獣神サンダー・ライガーが『世にも奇妙な物語』で学んだ「魅せる」ということ

獣神サンダー・ライガーが『世にも奇妙な物語』で学んだ「魅せる」ということ

©白澤正/文藝春秋

「テレビはつまらない」「テレビ離れ」など、テレビにまつわる話にはネガティブなものが多い。

 しかし、いまなお、テレビは面白い!

 そんな話をテレビを愛する「テレビっ子」たちから聞いてみたいというシリーズ連載の5人目のゲストは、新日本プロレス所属のプロレスラーである獣神サンダー・ライガーさん!

 テレビ創世期を代表するヒット番組が力道山のプロレス中継であるように、プロレスとテレビは切っても切り離せない関係。

 自身も、大の特撮好きで知られ、プロレスのみならず数多くのテレビ番組に出演されるなど、もっともテレビに愛されたプロレスラーのひとりであるライガーさんは、意外にもドラマへの出演も少なくない。

 そんな彼に「魅せる」とは何か、また、趣味として熱中している怪獣づくりなどについて、フィギュアが並ぶライガーさんのお部屋で伺った。

◆ ◆ ◆

■猪木さんは目で試合してる。目で、表情で

――テレビ中継とかでもそうですし、大きな会場とかだとオーロラビジョンとかがあったりすると思うんですけど、それがある時とない時と、試合のやり方や意識する方向って変わりますか。

ライガー そこまでは変わりませんが、よくデビューしたての頃に先輩に言われたんですけど、リングで戦うのは毎回同じ。だけど会場が大きかったら、たとえば両国国技館とかだと上の方まで人がいる。その人たちも観てる。対して後楽園ホールのような程よい大きさの会場で上から観てる人がいる。同じ上からでも距離が全然違う。ちょこちょこやっててもリングサイドの人にしかわからない。それをどう伝えるかというのは勉強しなきゃだめだよって。それが上手だったのは(アントニオ)猪木さんだったんじゃないかと。猪木さんは目で試合してる。目で、表情で。素晴らしい、引き込まれちゃうんです。だから今でも猪木さんの、ドリー・ファンク・ジュニア戦とかビル・ロビンソン戦とかのDVD観てるとね、息するのを忘れてるんじゃないかというぐらいグーッと入り込むんですよ。それで今みたいに大歓声で、「オォーッ!」じゃない。終わったら、「はぁ……」っていう緊張感。誰かと見ていたら顔を見合わす。「はぁ、すごいね」って。こういう感じになる猪木さんの試合って、やっぱりすごいんです。付き人もさせて頂いていたので教わったことも色々ありましたね。

――目で試合するんですね。そういう意味だとマスクマンだと目が隠れてしまって不利な部分があると思いますけど。

ライガー 確かに視界が狭くなっちゃう。ほぼ下が見えないし、僕の場合、特にメッシュが入っているので。利点といえば、リングサイドにセクシーなお姉さんがいるときにそれをガン見しても視線がわからないこと(笑)。

――わははは(笑)。

ライガー それは自慢ですね。(※女性マネージャーに)何を大きくうなずいてるんだ!(笑)

■『世にも奇妙な物語』で主演した「覆面」

――ところでライガーさんといえば、マスクマンでありながらドラマにもご出演されてます。初期でいえば『世にも奇妙な物語』の「覆面」(91年)という短編で主演されましたね。

ライガー はい。あれは河崎(実)監督とお付き合いをさせていただいて。そういうのをちょっとやろうかと思うんだけど、って言われたので、ぜひよろしくお願いしますって感じですね。

――プロレスラーが主演というのはテレビドラマではなかなかなかったですよね。

ライガー そうだと思います。河崎監督もよく言うと面白い人、悪く言うと変わった人です(笑)。

――どうでしたか、演じてみて。

ライガー あの時は(セリフは声優の)吹き替えですから、全部。あぁ、俺の声じゃねぇ、やっぱりなって(笑)。でも面白いんですよね、知らない世界じゃないですか。最近も真壁(刀義)が大河ドラマ(『おんな城主 直虎』)に出たりとかして。(役名が)力也役か。やっぱり彼も、すごく勉強になるって言ってます。ひとつひとつの動作が、「魅せる」という部分でプロレスと通じるものがある。さっき言ったように大きな体育館で、手がブラブラしているか、指先まで神経が通っていて、指がちゃんとした形になっているか、自分がどうなっているかというのがやっぱりあるんですよ。画になっているか。何でも勉強になりますよね。今の若い人はどんどん経験した方がいいと思う。

