【阪神】今の阪神には新庄剛志が足りない――亀新コンビ12年ぶりの再会に思う

【阪神】今の阪神には新庄剛志が足りない――亀新コンビ12年ぶりの再会に思う

©文藝春秋

 去る7月16日(日)、大阪のMBSテレビで『With Tigersスペシャル 強い虎を追っかけタイガース』という2時間特番が放送された。目玉企画のひとつは、あの新庄剛志のVTR出演。同じく阪神OBの亀山つとむが、新庄と12年ぶりの再会を果たすという。

 亀山と新庄といえば、やはり1992年の鮮烈な活躍が思い出される。前年まで5年連続Bクラス(うち最下位4回)に沈んでいた暗黒時代の阪神が、彼らを中心とする若虎たちの活躍によって、2位に躍進した年。あの年、それまで無名の若手だった亀山&新庄の“亀新コンビ”は攻守で溌剌としたプレーを見せ、絶大な人気を誇ったものだ。

■幻滅していたはずの新庄の姿を、頬をゆるませながら眺める心理

 そんな亀新コンビ、とりわけ新庄についてだが、実を言うと最近の私は彼に少々幻滅していたのだ。以前は新庄特有の型破りな言動や、みるみる黒光りする怪しい風貌、また引退後は球界と距離を置いた奔放な生活を謳歌するところなども、それもまた宇宙人・新庄らしさだと思って寛容に受け止めていたのだが、それを何年間も見せ続けられると一種のマンネリズムや、野球界から遠ざかっていく寂しさを感じてしまう。

 あの新庄も早いもので引退して十年以上が経過した。現在45歳、もう若くはない。彼の強烈な個性は若かったがゆえに輝きを放っていたのであって、その若さを失って以降も相変わらずの調子でいるなら、それは途端に痛々しさを帯びてくる。

 私としてはそんなマイナス感情を抱き始めた矢先の同番組だった。だから、今さら亀新コンビの再会と煽られても……なんて冷めた気持ちになるのかと思いきや、現実はそうではなかった。最近の新庄には幻滅していたはずなのに、いざ彼が一般のバラエティ番組ではなく阪神特番に出演すると聞くと、一気に胸が高鳴った。あの新庄が野球について、とりわけ阪神について言及する。それを想像しただけで、単純に興味がわいたのだ。

 実際に同番組を見ると、新庄の住むバリ島で亀新コンビが再会の抱擁を交わし、その後は「亀山×新庄」の対談を軸に進んだ。その中で新庄の口から久しぶりに出た野球の話というのは、1995年の引退騒動であったり、外野守備やグラブへのこだわりであったり、まあ、とりたてて目新しいものはなく、過去に一度は聞いたり読んだりしたことのあるネタばかりだった。あとは、阪神を優勝させる秘策はファンの声援だとか、そういう類のバラエティ向けサービストーク。深いものは特になかった。

 しかし、それでも私は無性にうれしかった。刮目することはなかったけど、ずっと頬をゆるませながら映像を眺めていた。あの新庄が阪神のことを語っているだけで、やけに胸が熱くなった。引退後、あえてなのかなんなのか、とにかく野球に(特に阪神に)触れることが少なかった新庄が縦縞のユニホームを着て、かつての盟友・亀山つとむと約20年ぶりにキャッチボールをするシーンもあった。新庄はいつもの口調で「マジ、超うれしかった」と言った。本当に楽しそうだった。

■なんだよ新庄、やっぱり根は野球人じゃないか

 当たり前のことかもしれないけど、どうやら新庄は今でも野球が好きみたいだ。それを再確認できた気がして、私は妙に安心した。なんだよ新庄、いつのまにか下世話なタレントになったって思っていたけど、やっぱり根は野球人じゃないか――。

 結局のところ、新庄に対する幻滅とは、彼の大ファンだったからこその愛情の裏返しなのだろう。新庄と阪神の薄れゆく関係性が、寂しくてたまらなかったのだ。

 かくして、私の中に懐かしい感情がよみがえってきた。

 時は90年代、茶色い髪をなびかせながら甲子園を駆け回る赤いリストバンドの男。確実性はないけれど、わけのわからない勝負強さと天性のパンチ力で、しばしば印象に残るホームランを放った白い歯の男。へんてこりんな打撃フォーム、超人的な守備範囲、MLBでも注目された“狂”肩……。とにかく虎のプリンスと呼ばれていたころの新庄には独特の華があった。暗黒時代の阪神は笑っちゃうくらい弱かったけど、私はダメ虎の真ん中で異彩を放つ新庄が本当に好きだった。彼の圧倒的なスケール感と得体の知れない魅力にいつもワクワクしていた。そう、ワクワクである。新庄はワクワクする選手だった。

■ロジャースや西岡もいいけれど、やっぱり若虎にワクワクしたい

 だからこそ、同時にこうも思った。

 今の阪神には、新庄みたいなワクワクが足りないのだ。

 糸井嘉男をFAで獲得し、その糸井が故障離脱した今はロジャースや西岡剛といった若手以外の新しい風に在阪マスコミが食いついている。チームが勝利を目指す以上、それは無理からぬことかもしれない。西岡は起爆剤だと言われたら、まあ確かにそうだろう。

 しかし、個人的にはそこにワクワクしないのだ。やっぱり高山俊と大山悠輔のドラ1コンビ、原口文仁や中谷将大といった大砲候補など、昨季のスローガン『超変革』の路線が目立ってこそ、かつての新庄を見るような胸の高鳴りを覚えるのだろう。

 今季からスローガンが『挑む』に変わったが、これが昨季の『超変革』ほど目立っていないところを見ると、わざわざ変える必要があったのかとも思ってしまう。もちろんロジャースや西岡も応援しているけど、心の真ん中では若虎にワクワクしたいのだ。

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(山田 隆道)

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