【西武】松坂大輔の運命を変えた? 1998年の日本シリーズ

【西武】松坂大輔の運命を変えた? 1998年の日本シリーズ

©中川充四郎

■西武対横浜 1998年日本シリーズ

 黄金期からの世代交代も進み、西武ライオンズとして6年ぶりの日本一奪還に臨んだ1998年の日本シリーズの相手は38年ぶりにリーグ優勝を果たした横浜ベイスターズ。優勝に対する「飢餓度」では横浜に劣っていたのは事実でしょう。

 それまで中日、巨人、阪神、広島、ヤクルトと日本シリーズで対戦していましたので、セ・リーグ6球団目で一巡りの対戦。ただし、「こちらは日本シリーズの常連、久しぶりに優勝した横浜に負けるわけがない、いや普通に戦えば勝つだろう」の空気があったのは確かでした。

 東尾修監督が指揮をとって4年目。前年は野村克也監督率いるヤクルトスワローズに1勝しか挙げられず完敗し、黄金期は「遠い昔」の感がありました。選手起用や采配について野村監督の口から辛辣な言葉が出て、東尾監督はかなり悔しい思いをしました。

 しかし、この年横浜の指揮をとっていたのは「深い友人関係」の権藤博監督。開幕予定日前日の監督会議は和気あいあいで予告先発を決めるなど、戦うのは選手とはいえ「闘争心」に欠けた面があったのも否めません。あまり過度になってはいけませんが指揮官同士の熱い気持ちも必要です。

 2002年に伊原春樹監督が「憎っくきジャイアンツを叩きます!」と言って、周囲を盛り上げたつもりが、4連敗してしまったこともありました。そこそこに、が理想です。

■目に見えない「38年ぶりのパワー」

 横浜スタジアムで行われた初戦は観客席の迫力に度肝を抜かされました。いわゆる鳴り物や声の応援には慣れていましたが、それにプラスアルファの何かが地鳴りのように響いて伝わってきたのです。

「これが38年ぶりのパワーか」と自身で分析した覚えがあります。これには戦う選手も圧倒されたのか、第1、2戦とも良いところなく連敗。しかし、地元に戻れば普段の野球ができるのでは、の思いはありました。

 この年から「西武ドーム」に球場名を変更した本拠地球場ですが、工事はまだ半分。客席部のみに屋根が架かっているだけで、グラウンドの部分は青空十分状態でした。そして、第3戦は雨のため順延。巨人・長嶋茂雄監督の「ん〜、何でドームなのに中止なんだ〜」の言葉が印象に残っています。当時は交流戦もなく、日頃試合を行わない球場の「事情」は分かりませんから。

 第3、4戦に連勝し、2勝2敗の五分に。こうなれば勢いを付けて一気に王手、との目論見も見事に外れ、第5戦は17対5の大敗。場所を横浜スタジアムに移した第6戦は、「日本シリーズ未勝利男」の西口文也が好投しましたが、2対1で敗れ目の前で胴上げを見せつけられてしまいました。終わってみれば、力負けというよりも目に見えない「38年ぶりのパワー」に押し切られたという印象でした。

 黄金期は過ぎたとはいえ、やっぱり日本一を求められる西武と、久しぶりにリーグ優勝したおまけに日本シリーズを戦おう、という横浜との「重圧の差」が結果に表れたのでしょう。適度の緊張感と適度な解放感が好結果をもたらす、とは一概に言えないのが野球の面白さ、難しさなのでしょう。

■松坂大輔を巡り、ドラフトでも横浜と競合

 日本一奪還ならず、で意気消沈していた西武ファンが溜飲を下げたのが、シリーズ後に行われたドラフト会議。この年の目玉は「超高校級投手」の横浜高校・松坂大輔でした。西武のフロントは夏前までは別の選手を1位候補として調査していましたが、夏の甲子園での優勝シーンを見ていた堤義明オーナー(当時)の「鶴の一声」で方針を変更。日本ハム、横浜と競合しましたが、抽選で交渉権を獲得しました。

 しかし、松坂にとって西武は意中の球団外で交渉は難航し、社会人入りの可能性もありました。社会人ならば3年でプロ入りが可能で、進学すると4年かかります。結局、日数はかかりましたが「(監督の)東尾さんがピッチャー(出身)でしたので決めました」と決断し入団が決まりました。

 もし、監督が野手出身だったら西武入りは見送られていたかも知れません。これも「運」といえるのでしょうか。私なりの勝手な解釈ですが、この年の日本シリーズが逆の結果でしたら、ドラフトの抽選も違う結果になったのでは、と思いました。私の尊敬してやまない野球の神様は粋な結果をもたらしてくれたものです。

 この年以降、西武は3度日本シリーズに出場しましたが、相手は巨人が2度で中日が1度。あれから19年が経ちました。球団名が「DeNA」と変わっても「ベイスターズ」はそのままです。いつになったら「98年の借り」を返せるのでしょうか。

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対戦中:VS 横浜DeNAベイスターズ(西澤千央)

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(中川 充四郎)

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