朝ドラ『なつぞら』20%超えだけど……広瀬すずらの圧倒的“令和感”ってどうですか?

朝ドラ『なつぞら』20%超えだけど……広瀬すずらの圧倒的“令和感”ってどうですか?

タンバリン片手に踊る広瀬すず ©時事通信社

「好き」の反対は「嫌い」。ん、果たしてそうでしょうか? 「好き」も「嫌い」も対象に向かってある種のエネルギーは発生しているわけで、そこに「熱量」が存在するのは間違いありません。

 では「好き」の反対はなにか。それ、多分「無関心」です。対象への「熱量」が果てしなく低い、もしくはノー興味の状態。なにが言いたいかというと、最近『なつぞら』に対して、世間の称賛もツッコミも薄くなってきましたね、という話。『あさイチ』での華丸さん、大吉さんの朝ドラ受けも適当……いや、淡泊になってきてますし。

 東京・アニメーター編がスタートして7週目に入ったNHKの朝ドラ『なつぞら』。ではなぜ、ここにきて視聴者の熱量が落ちているのか。

 そのひとつの要因が“時代が見えないドラマの世界観”だと考えます。

■「やばっ」時代錯誤を感じざるを得ない『なつぞら』の世界観

 なつ(広瀬すず)がアニメーション制作会社「東洋動画」に入社したのは1956年で、今はそこから数年が経過。時代性の無さでいえば、なつのファッションや登場人物のメイク、東洋動画内のセットデザイン等もそうですし、じつはせりふの扱いにも「ん?」となる箇所がちょいちょい出現。

 たとえば、新作アニメ『わんぱく牛若丸』のキャラクターデザイン決定の日、遅刻が決定的になったなつの「やばっ」という一言や、なにかを断る時の「大丈夫です」という否定の仕方、雪次郎(山田裕貴)が「風車」のカウンター内で作ったロールケーキを食べた咲太郎(岡田将生)の「普通に旨い」の一言……いやいや、昭和30年代にこの表現は使わないべさ。

 また、東洋動画内の人間関係も非常に現代的。確かに「仕上課の女性社員は男性社員のお嫁さん候補」といったせりふもありましたが、動画チームで一番下っ端のなつが上司や先輩に同等の立場でモノを言っても誰にも責められない。いくらクリエイターの集団といえど、上下関係も女性が下に見られる環境も、60年前は今よりずっと厳しかったはず。ですが『なつぞら』で描かれるものづくりの世界は、煙草の煙がまったく上がらない室内を含め、いろんな意味で超絶クリーン。

 さらに、なつが上京したいと十勝の家族に話した時も、雪次郎が「川村屋」での修業をやめ、役者になりたいと言い出した時も、大人たちがとっても優しい。最後は全員が笑顔で若者の「夢」を後押しする展開からは、当時の「筋」や「常識」「家長制度」の表現が綺麗に抜け落ちている気がします。

■”わちゃわちゃ”するアニメ制作現場は現代仕様?

 近年の朝ドラで昭和30年代を描いた作品といえば、現在、夕方の枠で再放送中の『ゲゲゲの女房』や、コシノ三姉妹の母をモデルにした『カーネーション』、ヒロインが出版社を立ち上げる『とと姉ちゃん』等が挙げられますが、少なくともこれらのドラマには時代の匂いや当時の常識が描かれていました。

 ですが『なつぞら』からはそれが読み取れない。“昭和30年代のテーマパーク”の中で、キャストと呼ばれる人たちが現代の価値観をまとってそれらしい演技をしているように見えて仕方がないのです。

 時代感がなく、現代の価値観で物語が展開するため、20歳そこそこのヒロインが日本のアニメ黎明期にあまたの壁を乗り越えながら成長し、誰も見たことがない作品を創るんだ! という、本作の芯となるはずの挑戦もエネルギーも軽くしか伝わらない。その姿は、令和の大学生がバイト先で先輩たちに可愛がられ、わちゃわちゃする図にさえうつります。当時のアニメ制作現場は、ゼロから作品を生み出す情熱や創造者たちの執念が渦巻く“カオス”だったはずなのに。

