竹島水族館「逆転の発想で“ショボイ”を武器に」――水族館哲学4

竹島水族館「逆転の発想で“ショボイ”を武器に」――水族館哲学4

©中村元

 水族館のすべてを知り尽くす敏腕プロデューサーが、全国の水族館から30館を独自の哲学で選んだ『水族館哲学 人生が変わる30館』。刊行を記念して本書から数館を紹介してまいりました。最終回は蒲郡市竹島水族館。前回の「北の大地水族館」に続き、こちらも起死回生を果たした水族館です。たいへん古い建物で、展示も流行の大水槽はありません。ですが、行列ができるほどの人気ぶり。どんな秘密が隠されているのでしょうか。

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■とんでもなくショボイ出発点

「弱点を武器にする方法を学べる水族館」の第2弾は、自ら「ショボイ」と宣言する超古典的水族館でありながら集客倍増を果たした竹島水族館。この水族館館長は、私の自慢の門下生なのだが、つい最近まで主任という立場だった。その彼が集客を増やして来た過程は、裏技、裏道とでも言うべき驚きの手法の連続だ。

 竹島水族館は1956年の開館以来61年間、ハード面がほとんど変化していない古い水族館だ。日本最古級の外観は昭和レトロ風で大水槽もなく、古くさい汽車窓水槽が並ぶ。当然利用者は少なく、10年前には年間入館者が12万人まで落ち込み、廃館も検討された。

 竹島水族館の弱点は、建物全体の古さによることは間違いない。還暦のお爺さんが中学生時代の学生服をずっと着続けているようなものなのだ。新しく建て替える費用がない中で、弱点を武器にしなくてはならない。

 北野ハジメ君は、生まれついてのチビでベタ足で、どんなに走る練習をしてもかけっこ、ジャンプはビリだった。それで中学では9人制のバレーボール部に入部、ライバルの少ない守備要員として不動のレギュラーになった。実はこれ、私の歴史だが、北の大地の水族館がとった道も同じだ。

 一方、竹島リュウジ君も、同じように足が遅い。ところが中学校は小さな分校で、陸上部しか選択肢がない! それが竹島水族館の置かれている状況なのである。

 そんな時、どうすればいいのか? 大丈夫、それでも弱点を活かす道はある。例えば長距離走選手あるいはコーチとして一目置かれる存在となるのもいい。いや、もっとトリッキーな方法もある。勝手に障害物競走という競技を新しくつくってしまって、他にもいる足の遅い子もその仲間にしてしまうのだ。竹島水族館の小林龍二館長(当時主任)がとった方法は、まさしく障害物競走への道だった。

■集客を増やした必殺技

 まずは、解説板で新しい魅力づくり。展示生物にも水槽にもこれといった魅力がないという弱点から発想し、他の水族館では利用者の誰も読まないであろう解説板で勝負に出た。

 内容もよくありがちな生物学的知識は二の次にし、食用としての知識、名前の面白さ、笑えるダジャレ、トリビア情報など、利用者の興味を惹くことを中心に変えた。

 さらに、そのほとんどをスタッフの手書きにした。実は手書き解説は、展示スタッフの気持ちが伝わることで読ませる力が強く、タイプ文字の10倍以上の人が読む。それではなぜ、全ての水族館で行わないのか? 

 この裏技、新しい水族館や雰囲気重視の水族館では、手書きがヘンに主張して水塊の邪魔になるし、何よりも貧乏くさい。竹島水族館が超古いという弱点があるからこそ、効果的に使える裏技なのだ。 

 次はスタッフ自身の改革だ。それまで隠れるようにして観覧通路に出てこなかった飼育スタッフを説得して、積極的に観覧側に出て客と話をさせるようにした。 

 地元の漁業では深海生物を水揚げするため、この水族館でも沢山の深海生物の展示がある。そこで、解説板に書くネタや、利用者と話をするネタのために、ゲテモノ好きのスタッフに、展示している深海生物を片っ端から食べてみて、その味をレポートする役目を命じた。そのあまりに挑戦的なレポートはネット上でも大人気となり、テレビにも出演するほどになった。 

 予算がないため実際の展示生物や水槽にはほとんど手を付けられないが、スタッフ自身を展示物にしてしまおうというわけだ。実はこれ、私が小林門下生に伝授した裏技なのだが、彼はさらに磨きをかけ、必殺技として極めたのである。

■前代未聞のプレスリリース 

 そして特筆すべき「魅力づくり」の大きな転機は、深海生物のタッチングプール「さわりんぷーる」を含む、深海生物展示コーナーを新設したことだった。失礼ながら、この工事費用もやっぱりショボイ予算で冷却装置が付けられないため、せっかくの「日本初」の展示にもかかわらず、当初の夏は肝心の深海生物タッチングが不可能という状況だった。 それでも、「世界最大のカニ、タカアシガニにも触れる!」を売り文句にオープンした。 

 しかしこの程度では、メディアにも小さくしか取り上げられない。そこで前代未聞のプレスリリースが生まれた。「今年度の入館者が16万人に達しなかったら、男性職員全員坊主になる」の公約込みで、新施設の魅力をアピールしたのだ。面白がったマスコミによってメディア発信は大成功し、それを見てさらに面白がった地元市民が、応援に来館してくれるようになった。 

 久々に来館すれば、飼育スタッフの顔が見え、アットホームな水族館になっていることに親しみを感じる。それまで売れなかった年間パスポートが売れはじめ、なんとたけすいエンジェルスなる、平日の昼間を盛り上げてくれる女性ファンクラブまでできてしまった。 

 さわりんぷーるから5年の2016年、入館者は16万人どころか、その倍の33万人を突破した。竹島水族館が瀕していた絶体絶命の弱点、それは新しい裏道を探すことのできる大きなチャンスだったのである。

CHECK!
ここではショーさえもユニークで特徴的だ。小さなステージにオタリア(アシカ科)が1?頭だけ登場するアシカショーは、館長自らが現役でトレーナーを務め、調子の悪いときの「謝罪ショー」までもを有名にした。またおそらく世界唯一のカピバラショーでは、カピバラが指示に従うことは全くないが、それが面白いと大人気だ。

DATA

竹島水族館
TEL.....................0533-68-2059
住所....................愛知県蒲郡市竹島町1-6
URL.....................http://www.city.gamagori.lg.jp/site/takesui/
開館時間.............9:00〜17:00
休館日.................GW・春夏冬休みをのぞく火曜(祝日の場合は翌日)、6月の第1水曜、12月29〜31日(2017年9月から約4カ月間、耐震工事のため休館の予定)
入館料.................大人500円、小中学生200円
交通....................JR蒲郡駅から徒歩約15分。蒲郡駅南口からバスで約5分、「竹島遊園」下車
車=東名高速道路音羽蒲郡ICからオレンジロード経由で約15分

データは2017年5月現在のものです。

文・写真 中村元

(中村 元)

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