西安餃子は予言する――ライオンズ選手の退団年度とメニューとの“奇妙な関係”

西安餃子は予言する――ライオンズ選手の退団年度とメニューとの“奇妙な関係”

メットライフドームに出店している西安餃子 ©浮間六太

※こちらは公募企画「文春野球フレッシュオールスター2019」に届いた約120本を超える原稿のなかから出場権を獲得したコラムです。おもしろいと思ったら文末のHITボタンを押してください。

【出場者プロフィール】浮間 六太(うきま・ろった) 埼玉西武ライオンズ 51歳。なにがなんでも球場で試合を観たい現場主義者で、年間100試合程度ライオンズ戦を生観戦。そして観戦した試合は全部ブログに書かずにいられないのでした。2017年より所沢のポータルサイト「所沢なび」でライター活動を開始。2018年にはTOブックスより著書「ライオンズファン解体新書」発売。

◆ ◆ ◆

■西安餃子、その謎

 メットライフドームの延々と続く外周通路の上り坂を山に例えるならば、その七合目付近に謎深き西安餃子はある。

 西安餃子。首都圏を中心に展開する、中華料理のチェーン店。そのうちメットライフドームに出店している店舗は、小型店ゆえに餃子と麺類にメニューを絞っている。そしてこの店、汁なし担々麺がやたらと美味い。正直、餃子より美味い。ピリ辛の肉味噌は肉の旨味がよく出ていて美味いが、もっちり食感の中華麺が何より絶品である。美味い。

 ライオンズは開幕戦や交流戦、限定ユニや季節などに合わせて期間限定グルメを企画している。そんな中で西安餃子は、店名に「餃子」とあるにも関わらず、それらのグルメ企画では必ずと言っていいほど麺類を販売してきた。よほど麺に自信があるのだろう。

 一時期はやたらと麺をチーズやトマトと絡めたメニューばかり開発、餃子からも中華からも離れてシルクロードを西へ西へ、イタリア目指して謎の暴走を繰り広げていた。近年ようやっと進行方向を東へ修正、中華料理店としての本分を取り戻しつつあるが、今回迫りたい西安餃子の謎とは、そのことではない。西安餃子の大いなる謎。その名は「選手プロデュースグルメ」。

■西安餃子、そのプロデュースグルメ

 メットライフドームでは、様々な店舗がその店オリジナルの選手プロデュースグルメを発売している。ご多分に漏れず、西安餃子でもプロデュースグルメを扱っているのだが、この8年間で扱ってきたプロデュースグルメの数が5つと、他店に比べてやたらと多い。

 具体的なメニューと選手名を挙げよう。

・タイタイ麺 (藤田太陽)
・亮磨麺 (野上亮磨)
・ひちょりのチョリ麺 (森本稀哲)
・岸孝之のエビとパクチーの塩味フォー (岸孝之)
・雄星のスタミナ五目麺 (菊池雄星)

 だから何だ、どこが謎なのだ、と思われるかもしれない。では、これらのメニューに販売年度と選手の在籍年度を加えてみたらどうだろう。

・タイタイ麺 2010−2012 (藤田太陽 2009?2012)
・亮磨麺 2013−2014 (野上亮磨 2009?2017)
・ひちょりのチョリ麺 2015 (森本稀哲 2014?2015)
・岸孝之のエビとパクチーの塩味フォー 2016 (岸孝之 2007?2016)
・雄星のスタミナ五目麺 2018 (菊池雄星 2011?2018)

 メニューの販売終了年度と、選手のライオンズ退団年度が同じケースが、5件中4件。唯一の例外である野上投手も、2017年オフに巨人にFA移籍している。

 プロデュースグルメを出すような人気選手だって、いつかはチームを去る時が訪れる。なにが謎などあるものか。あなたはそう思うかもしれないし、それはもっともな意見だ。しかし、藤田、野上両投手が、プロデュースグルメ販売開始からそれぞれ2年、4年後の退団であったのに対し、森本稀哲以降は発売した年のうちに3選手全員が退団している、という事実をあなたはどう受け止めるだろうか。

