ほぼ半分!? ベイスターズには神奈川の地名の選手が多すぎる説を追え

ほぼ半分!? ベイスターズには神奈川の地名の選手が多すぎる説を追え

ドラフト1位ルーキーの上茶谷大河 ©時事通信社

※こちらは公募企画「文春野球フレッシュオールスター2019」に届いた約120本を超える原稿のなかから出場権を獲得したコラムです。おもしろいと思ったら文末のHITボタンを押してください。

【出場者プロフィール】女里山桃花(めりやまももか) 横浜DeNAベイスターズ 3x歳。「ワカコ酒」などの脚本家。6年前、野球素人からベイスターズのファンになる。西澤千央さんのコラムの虜となり文春野球学校・西澤ゼミに参加した西澤チルドレン。先日の代打で指名され、図に乗って応募しました。1歳になった子供はモーガンと同じ誕生日。

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「横浜DeNA  上茶谷 大河 投手 東洋大学」

 ドラフト会議の画面に映された『上茶谷』という珍しい苗字。

「ああ、またベイスターズは神奈川っぽい名前を取ってる」

 生まれたばかりの子供をあやしながらテレビを見ていた私は、こともあろうに『上茶谷』を横浜市営地下鉄・上永谷駅で横浜市民に知られる、横浜市港南区の『上永谷』に空目してしまいました。

 すぐ『かみちゃたに』という音声が聞こえたので拍子抜けしましたが、どこか自分の中で『上茶谷』を『上永谷』に間違えたことを誇らしく感じていることに気づきました。

「あ、私、なんか、神奈川県民っぽい」って――

■?近くて、遠い神奈川

 小さな頃、私は『神奈川県』に密かな憧れを抱いていました。東京は窮屈だし地方出身でも幅を利かせられるイメージがありますが、神奈川の人は都会でありながらも、地に足がついている感じがします。開放的で異国情緒をも感じさせるオシャレさを持ち、加えてスラムダンクなどの好きな漫画やドラマの舞台も神奈川である事が多く、憧れはさらに加速しました。

 私が生まれ育った静岡県の裾野市は箱根に隣接しているのですが、そこに行くには峠を越えなければならず、神奈川はえらく遠い場所であると誤認していました。しかも、東京には親の買い物等で連れて行ってもらう機会はありましたが、神奈川はいつもスルー。足を踏み入れることも叶いませんでした。まさに、近くて遠い桃源郷、神奈川県――

「二俣川行かなきゃ」「有隣堂」「いつも工事してる横浜駅」

 18歳で上京するも、通う大学は埼玉にあったため、神奈川は遠い地に変わりませんでした。しかし、同級生にいたネイティブ神奈川ンが口にするワードの数々は私の胸をときめかせました。その後、町田にいる友人を訪ねた際、はからずも相模原市に足を踏み入れることになったのですが、その時の感動たるや……!

 思えば、私が横浜DeNAベイスターズを好きになったのも、そんな神奈川への憧れからなのかもしれません。暇だから野球観戦しようとたまたま行ったハマスタの試合で虜になり、すぐファンになった私。スタジアムに行くなら、当時住んでいた中目黒に近い、神宮でもドームでもよかったはずなのに……。

 その後、私は野球がきっかけで知り合った友人の紹介で、横浜在住と称する野球ファンの男性と出会い、結婚し、彼の住む横浜(戸塚)に引っ越してきました。

 野球好きになったおかげで、ついに、私は、念願の神奈川県民というステイタスを手に入れることができたのです。

■ベイスターズは神奈川の地名の選手を優先して採っている説

 私がファンになった2013年は、多村仁志選手や土屋健二選手がトレードされてきたりと、巷で「横浜高校コレクション」だと噂されていた時期でした。

 しかし、むしろ私は「神奈川の地名コレクション」をしているのではないかとずっと思っていました。

 三浦市、加賀町警察署、石川町、鶴岡八幡宮だってあるし、田園都市線には宮崎台駅と梶が谷駅があります。箱根駅伝5区にも山アという通過点があり、小田原には桑原という地名もあるのです。

 その後入団した選手も愛甲石田(駅)、山下(公園)、砂田(伊勢原の上砂田交差点)、中川(都筑区)、中井(パーキングエリア)……数えたらきりがありません。

 そして極めつけは大和選手。そう、東名高速の大和トンネルがあることでおなじみの大和市の大和、FAの噂が出た時からベイスターズに来ると思っていました。

 余りにも目につくので、一つ一つ選手名と地名をリスト化したところ、全選手74人中(6/12現在)、37もの選手名が神奈川の地名と一致していました。まさに半数が神奈川の地名を持つ選手だったのです。

 私は、いつでも神奈川の街を歩いたり、電車に乗ったり、運転したりするたびに探しています。向かいのホーム、路地裏の窓、急行待ちの踏切、交差点でも、夢の中でも……。山崎まさよしさんの歌と違うところは、難なくベイスターズの選手の名前が見つかることです。

■上茶谷は上永谷ではなかったけど

 横浜に居を構え、ほどなくして子供が生まれました。出産して気付いたのは、少子化と言えど、周りには多くの赤ちゃんが目に入るということです。独身時代は気にも留めていませんでしたが、子どもが世の中にこんなに多いとは意識していませんでした。

 調べると、これは『カラーバス効果』と言って、『自分が意識している情報が自然と目に飛び込んでくる』という心理現象なのだそうです。

 ある日、ボロ負けのヤクルト戦を見ていた時、「藤沢に石川山田交差点ってあったな」と気づき、なにげなくヤクルトの選手名と神奈川の地名の一致度を調べてみることにしました。するとどうでしょう、地図サイトで検索するだけでも71選手中45選手名が神奈川の地名と一致していたのです。

 しかも、ベイスターズ側は横『浜矢』向郵便局や洋『光』台も数に入れるなど甘々基準の37選手のため、厳密な判断をしたヤクルトの調査結果と比べれば、白黒ははっきりしたものでした。その時の試合も当然負けました。

 つまり、ベイスターズが神奈川ゆかりの名前の選手を集めているということはただの「気のせい」でした。

 しかし、私はそれでいいのです。ベイスターズの選手の名前が神奈川の地名とすぐに結びついてしまうほど、自分がこの土地に染まっている事実があるのですから。
上茶谷選手だって、上永谷選手に見えるくらいに、私は神奈川県民、横浜市民のベイスターズファンと胸を張って言えるようになれたのですから。

 さて、これから夕食の準備をしなければ。今日も、そうてつローゼンで買い物してから、クリエイトにオムツを買いに行きましょうか。

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(女里山 桃花)

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