40歳、ニート、独身、603試合連続応援……ホークスに人生を捧げた男の生き様

40歳、ニート、独身、603試合連続応援……ホークスに人生を捧げた男の生き様

九州鷹狂会代表の吉原秀貴さん ©ノボせもん

 皆さんこんにちは! 今回代打で2回目の出場となりました。福岡を中心に、なべとまーちん二人でお笑いコンビを組んでおります「ノボせもん」と申します!

 そんな我々が2016年シーズン、ホークス戦全143試合行き、ホームランボールをキャッチするというテレビの企画をやらせて頂きました。全国各球場はもちろん、地方球場もすべて行かせて頂きました。貴重な経験でした。ただ、正直キツかった! 移動疲れで体がバキバキになるんです。

 以前、今宮健太選手に「移動めっちゃきつくないですか? さらにそこから試合まであるなんて!」と訊ねると、「僕たちは小さいころから鍛えてて、体が違いますから大丈夫ですよ!」と爽やかスマイルでご返答。さすがプロ! 素人の変な質問、失礼しました。やっぱりプロアスリートは体の作りがちがうんやね〜。我々も30歳過ぎて、近頃は運動もろくにしてない。そりゃ〜キツイばいね〜。

 あれ? ちょっと待てよ。我々以外にも全試合行ってる人がいたなぁ。そう、その人こそが、九州鷹狂会代表の吉原秀貴さん。

 通称・団長!(団長って雰囲気だったので勝手にそう呼ばせて頂いてます!)

 応援団歴25年。一見強面で頑固そうですが、実は照れ屋さんで、ジョークが大好きで、いがぐり頭が可愛くて、いつでもどこでも短パンでクロックススタイルの40歳。(関係性があるのでこんだけ言っても大丈夫なはず!)

 あの年、我々は団長といつも一緒でした。団長が入っているホークスの応援団は全国に16団体あり、九州だけでなく関西と関東にもあります。その中でも、団長だけが唯一2016年1シーズン全試合を回った応援団員なんです!

 さらに! 後にも先にも1シーズン全試合を回った応援団員は団長だけ!

 さらに! さらに! それどころか、603試合連続応援記録保持者!(普通にすごっ!!)

 さらに! さらに! さらに! 仕事をしておらず、応援団一筋の自称ニート応援団長!(最後拍子抜け!)

 なぜ、そこまでホークスに人生を捧げているのか聞くべく、応援団席に話を聞きに行ってまいりました!

■なぜホークスに人生を捧げているのか

ノボせもん(以下・ノ)「団長お疲れさまです!」

団長(以下・団)「あら! スターがわざわざこんなところに?」

ノ「スターだったら未だにバイトしてないですから!」(芸歴10年ですがまだまだバイトしているノボせもんです)

 お会いするといつもこんな感じで団長ジョークから会話が始まります。さて、インタビューと思ったら、

「吉原さ〜んお疲れさま! はい差し入れ〜」「吉原さん! 子供も連れて来た! はい差し入れ!」「吉原さん見ると元気なる〜! はい差し入れ!」

 ファンの方が引っ切り無しに挨拶に来るんです。団長、人気者! 差し入れはみんなお茶か水!

団「応援はむっちゃ喉乾くけんありがたいとよ〜。家でも飲めるし嬉しい!」

 応援団というのは時には大きい声出してファンの応援をリードしたり、時にはラッパ、時には太鼓と見てるだけでもとってもハードなんです。団長に会いに来るホークスファンは口々に言います。

「吉原さんがおらんとホークスの応援は始まらんもん!」「吉原さんは一度会った人の事を全員覚えててくれるけん嬉しいとよ」「吉原さんはなぜか子供とおばちゃんにしかモテんもんね!」(最後いらんやろ!)

 と団長はホークスファンにとっても、なくてはならない存在なのです。なんならホークス戦に来るのは団長に会いに来る為という方も。これが長年ホークスを応援し続けてきた男の人望です!

ノ「団長は何でホークスの応援団になったんですか?」

団「元々子供の頃は地元球団がない時代で、でも親の影響で野球が好きで、89年にホークスが福岡に来るってなったけん、こりゃ応援せんといかんばいということでホークスファンになったとよ。当時小学校3年生でめっちゃうれしくて行ける時は試合見に行って応援した! そうしていくうちに応援団の人とも仲良くなって、高校生になった時に、応援団の人に誘われたけん入ったとよ」

ノ「高校はちゃんと行ったんですか?」

団「高校は皆勤賞!」

 え? 現在40歳でニートの団長の事だからてっきりこの時から学校おろそかにして、応援団やってたと思ってました! こりゃ失礼しました!

団「基本的にホームの試合は全部行って、夏休みにはビジターも行ってた! そして高校卒業して専門学校にはちゃんと行ったんよ!」

ノ「でも、専門学校まで行ったのになぜ40歳ニート応援団長が誕生したんですか?」

団「専門学校2年生の時のバリバリ就活時期にあの出来事が起こったんよ!!」

■40歳ニート応援団長の誕生秘話

 そう! 99年福岡ダイエーホークス初優勝!