■丸山隆平が長州力に見せた、さりげない親切

――ライガーさんも最近でいうと、『レンタル救世主』に出演されました。ジャニーズWESTの藤井流星さんの父親役。今回はご自分の声でセリフもありましたよね。

ライガー ありましたね。でも僕からあんないい男が生まれないよ!(笑) 顔小さくて背は高くて、かっけぇーと思って。「俺の息子? 母親、誰よ!?」みたいな(笑)。

――第1話から「父親は世界的覆面レスラー」というセリフはありましたけど、本当にライガーさんが出てきたときはびっくりしました(笑)。これは結構早い段階でオファーがあったんですか。

ライガー どれぐらいだったかなぁ? 脚本を書かれた方に、「僕はライガーさんのつもりで最初から書いてました」って言ってくださったので。カミさんと息子は僕が父親役ってことにブーブー言ってましたもんね。「(博多弁で)よかぁ、よかぁ。流星、よかぁー」って。

――あはは(笑)。

ライガー そうそう、ジャニーズでいうと、関ジャニ∞の丸山(隆平)さん! 僕が長州力さんとテレビに一緒に出た時に、長州さんがトイレに行きたいって突然言い始めたんですよ。僕はTBSの人間じゃないんで、トイレの場所なんかわからないじゃないですか。「え、トイレですか? えっと……」って困ってると、前を歩いていた丸山さんがクルっと振り向いて、「トイレだったらあそこの角を曲がってこっちにありますよ」って。親切なんですよ。わざわざ立ち止まって教えてくれたんです。

■夜はニュース番組をはしごして、天気予報で小さな幸せを感じる

――いま、よく観るテレビ番組はありますか?

ライガー NHKのニュース(即答)。『ニュース7』から『ニュース845』、『ニュースウオッチ9』。それを観て途中から『報道ステーション』。それで『NEWS23』を見ながら就寝、みたいな感じ。

――じゃあ夜はずっとニュースを。

ライガー ニュース好きなんですよ、昔から。ニュースと天気予報。「明日雨かぁ……」とか「明日いい天気じゃん」とか。そういう小さな幸せが。

――ふふ(笑)。

ライガー いやでも、人間というのは「花鳥風月」なんだって。知ってる?(笑) そういうのに興味を持つようになるんだよ、花鳥風月。

――天気もそうですよね。

ライガー 言ってみればね。風とか月とか。そこに興味がいくようになる。

――ところで、お部屋にはいっぱいの怪獣フィギュアがありますが、作り始めたのはいつ頃からなんですか?

ライガー ガレージキットというのは、僕が新日本プロレスに入ってすぐの頃、蔵前の問屋街で買いました。その頃は国技館が両国ではなくて蔵前だったんです。蔵前国技館に行く時に、おもちゃ問屋みたいなのの前を通るんですよ。そこを横目で見たら、バルタン星人とか、ガメラとか、ゴジラとか、ウルトラマンの箱がえらい積んであるんです。「今でもこういうのあるんだ!」って。それまで(特撮から)ずっと離れてたから、もうだめですよ。火がつきました。ギャラの大半がガレージキットに(笑)。怪獣はたいがい粘土で作ってます。それを、樹脂で型を抜いて。白いやつは粘土で、色がついてるのは、紙粘土で作ったのを型取りして、樹脂で色を塗っている。向こうの机の上にあるのは、今作ってる最新作です。

――ゴジラですか?

