仲良しの母のためにも……ホークス育成3年目・清水陸哉、試行錯誤の先にあるもの

仲良しの母のためにも……ホークス育成3年目・清水陸哉、試行錯誤の先にあるもの

育成3年目の大型外野手・清水陸哉 ©上杉あずさ

 ケガ人が多い中でも首位をキープ。両リーグ最速の20勝も達成したホークスは「やっぱり層が厚い」なんて言われますが、本当にギリギリの中での全員野球で戦っています。

 5月4日、筑後へリハビリ組の様子を見に行きましたが、改めて愕然としました。

 野手でいうと、柳田選手、西田選手、長谷川勇選手、福田選手、堀内捕手、江川選手、水谷選手。投手は岩嵜投手、田中正義投手、石川投手、バンデンハーク投手、サファテ投手、奥村投手、(和田投手もリハビリ管轄)……改めて、主力選手の多さに「まじか」と心の中で呟いちゃいました。

(悲しいことに、その後、杉山投手や上林選手など更にリハビリメンバーが増えてしまいました……涙)

 当然ですが、連勝中で盛り上がっていた1軍の雰囲気とは別世界。リハビリを行っていた選手たちの表情を見ると寂しい気持ちになりました。斉藤学リハビリ担当コーチも「なかなか復帰のめどが立っている選手が少ないんよね」と肩を落としました。

 多くの主力選手や期待のルーキーがいるリハビリ組ですが、その中に唯一、背番号3桁の選手がいました。背番号141番、育成3年目の清水陸哉選手です。飛距離が持ち味で身長185cm、体重76kgの大型外野手。スカウトから「三拍子で大化けする可能性を秘めている」と期待されて入団してきました。

■復帰の見通しが立たないもどかしさ

「僕も“ミギータ”になりたい。ミギータを奪いたいです(笑)」

“右の柳田”と言われる真砂勇介選手の愛称ミギータを奪Sh!(ダッシュ)したいのだとニッコリ。高校時代からずっと憧れてきた柳田選手のように走攻守で暴れまわるのを夢見て頑張る日々なのです。

 しかし、清水選手は今年1月に右足関節鏡視下骨棘切除術、直視下骨接合術を受けました。3か月で復帰の見込みだと言われていましたが、5月に入った今でも、復帰の見通しが立っていません。

 心配です。一体なぜなのでしょう……。斉藤コーチによると「治りにくい箇所」なのだそうです。足なので、動くと体重が掛かり、悪化してしまいます。ただ、清水選手はまじめで一生懸命な性格なので、早く治そうと頑張ってしまい、再び痛みが出てしまうようなのです。頑張り屋さんには本当に辛いケガです。

 清水選手は今年が育成ドラフトで入団して3年目。一つの節目だと言われるシーズンを迎えており、焦りがないはずはありません。

「人生は長いけど、ここ(プロ野球界)にいられる時間は長くはないから」

 20歳にして自分の置かれた立場とやらなければならないことを充分理解しているからこそ、今の自分の不甲斐なさ、何もできない悔しさを感じています。

■辛いリハビリ生活の先に「奇跡が起こることもある」

 側で支える斉藤コーチにも苦悩があります。

「3軍選手が1軍、2軍を目指す中で、いつか勝負をかける時が来ると思う。その時期を見誤らないで欲しいし、(来年も契約するかどうかの)天秤にかけられるときにケガをしていて欲しくない。もちろん、ケガというのは治さないといけないんだけど、後がなくなってきた選手には、最後に“行け”とどこかでケツを叩かないといけない時が来るんですよ」

 これまでたくさん道半ばでユニフォームを脱ぐ選手達を見てきたからこそ、胸を痛めながら頭を悩ませる斉藤コーチですが、前を向いてこうも話してくれました。

「球団が見切りを付けるのは成長が止まった時なんですよ。でも、陸(清水選手)はまだまだ伸びしろがありますから。足が治ってプレーできるようになったら“すごい伸びてるじゃん”って言ってもらえると思うんです。だから、まだ諦めることは1つもない」

 もちろん、大好きな野球ができず、アピールできないこの時期は辛いけど、乗り越えた先にはきっと……。そう信じたくなる例が、今のホークスにはあります。

 長い長いリハビリ期間や育成時代を乗り越えて、プロ10年目の今、ようやく1軍で頑張る場所を掴み取った川原弘之投手は辛かった日々をこう振り返りました。

「何度も野球人生が終わると思った。今、投げられていること自体、あり得ない。奇跡が起こることもあるんだなあ」

 人生何があるかわからない。大好きな野球を一生懸命、自分を信じて頑張り続けたら、叶うかもしれない。綺麗事に聞こえるかもしれないけれど、川原投手の姿が励みになっているという声は、清水選手含め多くのリハビリ選手達から聞こえてきます。「リハビリを乗り越えたから今がある」。そう笑顔で言える日がいつか来ますようにと、見守るしかできない私ですがただただ願うばかりです。なので少しでも支えになれるような、応援できるようなコラムが書きたいと思ったのです。

■女手一つで育ててくれた母のために

 応援といえば、じつは私の知っている“タマガール”(タマスタ筑後に応援に来る女の子たち)からも「清水選手はイケメン」とか「早く復帰してほしいね」という声をよく聞きます。たくさんの願いが清水選手のもとには届いているはずです。ただ、おそらく一番のファンは、やっぱりお母さんかなと思います。

「母さんがいつも自分の情報をチェックしてるんですよ。だから記事になるように頑張らないと」

 清水選手は、女手一つで育ててくれた仲良しのお母さんに元気な姿を届けたいんだと話していました。

 5月12日、今日は母の日です。

「母の日って何あげたらいいんですかね? 母さんの誕生日の時は、“プレゼント何がいい?”って聞いたら“活躍したら買って”って言われました(笑)」

 ちなみにお母さんは柳田選手のファンだといいます。柳田選手のような活躍がお母さんへの一番のプレゼントに違いありません。「僕もファンなんですけどね」と言いながら、今はリハビリ組という場ではありますが、憧れの先輩と同じ空間で練習できていることを力に変えようと必死です。

「ギータさんのこと、バリ見てます。ほんとヤバいっす」

 柳田選手も出来る練習メニューがまだ限られている中ではありますが、何か得ようと目をギラつかせています。

「タイミングとるのが上手いし、始動が早いです。いつでも来ていいよって感じでバットを構えているなと思いました」

 京都国際高校時代は、動画サイトで柳田選手を見まくって、打撃だけでなく雰囲気までも真似していました。今は動画じゃなく近くで生で見ることができ、声をかけてもらうこともあり、これ以上ない環境にいます。リハビリ生活は辛いはずだけど、今を最大限に駆け抜け、みんながビックリするほどの進化を遂げてくれるのではないかと期待しています。

 また、とても負けず嫌いな所も今後の成長を後押ししてくれそうです。育成同期入団で、5月9日についにウエスタンリーグの首位打者に躍り出た田城飛翔選手の活躍に、同じ外野手として非常に悔しい気持ちを抱いています。

 そしてもう一人。高校の3つ年上の先輩で現在カープの1軍でプレーする曽根海成選手。

「母校に帰ると、曽根さんの方がチヤホヤされるから悔しいですね。曽根さんより活躍するのも目標です」

 たくさん越えたい壁がある清水選手には大きな原動力があるに違いありません。大物揃いのリハビリ組の中で、黙々と頑張る清水陸哉選手に是非注目して下さい。

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(上杉 あずさ)

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