私が考える、ほんとうに「家族はつらいよ」な映画

私が考える、ほんとうに「家族はつらいよ」な映画

(c)2014 Rudderless Productions LLC. All Rights Reserved.

 私事ですが、今月に入ってから引っ越しをしまして、準備不足でテレビどころではなく、今も世俗にうとい状況です。昨日やっとネットもつながったので、とりあえずニュースサイトを見てみたところ、芸能界は色々大変だったようですね。淫行で芸能活動自粛だとか、麻薬で捕まった人も複数いて、誰が何をやらかしたのか混乱するほど。

 俳優の橋爪功の息子で、同じく俳優の橋爪遼容疑者(30)も、覚せい剤取締法違反容疑(所持)で逮捕されました。橋爪功は特に会見は行わず、仕事もすぐ再開。息子が逮捕されたとはいえ、子どもも成人してから社会で十分、倫理に関する思慮や経験を積んでいるはずなので、いまさら親の謝罪会見も無用だと思います。それにしても、『家族はつらいよ』が現実になったなあという出来事でした。

■三國連太郎の演技もすごいが、近作では是枝作品から1本

 映画やドラマでは昔から、権力者や富を持つ者が、子どものしでかした悪事のもみ消しを図るというのは、洋邦問わず定番ネタ。日本でも『人間の証明』(77年)や『野性の証明』(78年)がパッと浮かびます。『野性の証明』では、罪を犯した暴走族のドラ息子舘ひろしに、大企業を営む父親の三國連太郎が、クンロクを入れる際の三國さんの芝居が独創的すぎて、父子相姦かという異様さが印象に残ってます。

 日本の現代の映画で、リアルな辛辣さがあったのは是枝裕和監督の『歩いても歩いても』(07年)でした。是枝監督はカンヌ映画祭で、柳楽優弥が主演男優賞に輝いた『誰も知らない』(04年)も、実話を題材にした深刻なネグレクトにまつわる映画でした。『歩いても歩いても』はその点では一見、普通の盆の里帰りを描いた映画です。横山良多(阿部寛)は妻のゆかり(夏川結衣)とお盆の帰省をします。頑固な町医者の父恭平(原田芳雄)と、子どもたちを招き入れる母とし子(樹木希林)。

 しかし、この横山家では良多の兄にあたる長男が事故死しているため、お盆はただの月並みな帰省の機会ではなく、ちゃんと供養の意味を持っています。そこで母が家族以外に毎年招くのは、長男が事故死する理由となった男性。長男は優秀な人物で、医師になるのは確実と思われていました。しかし性格も良いのがあだとなり、彼は海で溺れていた男性を助けたために、亡くなってしまったのでした。その命を助けられた男は、ニートのデブ。とし子は毎年彼に、長男の優秀さを語ってきかせます。

 人命は平等。それを露骨に建前だと見せつける、優秀な息子の代わりに生き残った取り柄のない男。家族もさすがに、とし子の振る舞いにいたたまれない気分になりますが、彼女は意図的に、復讐としてプレッシャーをかけています。そんな帰省も終わり、帰りのバスでゆかりは「これから里帰りは盆と正月じゃなく、年に一回でいいよねえ」と、夫の良多と頷き合います。親の思いに対し、息子夫婦の本音をイイ話にせず、リアルに語る作品です。

■遺されたテープ。家族の不可解を真正面から描いた名作

 俳優のウィリアム・H・メイシーが監督した『君が生きた証』(14年)。働き盛りの広告マンのサム(ビリー・クラダップ)は、大学で起きたスクールシューティングにより、息子のジョシュを亡くします。ショックから隠遁生活に入ったサムですが、彼がある日手に入れたのは、ジョシュが生前残していたデモテープ。サムは、ジョシュらしい繊細な曲に誘われるように、飛び入りOKなライブをやっている飲み屋を訪れます。彼の歌とギター演奏は客たちの胸を打ち、次第にサムの噂が広がっていくのでした。

 我が子が亡くなるという出来事自体の苦痛とともに、その理由も家族の心を苛んでいくものです。サムはその思いを歌うことで、生前うまく向き合えなかった息子の心境と同一化して、理解していこうとします。ジョシュの残した才能は、サムから受け継いだのだとわかる、サムの思いがけない素晴らしい歌唱。彼の歌に惚れ込んだ青年クエンティン(アントン・イェルチン)は、サムにバンドをやろうと声をかけます。

 クエンティンを演じたアントン・イェルチンは、昨年不慮の事故により、27歳の若さでこの世を去りました。このような理由で、見返すのが何重にもつらい映画ですが、未見のかたはぜひ、この後の展開はDVDか、劇場での再上映でごらんください。家族のつらさを真正面から描いた作品です。

INFORMATION

君が生きた証

DVD発売中
3900円(税抜)
発売/販売元 ハピネット   
?2014 Rudderless Productions LLC. All Rights Reserved.

INFORMATION

歩いても歩いても

DVD発売中
3800円(税抜)
販売元/バンダイビジュアル
?2008「歩いても 歩いても」製作委員会

(真魚 八重子)

関連記事(外部サイト)