【日本ハム】全力で栗山監督の「俺が悪い」を忖度してみる

【日本ハム】全力で栗山監督の「俺が悪い」を忖度してみる

©文藝春秋

■「ユウキ対決」で見せた栗山監督の渋面

 オールスターブレイク直前のオリックス戦(13回戦)である。オリックス先発が西勇輝、ハムが斎藤佑樹の「ユウキ対決」などと見出しがついたりしたが、あんまりそんなのほほんとした気持ちになれなかった。

 前夜は0対11の大敗である。山崎福也に初完封勝利を献上してしまった。山崎福也とは何年もなじみなので、つい最後のほうは応援するような感じになっていたが、自分でも何で敵の初完投初完封を願っているのかよくわからない。まぁ、ヤケクソってやつだなぁ。いっそ完封してくれ、おらおら〜という気になることがある。

「ユウキ対決」はあんまり対決にも何にもなってなかった。斎藤佑樹、今季ワーストの4回8失点(11被安打)KOである。正直、4位は遠いと思った。オリックスとは投手陣も打線もかなり差がある。おかしいなぁ、去年の日本一チームなんだけどなぁ。

 印象に残ったのは2回裏が終わったときの栗山英樹監督の顔である。その回、斎藤は草野球なみの失態を演じ、ボロボロだった。スコアは0対1、先頭のマレーロこそ三振に切り取ったが、そこからT-岡田、小島脩平に連打を浴び、1死一、三塁のピンチをつくる。続く若月健矢の打球が当たり損ねの投ゴロになった。ラッキーと思った刹那、斎藤がホームに悪送球してしまう。三塁走者が生還して2点目献上。気落ちしたところを今度は駿太に2点三塁打。頭が真っ白になったと見えて、更に大城滉二の一ゴロのベースカバーを怠った。ため息が出た。あっという間に0対4。その直後の栗山監督の顔だ。

「渋面」というのはああいう顔だろう。ショックの色がありありと浮かんでる。何か考えてる風でもあるが、具体的には斎藤続投だ。つまり、打つ手なし。ちょっと声がかけられないというか、余人の立ち入れない表情だった。

 もし、そのダグアウトの「渋面」の図にタイトルをつけるとすれば『俺が悪い』じゃないかと思う。栗山監督は選手をかばって何でも「俺が悪い」「俺のせい」「こっちの責任」とコメントするので知られているが、実際には思いやりとか優しさとか、そんな生やさしい話ではないと踏んでいる。栗山さんには「すぐ涙ぐむ感激屋」の奥がある。たぶんすごくドライで、強烈な内面だ。「渋面」は頭もぐるぐる、感情もぐるぐるとぐろを巻いてる図だった。

■今季ナンバーワンだった「俺が悪い」

 考えてもみてほしい。「俺が悪い」というのは一種、立ち入り禁止と言ってるに等しい。その先の説明はない。立ち入り禁止してる以上は何かあるのだ。僕は非常に面白いことだと考える。ベタな言い方をすれば人間・栗山英樹に興味が尽きない。

 この試合の「俺が悪い」は今季ナンバーワンの「俺が悪い」だった。斎藤佑樹をかばうことが高じて、というのか何というのか、栗山さんの野球観の深奥まで届いている。これは考察に値することだ。全力で栗山監督の「俺が悪い」を忖度したい。炎上した斎藤佑樹に関するコメントは以下の通りだった。

「ボールは良かったけどね。でも、何度も言うようにボールがいいことが佑樹の特徴ではない。しっかりゲームをつくれる状況だったのは間違いない。チームの状況が悪いので、あいつが頑張ろうとしても流れをあいつから取ってしまっている。点を取られる流れをつくっているのは俺のせい」(栗山監督)