ライガー 1955年の『ゴジラの逆襲』。初代ゴジラの次のゴジラがアンギラスと戦ってるシーンを作ってるんですけど、まだまだ(完成は)全然先ですね。生意気言わせてもらったら、そのまんま作ってもそれは置物でしかない。「スゲー、生きてる、あっホントに戦ってるみたい!」っていうのをローアングルで見た時に表現できたらいいなと思って。だから作って、あっいいなと思っても、いやでもここはって思ったら、すぐまた削ってやり直すときもあります。だから1体作るのに半年とかかかるんです。オフを利用して作ってますから。普段は地方とかに行ってるから作れないので、逆にそれが帰ってきてまた新しい視線で見られるからいいんですよ。

■素顔で、ちょっと髭とかつけて若干変装してやりたい役

――手先は元々器用だったんですか。

ライガー どうでしょう? 昔はおもちゃとかなんでも、僕らは応用して遊んでたんですよ。物がないから工夫して、こんな遊び方あるじゃんって。そういう工夫を今の子供よりはしてたかもしれないですね。

――特撮の番組とかには出たことってありますか。

ライガー 特撮は河崎監督のやつとかはちょっと出させてもらいましたけど、本格的にはないですね。このキャラですからね。これで出たら目立ってしょうがない(笑)。だから変装して殺される役とかをやりたい。ウワァー殺されたーって(笑)。主役とかなんとかより、そういうのをやりたいです。

――それはマスクじゃなくて。

ライガー その時は素顔で。ちょっと髭とかつけて若干変装して。それでものすごく嫌な役なの。最後殺されて、みんながスカーッとするような。「ほれみろ、こいつどうせこんなやつ、ざまみろ!」って。テレビに向かって、晩酌でもやってるお父ちゃんがね、「ほれ殺された!」ぐらいの。そういうのやりたいんですよ。人騙して金儲けして。女の人を足蹴にして。「コラァ、たわけコラァー」って言って。最後に殺される。

――ヒーローではなくヒールを。

ライガー それは怪獣にもつながるんじゃないのかな。ヒーローなんかいっぱいいるじゃないですか、男前の人でスタイルも良くて。それは任せておけばいいんですよ。

――プロレスラーでいうと棚橋(弘至)さんが『仮面ライダー』に出てましたよね。

ライガー タナはさ、いい男だもん!

――それは羨ましかったですか?

ライガー いや、どっちかというとライダーを演るよりも怪獣の中に入りたい。

■『プロフェッショナル』の職人の回、大好きです

――(※部屋に積まれている怪獣の本を見て)すごいですね、こういう本も揃ってるんですね。

ライガー 造形する時の資料ですね。1枚1枚、写真見て、背びれの形がこうなってるのか、とか。

――そうか、全方位がわからないといけないんですね。

ライガー そう、だから資料があればあるほどいいんです。ちょっとした角度で写ってないところが、ここには写ってるってこともあるし。だから結構資料は揃えますね。

――次は何を作ろうかなというのを、本をめくりながら何か思ったりとか。

ライガー なんかふっと浮かぶんですよ。あっ、あれ作りたいなって。

――職人的な感じですね。

ライガー いやいやいや、素人だからこそできるんですよ。計画的に作らなくても、納得いくまで作り込むことができる。だからほんとに今、じっくり時間をかけてやってますね。前に作った作品とかをみると、なんでこんなところ作ったんだろう、もっとこうすればよかったのにってものはいっぱいあります。だからその戒めを込めてこうやって古いものも置いているんです。

――戒めを込めて(笑)。ホントに職人ですよね。

ライガー 手を抜こうと思えばいくらでも抜けるじゃないですか。だからNHKの『プロフェッショナル』とかも大好きですよ。勉強になりますね。この間も、大工の棟梁さんの回は凄かった。NHK好きです、僕。

――『ウオッチ9』で天気予報を観た後に『プロフェッショナル』を観て……。

ライガー あぁいい流れですね。「花鳥風月ライガー」ですから!

獣神サンダー・ライガー/89年4月24日、東京ドームでの小林邦昭戦で獣神ライガーとしてデビュー。5月25日、馳浩を下して第9代IWGPジュニアヘビー級王座を初奪取。以降、同王座には歴代最多となる11度の戴冠を誇る。90年1月に獣神サンダー・ライガーに改名。IWGPジュニアタッグ(戴冠6回)やジュニア8冠王座など、国内外の団体問わず数多くのベルトを獲得。現在も“世界の獣神"として、絶大な人気を誇る。得意技はロメロ・スペシャル、垂直落下式ブレーンバスター、掌底、ライガーボム、空中胴締め落とし。170cm、95kg。

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?7月17日 〜 2017年8月13日  ※最新情報は新日本プロレスオフィシャルサイト

写真=白澤正/文藝春秋

(てれびのスキマ)

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