夏井いつき先生と梅沢名人 俳句バトルが小気味よい――亀和田武「テレビ健康診断」

夏井いつき先生と梅沢名人 俳句バトルが小気味よい――亀和田武「テレビ健康診断」

梅沢富美男

 俳句って、なんだかおもしろいな。この何か月か、『プレバト!!』を見ながらぼんやりそう思う。

 いや、俳句それ自体に興味を覚えたのかまではわからない。芸能人やクイズ王たちがつくった句を添削する夏井いつき先生のコメントがじつに小気味よく、ずばりずばり本質を衝く夏井さんの話芸の虜になっているという気もする。

 さらに生徒の梅沢富美男のキャラも絶品。この人の凄さは以前から気づいていたから、彼が詠んだ句の出来の良さ、抜群のセンスには驚かない。でもね、夏井先生とのトークが、もう最高なの。「おっちゃん、何度いったら、わかるの」と叱られ、「俺を名人と認めないで、この番組は成り立つの?」とやり返すバトルはいつ見ても飽きない。

 ゲストたちの句そのものは、正直どうでもいい。キスマイ、横尾渉が“ゴールデンウィーク”をお題につくった句は「10日間おろすの忘れ春眠(しゅんみん)」。

 すぐに名人、梅ちゃんが「何をおろすか、わからない!」と突っこむ。先生も「肝心なことを書け。おっちゃんが正しい」と反応して添削開始。横尾は銀行で現金をおろすの忘れてた間抜けさを詠んだという。

 だったら最初に現金を出せばいい。「現金おろすの忘れ春眠十日間」。ほら、なんとか格好がついた。

 自信あふれる梅沢の句が紹介される。「手放せぬティッシュの甘く養花天(ようかてん)」。花粉症がまだ治まらない彼のマネージャーが、保湿ティッシュは微かに甘い匂いがするという。曇り空をさす養花天という季語でまとめ、さあどうだと、おっちゃんはニッコニコだ。

 間髪入れず「必要な情報を入れよ!」と先生が一喝する。保湿ティッシュって書かなきゃ、わからないでしょ。「名人が保湿なんて書けないですよ」と、グズる梅沢。「名人だから、これぐらい書きなさい!」

 もう、素っ晴らしいたらない息の合った掛け合いだ。おヒネリ渡したいよ。夏ちゃんが「保湿ティッシュ甘くあまやか養花天」と添削して、梅沢の意も汲みつつ姿よい句になり、ああ、プロって凄いねえ。

 クイズ番組でお馴染みの“東大王”たちも、慢心があったか意外と凡庸な句をつくり、失笑を誘う。そんななか、鈴木光ひとりは抜群の安定性を誇る。「蹲(つくばい)のあめんぼ揺らす零雨(れいう)かな」と、難かしい語を使い、嫌味ぎりぎりの秀作を詠む。

 東大、美少女、清楚。三拍子揃った鈴木光も番組に華を添えている。しかしそこは夏井さん。「俳句はこの程度書いてりゃ、先生OKって言うからいいかなって少し見えた句になっております」とピシャリ。視聴者が無意識に抱く東大俳句娘への違和感も、きちんと指摘するバランス感覚に脱帽だ。先生もおっちゃんも光ちゃんも名役者だ。

INFORMATION

『プレバト!!』
MBS/TBS系 木 19:00〜
https://www.mbs.jp/p-battle/

(亀和田 武/週刊文春 2019年7月11日号)

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