【中日】小笠原慎之介、進化の日々。ライバルは世界すべてのサウスポー 

【中日】小笠原慎之介、進化の日々。ライバルは世界すべてのサウスポー 

©時事通信社

■菊池雄星との対決直訴

 ラジオは宝箱。四六時中リスナーに向け、聴いてもらいたい音楽、情報を惜しみなく流し続ける。視覚で勝負のテレビとは異なり、痒いところに手が届くような話を耳にした時はなんともいえない幸福感に浸れる。つい先日もそんな幸せの欠片を拾った。

 千葉ロッテとの交流戦3戦目試合途中のこと。「明日のオリックスとの交流戦初戦の先発は小笠原投手です。彼は地元名古屋での西武戦で菊池雄星投手と投げ合いたい為に、(16日)金曜日初戦の先発を志願したそうです」。

 思わずホホーッと声を上げ、慎之介の初志貫徹し続ける姿に改めて感心した。志願登板を訴えた背景を知らないと何のことはない先発情報に聞こえそうな話。だが実はこの対決、慎之介が自ら綴るサクセスストーリーを実現させる為には避けては通れない道なのだ。

■“小笠原世代”には興味なし!?

 2015年、中日ドラゴンズにドラフト1位で指名されるまでアマチュア野球の王道を走り続けてきた。神奈川県藤沢市立善行中学校では「湘南ボーイズ」に所属。3年夏には全日本中学野球選手権大会ジャイアンツカップで優勝を果たし、代表選手入りしたU-15アジアチャレンジカップでも優勝を経験した。

 その後東海大相模に進学。3年夏の第97回全国高等学校野球選手権大会で優勝投手に輝いたのは記憶に新しい。同年ドラフトでは甲子園で鎬を削ったオコエ瑠偉外野手(東北楽天)、平沢大河内野手(千葉ロッテ)、佐藤世那投手(オリックス)、そして当時慎之介以上に評価が高く、最多の3球団から1位指名を受けた高橋純平投手(福岡ソフトバンク)ら同級生たちがプロの門を叩いた。周囲は世代の代表として、“小笠原世代”と呼ぶほどの活躍を期待してしまうし、当然本人もその名称は譲らない決意と覚悟で挑んでいるものと思っていた。そこでまたラジオの宝箱の登場だ。

 昨年12月、ルーキーシーズンを終えての初となるオフ、地元名古屋のドラゴンズ応援番組でゲストに呼ばれた時のことだ。球界のライバルをクリーンアップに例えて答えて欲しいという質問に、慎之介は悩みもせずにあっさりとこう答えたのだ。

3番 上原健太(北海道日本ハム)
4番 高橋周平(中日)
5番 今永昇太(横浜DeNA)

 誰もが同世代の名前を挙げると思っていただろうし、ましてやドラフト時には高橋純平の外れ1位という屈辱を味わっただけに彼の名前は真っ先に口にするはずだと頭に描いていた。

 同僚の高橋周平は中学からの先輩でいつかは超えたい憧れの人という話であったが、注目すべきはあとの二人。ともに同じドラフトで指名された大学生なのだが、揃ってサウスポー。ここで合点。同世代ではなく、同じドラフトで指名されたサウスポーには誰一人として負けたくないという強い意志を感じたのだ。

「何故高橋純平ではないの?」の問いに、“右投手のことは分からないから”とまるで関心のない返答。野手はもはや論外。同じ投手でも右投手は全く眼中になし。いつかは球界トップのサウスポーに成り上がるんだと高い意識を心に秘めていたのである。

■球界最高のサウスポーになりたい!

 決してビッグマウスではない。入団1年目の昨年、交流戦突入となる5月に待望の一軍合流を果たし、12度の先発機会に6度のクオリティースタートを記録。打線の援護のなさや、降板後救援陣がリードを守れなかったことで残した結果は2勝6敗とかなり物足りない成績だったに違いない。ただその成績以上に他チームの打者たちは将来大物になるであろう慎之介のスケールのデカさを直に感じたはずだ。

 今季も左肘遊離軟骨除去の手術で一軍合流が遅れたものの、キャンプからしっかりケアを施し、万全を期して5月6日の讀賣戦に初登板。最速147キロのストレートを記録し、完全復活をアピールした。ここで冒頭の話に戻るのである。もうご理解頂けよう。大谷翔平、則本昂大、千賀滉大といった速球派投手には目もくれず、今や球界随一ともいえる剛球サウスポー菊池雄星に挑戦をしようとしているわけだ。

 まるでブルース・リー主演映画『死亡遊戯』でのレッドペッパータワーの各階に待ち受ける敵を一人一人倒す場面の如く、ターゲットとするサウスポーを乗り越えていくのが今後慎之介がライフワークとする業なのではないか。

 ここまで残した成績には決して本人も満足してはいないはず。ただし敵味方に対し、慎之介の高排気量のポテンシャルは既に実証済だ。「立ち居振る舞いが既にベテラン」と中日OB川上憲伸氏が評せば、「柳(裕也)とともにチームを牽引する投手に必ずなる」と太鼓判を押したのが星野仙一東北楽天球団副会長。皆、彼の力量を高く評価している。

 交流戦を終え、今後同じセ・リーグでは田口麗斗(巨人)、クリス・ジョンソン(広島東洋)ら、左の好投手との指名対決も首脳陣に直訴すると思われる。そのステージもなんなくこなすことができれば自然と目は世界へと向けられることであろう。

■ライバルは世界全てのサウスポー

 メジャーリーグにはクレイトン・カーショウ(ロサンゼルス・ドジャース)、クリス・セール、デビッド・プライス(ともにボストン・レッドソックス)ら、名前を聞くだけで震え上がる、現時点では挑戦すら叶わない次元の高いステージでプレーするサウスポーの猛者が揃っている。

 しかし常に野球道のど真ん中を走り続けてきた慎之介のこと、目標が高くなれば高くなるほど、その頂を目指し技量も力量もアップしていくはずだ。そうなれば川上憲伸、福留孝介(現阪神タイガース)、チェン・ウェイン(現マイアミ・マーリンズ)に続く、生え抜きではチーム4人目となるメジャーリーガー誕生も夢ではない話といえる。あくまで想像だが、慎之介はいつか世界一のサウスポーと称されることを野球人生の最終目標と考えているのではないだろうか。

 運がよいことに同僚には大野雄大、ジョーダン・ノルベルト、ラウル・バルデスといったタイプの異なるサウスポーが在籍。そして忘れてはならないレジェンド岩瀬仁紀が現役で一緒にプレーしていることも慎之介にとっては良き教えを請う場となろう。

 日々勉強、日々進化。末恐ろしい19歳である。まずは16日の西武戦でお手並み拝見だ。菊池に当たって砕けろではなく、がっぷり四つに組んだ力相撲を是非期待したい。それだけの力はある。そう信じ、来たるその日を待っていたい。そして伸び行く姿を温かく見守っていきたい。

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(竹内 茂喜)

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