちゃん人気の盤石っぷりを見せつけております。しかしなぜ今ツイッター? 多くの芸能人が乗りこなそうと挑んでは振り落とされて捨て台詞とともに去っていく、この暴れ馬ツイッターに……。そんな気持ちで福原選手のアカウントを見ると、その巧妙かつ熟練した戦い方に私、震えました。というわけで、今回はある意味オリンピックより世界卓球よりもすごい、福原愛のツイッターシングル戦を考察してみたいと思います。

■愛ちゃんの「サー!」が聞こえる初ツイート

 ファーストツイートは「皆さんこんにちは! 福原愛です(^.^)」「色々な方のつぶやきが見たかったので、Twitterを始めてみました!」「初ツイートは大好きな仙台のお菓子、喜久水庵といっしょに(`・ω・´)」。今ではおじさんすら使わないであろう微妙な顔文字の絶妙な野暮ったさ、「色々な方のつぶやきが見たいから」という言い訳になっていない言い訳、さらに地元仙台への愛を忘れないしたたかさ。はい、ポイント福原。「わし何回テレビの前で泣いてきたと思っとんじゃ……」という凄みさえ感じさせる、完璧な「有名人アカウントの初つぶやき」ですよ。

 現在は夫・江宏傑とドイツで暮らしている福原選手。「日本は夜中だからみんな寝てるのかな??」というツイートでその辺りのさりげないアピールも抜かりなし。スポーツ選手SNS界のゴット姉ちゃんこと吉田沙保里パイセンへの挨拶も早々に済ませ、着々とポイントを重ねていく福原選手。しかし、それより何より、「私、ツイッターよくわからなくて……」サーブがマジ、魔球すぎます。何ていうか、いま時分誰もやらないからこそ、すごい。

「見れてるのかな? それとも私だけ見れてるのかな? 聞く人がいない…(変な顔文字)」

「リツイートってなんだ…沙保里さん、上手に返信できてなかったらごめんなさい(変な顔文字)」

「皆さんに質問ですっ フォローしないでこっそり他の方のTwitterを覗き見したら、足あとみたいなのは残りますか?(変な顔文字)」

 もうこんなことされたら有名人にリプ大好きおじさんたちは一斉にうれションリプライまき散らしちゃいますよね。知ってるだろうに、調べりゃ秒でわかるだろうに、あえて聞いてくる。こういうところ、長く不特定多数からの寵愛と庇護を受けて育ってきた自信と、常に何かを提供せずにはいられない悲しきサービス精神が見え隠れして、グッとくるんですよ。

■ずっとかわいい愛ちゃんを期待する世間

 福原選手が「いつまでも泣き虫でかわいい国民の子ども」というレッテルを、ものすごいスピンかけて打ち返した「錦織圭との路上チューデート」から、始まっていたと思うんです、福原愛と疑似親気分の世間とのシングルマッチは。ふつう子どもから親への反抗といったら、くるくるパーマに長めのスカート引きずって「顔はやめなよボディボディ」と相場は決まっておりますが、福原選手の場合はそういう前段全部すっ飛ばしていきなり「女」を見せつけてきたわけです。ずっとかわいい子どもだと思ってきたあの子がいきなり路上チュー。これはもう日本人が長く患う「かわいいフリしてあの子割とやるもんだねっと〜」ショックですわ。それからというもの、小姑化した世間様が試合中のネイルやアクセサリーに苦言を呈しては、それに対しリベラル小姑が激しく反発、そんな勝手な場外乱闘が起こっている間に、福原選手は同じ卓球選手である台湾の江宏傑氏と結婚。噂では何千万クラスと言われる結婚指輪をきらめかせ、堂々と疑似親たちからの卒業宣言を果たしたのでした。

 そんな福原選手がまたツイッターという戦場で堂々と「右も左もわからないみなさんの子ども」的立ち居振る舞いをしていることに、人間の深い業を感じざるを得ません。聞けば中国版のツイッターのほうでは割とブイブイ系の自撮りやセレブアピールを爆発させていたというのだから、その戦術の巧みさにも頭が下がりますよ。その場その場の戦い方を分かりすぎてて怖い。願わくば、福原愛選手のツイッター初心者的つぶやきを「俺たちにもこういう時代があったよな〜」と目を細めて引用リツイートするおじさんたちを一気に奈落の底に突き落とすような、「江くんからの誕生日プレゼント(※バーキンどーん)」みたいな、キツめの一発をお願いしたいところです。

(西澤 千央)

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