【ウエスタン・広島】今井啓介にどのようなエールを送ればいいのだろう

【ウエスタン・広島】今井啓介にどのようなエールを送ればいいのだろう

©時事通信社

※こちらは公募企画「文春野球フレッシュオールスター2017」に届いた約100本の原稿のなかから出場権を獲得したコラムです。おもしろいと思ったら文末のHITボタンを押してください。

【出場者プロフィール】suga(すが) 広島東洋カープ 47歳
 広島で生まれ育ち昭和50年代のカープ黄金期を知る、単なる野球好きのおっさんサラリーマン。愛猫家。帰宅のときにスポナビ一球速報で静かに一喜一憂。カープが勝てばCSフジテレビ「プロ野球ニュース」。たまに会社帰りに神宮球場でビール片手に観戦。一押しプレーヤーは高橋慶彦、というのも古すぎるんで丸佳浩。一押し投手は大野豊、というのも古いのでクリス・ジョンソン。

◆ ◆ ◆

■30歳・今井啓介の生き残りをかけたマウンド

 交流戦ホークスとの初戦の9回表、マウンドにあがる投手が今井啓介とわかり「おっ?」と思った。ちょうどその日ファームからあがってきたドラ1ルーキー加藤拓也が投げるだろう、と予想していたからだ。負けているが2点差だからゲームはまだわからない。ただ9回裏、向こうは絶対的クローザーのサファテだ。かなり敗色濃厚。となると勝ちパターンのリリーフ陣は投げさせにくい。ファームで中継ぎの調整をしていた豪腕でノーコンの加藤が、どのくらい投げられるか試すなら絶好の機会に思えた。前日にファームから上がってきた今井がマウンドにあがるとなると、ちょっと意味合いが変わってくる。今井の生き残りをかけた登板ともなるからだ。

 今井は高卒でプロ入りして12年目の30歳。ずっと若手のイメージがあるが、中堅からベテランに入るところだ。プロ入り通算8勝20敗1セーブ、防御率3.56。キャリアの中で長くをファームですごしている。1軍では2年ぶりの登板になる。昨年は大きな怪我をしていたわけじゃなく、1軍の枠に入れなかった。ちなみに2年前に1軍で最後に投げたときは、2年ぶりの先発だった。

 ドラフト同期には梵。当時は大学生+社会人と高校生でドラフトが別だった。高校生ドラフトで入団した他のカープ同期はすでに現役じゃない。その年の高校生ドラフトのカープ同期で一番活躍したのは通算19勝でローテに入ったこともある赤ハンカチこと齊藤悠葵で、3年前に引退している。指名順位は今井が2位で齊藤が3位だった。黒田2世なんて言われてた時期は期待も高かったと思う。2012年には一度完封勝利もあげている。それでも30歳で2年ぶりに1軍で投げる投手となると、どんな状況にせよ生き残りをかけた登板だ。

■無残だった2年前の登板

 今井は2年前のシーズンに開幕1軍メンバーに入った。(自分にはちょっと意外だったのだが)プロ入り初めての開幕1軍だった。でも開幕して1週間ちょっとで抹消されてしまった。その間に2回中継ぎで登板して無失点。チーム編成上の都合だった。開幕1軍の投手陣の中では最後方の位置だったのだ。

 その後、5月最後の方で1軍に再登録されて、中継ぎで登板を重ね、7月に2年ぶり先発の機会が回ってきた。中継ぎで登板を重ねた中での防御率は1.76だから悪くない。曲がりなりにも開幕1軍に入ったことと、中継ぎでは結果を出していたので、自分はほんの少し期待していた。前年より少し変わったかもしれない。10年もプロにしがみついてきた男だ。なんか結果を残してくれるんじゃないか。

 でも結果は無残だった。3回途中で4失点KO。すぐファーム行きになった。しかも無残な結果に続きがあった。8月にファームで先発して5回16失点被本塁打6。自責点と被本塁打のウエスタン・リーグワーストの記録を作ってしまった。正直言って、今井はオフに自由契約になるんじゃないか、と思った。今井は心が折れてしまったかもしれない、とも思った。