■キャラクターたちの”無駄遣い感”が半端ない

 次に考えてみたいのが“サブキャラクターの薄さ”。

 『なつぞら』は100作目の朝ドラということもあり、オンエア開始前から歴代ヒロイン再結集! 的な煽りもありました。

 過去のヒロイン枠でいえば、なつの育ての母・富士子役の松嶋菜々子と、会社の先輩・大沢麻子役の貫地谷しほり以外、現状、微妙な気もします。特に、新宿でなつが身を寄せるおでん屋「風車」の女将・岸川亜矢美を演じる山口智子は、「演技がロンバケの頃と同じ」「いきなりフラメンコを踊り出す意味が分からない」と、散々な言われよう。また、元ヒロイン枠ではないものの、新宿のクラブ歌手・煙カスミ役の戸田恵子の無駄遣い感も半端ない。このふたりを同じ場所で出すのなら、過去の関係性をもっともっと掘ってほしかった。

■サブキャラの薄さとストーリーのぶつ切り感にモヤモヤ

 なつを取り巻くイケメン勢は、幼なじみ・天陽(吉沢亮)の結婚、その使い勝手の良さからSNSでは“アレクサ”とも称される信哉(工藤阿須加)の帯広転勤、一瞬で別の人と恋に落ち、鮭を運ぶ熊と化した照男兄ちゃん(清原翔)と、皆がみずからの都合でなつの前から姿を消す展開に「都合良すぎじゃね?」との声も。が、これはあの変人となつとの未来を考えると仕方ない……ん、仕方ないのか? 今は転勤先の帯広で、信さんが優しい人に感謝されながら幸せになることを祈るばかりです。アレクサ、これまでよく頑張った。そして天陽の兄・陽平(犬飼貴丈)は唐突に出てきて衝撃発言するのをやめなさい。

 これらサブキャラクターの描かれ方の薄さに加え、エピソードがブツブツ切れてしまうため、視聴者も登場人物に感情移入するのが難しい。ここにきて冒頭から引っ張ってきた「生き別れの妹・千遥(清原果耶)との再会問題」が少しずつ動き出しましたが、前振りがいちいち長かったため、「なつも咲太郎もこれまでそんなに真剣に妹のこと探してないよね?」と心のどこかにモヤモヤが。

■高視聴率の裏に隠れる「視聴熱」の低さ

 とはいうものの、『なつぞら』の視聴率は放送開始以来ほぼ毎週20%超え。これは現在日本でオンエアされているすべてのドラマの中で一番高い数字です。が、「ザテレビジョン」がSNSでの反応等、独自の調査で割り出している「視聴熱」を見ると、6月の最終週では視聴率3%台の『きのう何食べた?』や視聴率の低迷ばかりが話題になる大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』に大きく水をあけられ第5位という結果に。

 視聴率は断トツに高いのに視聴熱は低め。これ、普通に考えたら「習慣的にテレビはつけているけれど、内容をちゃんと見ていない人」が一定数いるということ。そう「好き」の反対は「無関心」なのです。

 放送開始から3か月が過ぎ、ドラマ全体の折り返し地点まで来た『なつぞら』。なかなか決まらない千遥との再会に加え「雪月」の後継者問題や咲太郎の「ムーランルージュ」再建の夢、新劇の劇団に入った雪次郎とレミ子の今後など、ペンディング状態のアレコレも山盛り。これらは最終回までに視聴者が納得できる形で落ち着くのか。あれ、北大に行ったままの夕見子はどうなってる?

 そういえば、オープニングナンバーのタイトルにもなっている「優しいあの子」っていつ本編に出てくるのでしょうか。ずっと待っているんですけど……。

(上村 由紀子)

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