「宇宙スリラー」の傑作登場 『ライフ』のB級感こそ夏に似合う

「宇宙スリラー」の傑作登場 『ライフ』のB級感こそ夏に似合う

「宇宙スリラー」の傑作登場 『ライフ』のB級感こそ夏に似合うの画像

 今年上半期は、地球にやってきた宇宙人の意図を解読する『メッセージ』(ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督)が話題になったほか、下半期も宇宙が舞台の大作映画があります。9月にはリドリー・スコット監督がメガホンを取った、エイリアン誕生の原点を描く『エイリアン:コヴェナント』が公開予定。『エイリアン』シリーズは監督が次々と代わっているので、御大自身が手掛けるのはじつに1作目以来、38年ぶり。

■ややこしいけど復習して鑑賞したい「エイリアン」シリーズ

 とはいえ、2012年にリドリー・スコットは『プロメテウス』という、『エイリアン』(79年)の前日譚を監督しています。今回の『エイリアン:コヴェナント』は『プロメテウス』の続編とのこと。ややこしいですね。でも『エイリアン』はやはり映画史に残る作品なので、シリーズを復習して鑑賞したい作品です。

 基本的に、宇宙映画というのは大抵ほのぼのとはしていなくて、危険や恐怖と紙一重です。筆者にとって長年、宇宙に対するトラウマ映画となっていたのは、幼稚園の頃にテレビで見た『007は二度死ぬ』(67年)でした。どちらかというと、丹波哲郎やトンデモ日本が出てくる笑える映画として有名です。しかし冒頭で船外作業中の宇宙飛行士が、宇宙船とつなぐ紐であるテザーを切断されて、そのまま宇宙に流されていってしまうシーンは、猛烈に虚空の孤独や絶望を感じさせて怖かったです。

■真田広之がシステム・エンジニア役で登場する『ライフ』

 そしてもちろん、同様のシーンで有名なのは『2001年宇宙の旅』(68年)。これも小学生の時に見てドン引きです。命綱を切られ、宇宙船からどんどん遠ざかっていく無力な宇宙飛行士の姿は、恐怖のさらなる上塗りになりました。宇宙の広大さというのは、宇宙船内以外は死の危うさにつながるという意味で、広場恐怖症と、閉所恐怖症を同時に起こさせるものです。そしてこの映画の、宇宙船を制御する人工知能HAL9000が、乗組員を殺してしまう暴走。でもHALに対する感覚は、人間以外に依存する不安や、人工知能が破綻する危機感より、今まで正常に話していた知人の言動がおかしくなっていく、コミュニケーションが図れなくなる狂気への恐怖に近いです。

 そして連綿と続く宇宙スリラーの新作。7月8日公開の『ライフ』も、宇宙で恐怖に見舞われるスリラーです。出演は『デッドプール』(16年)のライアン・レイノルズや、『ナイトクローラー』(15年)のジェイク・ギレンホール、『ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション』(15年)のレベッカ・ファーガソンと、豪華な俳優が集う作品。日本からも、海外進出が続く真田広之が、システム・エンジニアの主要な役で出演しています。

■『ライフ』はどんな「宇宙コワイ映画」なのか?

 6名の宇宙飛行士が火星で発見した、ひとつの未知の細胞。しかしその生死がわからないため、宇宙生物学者はなんとか生命反応をみようと、細胞に様々な刺激を与えます。しかしそれが細胞の癇に障ったのか、息を吹き返して活動を始めた途端に、どんどんえげつない成長を遂げていきます。出発前、乗組員の検疫官ミランダが、この探索計画について上層部と取り交わした条件は、もし生命体を見つけた際に、疫病となる可能性がある場合は「地球に持ち帰らないこと」。そのため、彼らはISS(国際宇宙ステーション)内で、この凶暴な生命体を根絶するため、死闘を繰り広げることになります。

 宇宙飛行士たちを襲う恐ろしい生命体や、彼らをさらなる危機に追い込む宇宙船のシステムトラブル、そしてまたもや乗員が宇宙に放り出されるトラウマ描写など、宇宙スリラーの根幹を踏まえた作品です。

 その手の映画のファンにとっては、大量に見てきた馴染みのある雰囲気が漂う作品です。たとえば宇宙船ホラーの邦題とは思えない『悪魔の受胎』(79年)や、問題点が『ライフ』とじつは近そうな『溶解人間』(77年)等々……。それは『ライフ』がオールドスクールな映画ということでもありますが、こういうB級な香りのする映画こそ夏に見ないでどうする! という気もするのです。『エイリアン』の亜流として、できる範囲のことはやったお手本のような内容。そう、高級なステーキより、ビールのお供にビーフジャーキーをほとんど無意識に咀嚼したい夜もあるじゃないですか。そんな時にふさわしい、引っ張りだこの人気俳優たちが出ているお得感や、後味の悪さも厭な映画として満足感のある、オススメ作品です。 

(真魚 八重子)

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