 街は一体となって盛り上がり、ホークス祝福ムード一色。この時からホークスが常勝軍団となっていきました。

団「優勝した瞬間ももちろん現場で応援しとって、周りや球場がどんだけ盛り上がってたかわからんくらい、泣いて泣いて喜んだ! 最高やった!」

 ホークスファンの人はもちろん、この団長にとっても小さいころから応援してきたホークスの初優勝を応援団として見届けてとてつもなくうれしかったのが、お話を聞いてる時の興奮具合からもしっかり伝わってきました。なんならちょっと団長の目が潤んでました。

団「ホークス初優勝の次の日が大事な就職試験の日やったんやけど」

ノ「まさか?」

団「飲み明かして、二日酔いで行かなかったー!(笑)」

ノ「笑いごとじゃないですよー!」

団「そこで改めて思ったとよ、ホークスがやっぱり好きやし、これからも応援したい! だから親に、好きな事させてくれってお願いした!」

 ふと自分も芸人になりたいと親に言った時のことを思い出し感情移入。団長の親もホークスファンだったのもあり、賛成してくれたみたいです。

ノ「そこからホークスに人生を捧げる生活が始まったんですね!」

団「そうやね! まぁ恥ずかしい言い方するとね(笑)」

 そこから40歳まで一度も就職せずにホークスの応援団一筋という、ニート応援団生活が始まったのですが、我々がやっぱり気になるのはお金。

■お金のやりくりはどうしているのか

ノ「全試合回る為には結構な額がかかるはず、年間いくらかかって、どうやってやりくりしてたんですか?」

団「いくらかかるか計算したことない! 計算して額見てしまったら行けんくなるやろ〜」

 笑いながらそう話してくれた団長。団長らしい答え!

団「若いころは、おじいちゃんおばあちゃんがかわいい孫のやりたい事やけんと言ってくれてお小遣いもらったりしてたけど、いつまでもそういうわけにはいかんけん、今ではオフシーズンに日雇いのバイトしてお金ためとうとよ。移動手段もなるべくお金かからんように、夜行バスで移動したり、知り合いの家に泊めさせてもらったりしとるけど、体力的にはめちゃくちゃしんどいよね〜年々きつくなってる!」

 日雇いで? 夜行バスで? 40歳でその生活はそれはキツイはず! 想像しただけでも腰が痛くなる〜。

ノ「何でそこまで人生捧げてまでホークスを応援し続けるんですか?」

団「ホークスが好きやけん!」

 シンプルーーー!! 実にシンプルな答え! 勝手にドラマティックな答えが返って来ると構えちゃってました。すいません!

ノ「じゃあ団長の今後の夢や目標は?」

団「特にない」

 えーー? こんだけ長いこと応援団やって来られた団長の夢! めちゃくちゃ前のめりで聞いたのに、無いんですか?

団「今を一生懸命生きる事しか考えとらんね。ただホークスが好きで、ホークスに勝って欲しくて、お客さんにも楽しんでもらいたいけん、僕はホークスを応援し続けるだけ。もちろん周りの人の助けがあってやれてるから感謝の気持ちは忘れずに」

 ただホークスが好きなだけ。本当にそういう事なんだなぁと思いました。好きに理由なんていらないし、そこまで好きで魂燃やせるものがあるというのはかっこいい! 我々なんかは、先の事先の事を考えすぎて行動が遅くなったりすることもあるけど、団長は目の前にある事に一生懸命ぶつかっていき、やりたい事があればすぐに行動に移す。とってもエネルギッシュな男でした。

 団長のホークスに対する愛と、行動力には感銘を受ける事ばかりでした。だからこそ、周りの人も会いたいと思うし、協力してあげたいと思うのだと思います。福岡、いや全国一のホークスのぼせ吉原秀貴さん!

■団長が選ぶ印象に残ってる試合

 最後に、25年間応援団として色んな試合を見て来た団長に「団長が選ぶ印象に残ってる試合!」を聞いてみました。

団「難しすぎやろ! 1999年のホークス初優勝の試合もいいしなぁ。2006年日ハムとのプレーオフで斉藤和巳投手が打たれて呆然としてショックすぎた試合もしっかり覚えてるし、2014年のオリックスとのシーズン最終戦でマッチがサヨナラヒットで優勝決めた試合もいいしな〜」

 確かにどの試合もいいです! そんな中、団長がベスト試合に選んでくれたのは?!

団「決めた! 2014年3月1日のホークス対楽天のオープン戦!」

 え? 何で? 何か劇的な試合だったっけ?

団「その試合ももちろん応援して、ホークスが勝った! その試合の後、友人に誘われて、バタバタ大阪に行って、サッカーのガンバ大阪と浦和レッズの試合で、レッズの応援をした。そしたらレッズも試合に勝ったんよ! 応援団のダブルヘッダーで、見事応援したチームが1日で2チーム勝ったけん! それが僕のベスト試合やね!」

 最後まで団長らしい答えが返ってきました。そして、この吉原秀貴というお方は、どこまでも応援団なんだなぁと認識させられました。

 普段はお茶目な団長ですが応援してる時の背中めっちゃかっこいいです! しかし、最近では応援団をやる人が年々減ってきています。少しでも応援団に興味があるという方、もしくは、40歳独身の熱い男吉原さんの奥さん候補に我こそはという独身女性! 自薦他薦は問いませんのでどちらもお待ちしております。

ノボせもんのホークス漫才

◆ ◆ ◆

※「文春野球コラム ペナントレース2019」実施中。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイト https://bunshun.jp/articles/12585 でHITボタンを押してください。

(ノボせもん)

関連記事(外部サイト)