【巨人】村田修一は日本のすべてのサラリーマンの代弁者である

【巨人】村田修一は日本のすべてのサラリーマンの代弁者である

©時事通信社

■交流戦のDH制度で巨人にあの男が帰ってくる

「セ・リーグにDH制があればなぁ……」

 今季、巨人ファンがこぼす愚痴ベストスリーにランキングするであろう一言だ。「守備が苦手な岡本もDHがあったら」とか「もしDH阿部ならば内野守備も大分マシになる」みたいなタラレバ問答。そんなのただの現実逃避だって分かってる。けど、いつの時代も人は日常のしがらみから逃げてプロ野球へ辿り着くのである。

 ちなみに今回の文春野球コラムはオリックスとの対戦形式でアップされる。お互いにリーグ4位のBクラス。優勝争いの高揚感もなければ最下位の絶望感もない。倦怠期のカップルみたいな毎日を生きている。マジ中途半端。嫌いになれたらラク。でもなかなか別れられないファン心理。とにかくマンネリ打破の刺激が欲しいわなんつって、やってきたのが交流戦だ。

 個人的には楽しみで仕方がない。いきなり仙台であっさり楽天に3連敗を食らったけど、救いはDH制のおかげで村田修一がスタメン出場できたことだ。6番ファーストで登場した第3戦では相手エース則本昂大からの2号2ランアーチを含む3安打2打点の固め打ち。2日、オリックス戦では4番打者として連敗中のチームを鼓舞する3号2ランをかっ飛ばした。そうなんだ、しっかり試合に出ればこれだけの結果を残せる。いや逆風でこそ、村田は強い。これまでもずっとそうだった。

■36歳、おっさんビギナーの苦悩

 思えば、昨季もオープン戦は若い元ドラ1スラッガー岡本和真がスタメンで、代打出場が続く日々。だが、開幕するとポジションを奪い打率.302、25本、81打点。三塁ベストナインにゴールデングラブ賞のダブル受賞という文句のつけようがない好成績。来年も巨人のサードは頼んだぞ、村田さん。誰もがそう思ったが、オフに球団が連れて来たのが新助っ人のケーシー・マギーだった。

 厳しい。これほど、厳しいポジション争いをしている選手が今の巨人にいるだろうか。何があっても外されない、ほとんど聖域と化してる選手もいる中で、若手スラッガーや助っ人大砲と次から次へと刺客が送られてくる。

 考えてみてほしい。あなたが営業の仕事で最高の売上げを記録して、さあボーナスが上がるぞと思ったら、由伸社長はこう言うんだ。「すまない、これからは会社がヘッドハンティングして来たマギーを使う」ってさ。おいおい去年は「期待の若手社員の岡本を育てたい」じゃなかったか? どれだけブレブレのチーム編成だよ。オレは巨人のかませ犬じゃないぞ。ちくしょう、今夜はヤケ酒だ。俺が村田ならそう思う。

 本当にやるせない。阿部慎之助もマギーも確かにいい選手だ。けど競争すらさせてもらえず、仕事を外された時ほど悔しいことはないっすよ。栄光の松坂世代の村田も、早いものでおっさんビギナーとも言える36歳。気が付けば、ひとりの同世代として球場で背番号25を目で追う毎日だ。

 自分がなってみて初めて気付いたけど、世間は中年男性に冷たい。女性専用車両、映画レディースデー、東京ドームもピンクのガールズシートはあっても、おっさんシートはない。会社では中間管理職として若手社員にチャンスを譲り、新卒のおネエちゃんをガチで口説こうと飲みに誘ったら帰り際に「相談に乗ってくれてありがとうございました」とかあっさり言われちゃうあの感じ。おいおい、もう少し現役でいさせてくれよ……。

■サラリーマンの代弁者・村田修一

 通算350号本塁打まであと1本。200併殺打まであと5ゲッツー。あの綺麗な放物線を描くホームランに、ショートの真正面をつく“芸術的ゲッツー”はまだまだ健在だ。最近、個人的に誰かから不当に低い評価を受けたときは、村田さんのことを思い出すようにしている。あいつはもっとしんどいぞと。

 会社の偉そうな上司がムカつく。女房が俺の靴下をビニール手袋でつまむ。付き合いたての彼女が三股だった。床屋で何だかよく分からないツーブロックにされた。だからなんだ? 村田さんを見ろ。そんな悩みは小さいもんだ。それでも腐らずキレず、男は黙って代打でヒット。DHが使える交流戦でスタメンのチャンスが回って来たら、しっかり一発を放ってみせる。そういう人間に私もなりたい。

 今、世の中の多くのサラリーマンは巨人の25番の背中に自分の人生を重ねている。日常に不満はある。理不尽なこともあるだろう。あと何歳か若かったら、怒りに任せてこの会社を飛び出していたかもしれない。上司を殴りたい。でも殴られへんねん。だって、大人だから。いいおっさんだから。世間体もあれば家庭もある。だから、東京ドームへ行って村田さんに声援を送る。頑張れよ、俺ももう少し頑張るからなんつって。

 少なくとも「代打・村田」の登場に球場で今年5度は泣いている。大丈夫か? いやダメだろう。俺ら村田さんがいないとダメなんだ。もはや村田修一とは俺自身だ。いや、この文章を読んでるあなたも今日から村田である。焦ってスマホを投げ捨ててももう遅い。俺もあなたも村田ブラザーズ。なんだこのコラム。とどのつまり、村田修一とは日本のすべてのサラリーマンの代弁者なのである。

 正直、現役生活に残された時間はそう長くはないだろう。でも、このまま終わってたまるかよ。プロ野球選手がグラウンドで見せる男の意地。男の意地は時に不様で、時に死ぬほどカッコいい。ベイスターズ時代はあの筒香嘉智も死にたいくらいに憧れた25番。村田さん、今度は多くの巨人の若手選手があんたの背中を見ているぞ。

 村田修一、36歳。野球人生の土俵際に追い込まれた2017年。

 今こそ頑張れ、ってよりも踏ん張れ、村田。踏ん張れ、巨人。

 See you baseball freak……

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