 ちょっと意味不明なところまで来ている。一般的な感覚では、斎藤佑樹は自ら失策し連打を浴びて失点しているのだから、他の誰かの責任とは言い難い。栗山監督はそう考えない。斎藤の良さは(ボールがいいことでなく)「ゲームをつくれる」ところだ。オリックス13回戦も「頑張ろうとして」おり、「しっかりゲームをつくれる状況だった」。それなのに今季ワーストの4回8失点(11被安打)KOだ。フツーはこの結果では「試合がつくれなかった」と評価されて仕方ないが、栗山さんは「チーム状況が悪いので」「流れをあいつから取ってしまっている」と見る。チーム状況さえ良ければ、斎藤も流れに乗り好投しただろうという論法だ。そして「チーム状況が悪い」のはもちろん「俺のせい」なのだ。

 この免責のロジックは強烈な自負心に裏支えされていなければならない。自分は佑樹の良さがわかっている。自分は佑樹の良さを生かせる。あるいは生かす責任と能力(あるいは権限?)を持っている。できないのは自分に何かが足りないからだ。何とかできるはずの自分が何とかできないのは自分がよくないのだ。

 考えれば考えるほどすごい。僕は揶揄してるのではない。今のファイターズをつくったものは栗山さんの個性じゃないか。結果を出しているじゃないか。半年、時計を戻せば「正力松太郎賞の名将」と皆、持ち上げていたじゃないか。ただの「すぐ涙ぐむ感激屋」が5シーズンでリーグ優勝2回、日本一1回を残せるとは到底思えない。

 僕がカギになると思うのは「チームの状況が悪いので、あいつが頑張ろうとしても流れをあいつから取ってしまっている」という箇所だ。これは斎藤佑樹一人のことを言ってるのではないだろう。誰にでも当てはめられるという意味で、栗山さんの野球観の一端だと思う。で、更に一歩踏み込むならば、斎藤佑樹は「チーム状況が悪い」ときに流れを変えられる選手ではないという評価もしている。栗山さんの内面のドライなところだ。

■大谷起用を決断した栗山監督

 話は飛ぶようだが、大谷翔平だ。本稿執筆現在は7月12日未明、今季初先発のオリックス14回戦前(本当は試合を見て書きたかったが、締切の都合で今、書いている)である。どんなことになるのかわからないが、僕は究極の「俺が悪い」をこの目で見るのだと思っている。結果を僕は問わない。勝つのに越したことはないが、負けてもどうということはない。栗山さんはもちろん大谷を「流れを変えられる選手」だと評価しているだろう。そのインパクトが残せれば上出来だ。

 僕の見立てはこうだ。栗山監督は腹をくくった。大谷はあまりに価値が高騰しすぎて皆、大事を取るあまり、このままでは宙ぶらりんにしかならない。思えば最初に骨棘の手術に踏み切るべきだったのだ。商品価値を損なうことを怖れ、誰も決断しなかった。大谷に関し、何らかの決断をするのはリスクだ。あらゆる意味で責任が追及される。だから皆、回避する。ずっとリハビリになる。壊したら大ごとなのだ。

 栗山さんは「誰も決断しないんだな」と思ったはずだ。で、そんなら「俺のせい」でいいやと考えた。1軍に置いて、直接本人と状態を確かめながら使っていく。DHで出塁したら代走を使う。投球練習はブルペンでやらせる。こんなのちょっと例がないと思う。上からの反逆だ。あるいは栗山監督と大谷本人、たった2名の反乱軍。

 僕はオリックス14回戦の投球を見ていない。栗山さんの決断がチームの士気にどういう影響をもたらすか、全体的なところはわからない。いいことばかりじゃないかもしれない。が、ここがポイントだ。今、ファイターズで起きていることはこう考えないと説明がつかない。

 附記 七夕飾りの写真を掲載したが、実は北海道は8月七夕が一般的だ。しかも、子供らが「ローソク出せー、出せよー」と歌いながら近所の家をまわりお菓子をねだる、かなりハロウィンっぽい行事なのだ(!)。

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(えのきど いちろう)

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