【西武】80〜90年代の黄金カード「LG決戦」の記憶

【西武】80〜90年代の黄金カード「LG決戦」の記憶

©文藝春秋

■巨人を意識していた広岡達朗監督

 1982年の日本シリーズで中日を破り、球団創設4年目で初の日本一に輝いた西武ライオンズ。胴上げされながら広岡達朗監督の脳裏には「これが巨人相手なら」が、浮かんでいました。そして、早くも翌年に実現。なぜ、巨人? 詳細は分かりませんが、巷間伝わっていたのは「巨人を追い出されたから」。

 83年10月29日、西武ライオンズ球場で迎えた第1戦。田淵幸一が法大後輩の江川卓から3ランを放ち、試合を決めました。「後輩から見事に……」の質問に、「アイツは二部(夜間)だから」との過激な発言が強く印象に残っています。第2戦は西本聖に完封負け。舞台を後楽園球場に移した第3戦は、9回ウラ、森繁和(現中日監督)が駒大先輩の中畑清にサヨナラ打を打たれ連敗。試合後の広岡監督は「シゲ(森)は(学生時代に)中畑にボコボコにされていたからでしょう」と。昔の大学野球部のタテ関係を知らしめたここまでの戦いでした。

 5試合戦った時点で巨人が3勝2敗と王手。その夜のミーティングで広岡監督はマイクを持つと「カラオケはないの?」とひと言。普段、冗談を言わない監督の口から出た言葉にナインはリラックスできたと聞きました。その後、6、7戦の展開を語り「西武が優勝するんだ」と暗示をかけたそうです。

 そして、地元に戻っての第6戦は9回表を終わって3対2と巨人がリード。私がリポートしていた1塁側のカメラマン席は「日本一の瞬間」を撮るため、脚立が林立しザワザワと異様なムードになっていました。しかし、同点に追いつき、延長10回ウラに金森栄治の左越えでサヨナラ勝ちし逆王手をかけました。

 こうなりますと流れは西武。第7戦は先制されながらも7回に満塁からテリー・ウィットフィールドの走者一掃の逆転2塁打。この時、1塁走者の大田卓司が3塁ベースを回ったところでバランスを崩し、近藤昭仁3塁コーチと接触しそうになりました。つい最近、5月19日の西武対ソフトバンク戦で、3塁を回ったアルフレド・デスパイネが村松有人3塁コーチと接触してアウトになりましたが、この時、この34年前のことを思い出したものです。話がそれてしまいましたが、結局この試合、最後は東尾修が締めて待望の「巨人を倒しての日本一」が実現しました。

■渡辺久信が今でも自慢している90年の「LG対決」

 次の「LG対決」は87年、後楽園球場最後の年。指揮をとって2年目の森祇晶監督は、広岡前監督より、対巨人を意識していなかったように思えました。このシリーズのインパクトは何といっても日本一を決めた第6戦でしょう。まず2回、一死2塁の場面。ジョージ・ブコビッチの打球は大きな中飛。タッチアップで3塁に進んだ清原和博は、オーバーランして止まりかけました。ところが、伊原春樹3塁コーチの腕がグルグル回っているのを見て猛然と本塁に走り生還。

 そして、語り継がれる名シーンは8回のできごとでした。二死から辻発彦(現監督)が安打で出塁。続く秋山幸二の中前打で2塁、3塁を回り、一気にホームイン。中継プレーに難があるのを見抜いていたスコアラー、コーチの大仕事でした。そして9回表、すでに二死となったところで「異変」が。1塁手の清原の目から涙が止まらなくなってしまったのです。2年前のドラフトで巨人に裏切られた、と感じていた清原。感極まってしまったのでしょう。最後の打球が中飛で助かりました。内野ゴロだったら送球を受けられなかったのではないかと。

 この戦いで野球観の違いを見せつけられた巨人ナインが、さらにショックを受けたのが、90年の「LG対決」の4連勝でしょう。スコアは5対0、9対5、7対0、7対3とまったく一方的な展開。初戦は渡辺久信(現SD)、第3戦は渡辺智男(現スカウト)が完封勝利。

 その初戦では、初回のオレステス・デストラーデの3ボールからの先制3ランが強く印象に残っていますが、負けず嫌いの渡辺久は、3安打完封と自ら3つのバントを決めたことを、今でも酒席で自慢しています。また、ルーキーの潮崎哲也(現2軍監督)がリーグ、日本シリーズとも胴上げ投手に。ただ、シリーズの最後の打者の投ゴロをつかんだ際に両手を挙げ喜びを表し1塁へ送球。試合後に「あれで暴投したらどうするんだ」と慎重居士の監督に叱られたとか。

 黄金期のかげりが見えてきた94年は、西武として初めて巨人に敗れた日本シリーズとなりました。初戦は大勝したものの、清原以外の打棒がふるわず2勝4敗の結果に。試合よりも最後となった第6戦の試合前の練習中、東京ドームのビジョンに「森監督退任」のニュースが流されたのが衝撃的でした。その後、02年、08年と対戦し1勝1敗。ただ、自身の記憶としては昔のほうが鮮明です。今年は久しぶりに「LG対決」を見てみたいのですが、お互いに現状では厳しいですね。でもCSがありますから、では消極的でしょうか。

◆ ◆ ◆

※「文春野球コラム ペナントレース2017」実施中。この企画は、12人の執筆者がひいきの球団を担当し、野球コラムで戦うペナントレースです。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイトhttp://bunshun.jp/articles/2827でHITボタンを押してください。

対戦中:VS 読売巨人軍(プロ野球死亡遊戯)

※対戦とは同時刻に記事をアップして24時間でのHIT数を競うものです。

(中川 充四郎)

関連記事(外部サイト)