■西安餃子、その影響力

 森本稀哲、岸孝之、菊池雄星。引退、FA、メジャー挑戦と理由は様々だが、いずれの選手もプロデュースグルメ発売の数か月後にライオンズを離れている。

 つまり、まとめるとこういうことだ。

「西安餃子でグルメメニューをプロデュースした選手は、全員ライオンズを退団する。しかも、発売から退団までのスピードは加速しており、直近三例においては、皆数か月後に退団している」

 なぜ西安餃子に限って、このような異常事態が起こるのか? いくつかの仮説を挙げてみよう。

@西安餃子は、チームを去る選手を当てることのできる、ある種の予知能力がある
A西安餃子は、選手本人から「チームを去る予定なのだが、最後にグルメをプロデュースさせてほしい」と希望されるケースが多い
B西安餃子は、選手を退団させる磁場が発生している
C偶然

 Cの抗いがたい強烈な説得力に、つい納得してしまいそうになるところをグッとこらえ、敢えて他の仮説を掘り下げてみたい。

 まず@だが、球団を去る選手が分かっているならば、むしろその選手のプロデュースグルメの取り扱いを避けるのではないだろうか。これまで西安餃子から販売されたプロデュースグルメは、いずれも好調な売れ行きを示していた。特に岸や雄星のメニューには、日頃同店では見られない行列が頻繁に見られていた。せっかく手間隙かけてヒット商品を開発販売しておきながら数か月で手放す、などという愚行を、誰が進んで行うだろうか? そう考えると、@はありえない、という結論になる。

 次にAであるが、かつて選手としてライオンズに在籍した石井一久氏が、試合前に売店にカレーや串焼きを買いにくるなど、意外と選手は球場で食事を購入しているようである。選手の中に西安餃子の強烈なファンがいたって不思議ではない。「最後の最後に、自分が本当に食べたかったメニューを出してほしい」。そう希望する選手もいることだろう。稀哲が「西安餃子の麺に麻婆豆腐をかけたグルメを応援してくれたファンのみなさんに食べてもらわないと、現役を辞めるに辞められない」とか、岸が「寒い仙台より、緑に囲まれたメットライフドームこそ、パクチーを大量に使ったグルメをプロデュースするのにふさわしい」と考えるのは有り得る話である。

 Bについて、西安餃子は1、3塁側の同じ位置に店舗を一軒ずつ構えている。つまり、メットライフドームのグラウンドは二つの西安餃子に挟まれている、ということになるのだ。このグラウンドの両側の西安餃子から出る、何らかの何かが選手になんだかんだ影響を与えている、とは考えられないだろうか?

 残念ながら筆者は科学に疎いため、この説を立証する術を知らない。しかしいつしか、この仮説が日の目をみる瞬間が訪れるかもしれない。すべてはその時に明らかになることだろう。

■西安餃子、その予言

 以上に挙げた@〜Cは飽くまで仮説に過ぎない。現在我々が解っていることは、西安餃子からプロデュースグルメを出した選手達は続々とチームを離れていく、という事実だけである。そして、その事実から危惧されることがある。それは、「今後、西安餃子からプロデュースグルメをリリースした選手は、早々にチームを去るのではないか」ということである。そんな状況下、西安餃子から4月に発売された新しい選手プロデュースグルメがファンを震撼させる。

秋山翔吾選手プロデュースグルメ「SHOGO MEN!!!」

 3年契約の終わる2019年オフ、秋山選手がメジャー移籍を希望するのか否か。かねてからの懸案に、ニュースでもネットでもなく球場の売店から決定的な情報を突き付けられる格好になったファンは、涙を流しながら具だくさんでボリューム満点の中華麺に舌鼓を打っている。悔しい、でも美味しいって感じちゃうズルンズルン(麺をすする音)。

 ともあれ、中心選手の動向の鍵をいつの間にやら握ってしまった西安餃子を、我々はこれからも注目し続けざるを得ない。

◆ ◆ ◆

※「文春野球フレッシュオールスター2019」実施中。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイト https://bunshun.jp/articles/12775 でHITボタンを押してください。

(浮間 六太)

関連記事(外部サイト)