■12年プロで生き残ってきた選手の残酷な結果は見たくない

 こっちが勝手に心配していた今井の2015年オフの自由契約はなかったが、2016年は1軍で登板がなかった。5月に5日間だけ1軍にいたが、登板することなく落ちた。そして今年6月、ようやく1軍に上がる機会がきた。でも実績に乏しい中堅の中継ぎ投手に、1軍のゲームで投げる機会ができるかはわからない。少し前、同じように1軍にあがった27歳の佐藤祥万は、2週間1軍にいたが登板機会がないままファームに戻った。

 今井には、ホークス戦の9回表に登板機会が巡ってきた。ドラ1の加藤かと思ってたけど。マウンドにあがった今井を見て、解説していた前監督の野村謙二郎が「今井、ちょっと腕を下げましたね」と指摘する。久しぶりにみた今井のフォームはスリークォーターになっていた。野村謙二郎は監督をしていたとき、今井に「なんとか1軍定着してほしい」と期待していたはずだ。

 自分は中継を観ながら、SNSの実況トピで何か書き込もうか、と思って悩んでしまった。まー「頑張れ今井!」でいいんだが、これ以上なにを頑張れ、と言ってるのか。こっちが言わなくても今井は頑張るしかない。「頼んだぞ、今井」と書き込んだ。でも今井には悪いが、こっちもそこまで信頼していない。今井がいないと、このあとのシーズンが厳しい、とも思ってない。ただ、いい投球をしてなんとか生き残って欲しい。12年プロで生き残ってきた選手だ。残酷な結果は見たくない。この登板が現役最後の1軍登板になる可能性もあるな、と思っていた。

 今井は先頭打者を抑えたが二人目にヒットを許した。次は送りバントで2アウト2塁。あと1人だが得点圏にランナーがいる。もう1点もやりたくない展開だから、1点でも取られると今井の印象はかなり悪くなる。打席には長谷川で次は松田。松田に回して長打というのが最悪だ。

 長谷川には四球。2アウト1塁2塁。厳しい。解説の野村謙二郎がしきりに「もう少し三遊間を閉めたほうがいい」と言う。三遊間を転がって抜ける打球で1点入ることを心配しているのだ。いま見た今井の球筋だと、三遊間に転がりやすい気がすると言ってる。もしかしたら野村謙二郎も、ここでの1点がゲームの行方だけでなく、今井のキャリアに影響することを考えてるのかもしれないな、と勝手に思った。

 松田は空振り三振で、今井はなんとかゼロに抑えた。ホッ。結局、ゲームには負けてしまったが。今井啓介にどのようなエールを送ればいいのだろう。もちろん頑張って欲しい。でももう長く頑張ってる。最後の悪あがきかもしれないスリークォーターがうまくハマることを祈ってる。今井のキャリアに幸あれ! そう願ってるのは間違いないんだ。

◆ ◆ ◆

※「文春野球フレッシュオールスター」実施中。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイトhttp://bunshun.jp/articles/3323でHITボタンを押してください。

■その他の出場コラム
【ウエスタン・オリックス】突然消えたマスコット「八カセ」への異常な愛情
【ウエスタン・広島】今井啓介にどのようなエールを送ればいいのだろう
【ウエスタン・広島】丸佳浩に花丸を! 『勝浦カットサロンまる』にて
【ウエスタン・中日】大事なことはすべて星野仙一様に教わった
【イースタン・ロッテ】いつまでも走れ、カルロス・ムニス
【イースタン・DeNA】1998年10月8日、池袋東口で
【イースタン・DeNA】35歳会社員の私が、なぜ須田幸太を応援したくなるか
【イースタン・ヤクルト】戸田球場に響き渡るブルペン捕手・小山田貴雄の声

関連記事(外部サイト)