【西武】ライオンズのおしゃべり王はアレックス・カブレラだった

【西武】ライオンズのおしゃべり王はアレックス・カブレラだった

©文藝春秋

■試合前の選手同士の挨拶

 もう何年になるでしょうか、試合開始直前に本塁付近で両軍監督によるスターティングメンバーの最終確認。監督同士の後には審判員との握手があり、個人的に好きなシーンです。アマチュア野球では選手が整列して挨拶を交わし「さぁ始まるぞ!」の気分が高まりますが、プロ野球では監督が代表して行うこのセレモニーを考案した関係者に拍手を送りたいと思います。

 試合前の練習中、お互いに挨拶を交わす場面をよく見かけます。高校や大学、社会人の先輩後輩や同期生、以前のチームメートなど関係は様々ですが、名鑑で知る以外の関係は本人に確かめないと分かりません。以前、渡辺久信監督(現SD)のところにロッテ・細谷圭が駆け寄って言葉をかけていました。高校の先輩後輩でもないのでその関係を渡辺監督に聞いてみました。

「細谷くんは(群馬の)太田市立商業出身で自分(前橋工)とのつながりはないけど、群馬県人はプロの選手が少ないので郷土愛みたいなものかな」とのこと。たしかに、東京や大阪、福岡などの出身選手は数多くいますので、その都度「郷土愛」を発揮していたらキリがありませんから。でも、年長者にとって挨拶を受けたら悪い気はしません。

 ロッテ・伊東勤監督の現役時代のこと。チームの後輩・大塚光二(現東北福祉大監督)にこんな話をしていました。「お前の後輩の浜名は打席でも、全然挨拶してこないぞ。先輩の教育が悪いんじゃないか」と。ダイエー・浜名千広は東北福祉大で大塚の2学年下でした。そして次回対戦時、打席に入る浜名は「伊東さん、こんちは。それと、今まで挨拶しないでスイマセンでした」。しっかり先輩の教育が生かされていたようです。

 球界の趨勢として若い選手ほど大きな声で挨拶し、ベテランに近づくとだんだん声のトーンも下がってきます。なので、ファームに取材に行くと一軍選手との違いが歴然です。しかし、ベテランになっても遠い距離から大きな声で挨拶してくれるのが楽天・松井稼頭央です。何か声が聞こえてくるな、と思いながら周囲を見回すと松井の視線が自分に向いているのです。これは気分がイイものです。現在は対戦相手チームですが、打席に入った時「打てよ!」と思うのは人情ですよね。

■カブレラが守備に就きたがっていた理由

 プロ野球界は独特の発声での挨拶が行われます。正式にはその日の初対面では「おはようございます」なのですが、「オヤッス!」とか「ウイッス!」など、うまく言葉に表せない挨拶が交わされます。ただ、ナイターの場合、外国人選手に向かって「グッドモーニング!」と声を掛けるケースも見かけますが、ちょっと違います。「おはようございます」の中に「朝」は入っていませんので。外国人選手は「オハヨウゴザイマス!」とハッキリした日本語で挨拶することが最近増えてきました。思わず微笑んでしまいます。

 試合が始まって、初回の攻撃時に1、3塁ベースコーチの行動を見るのも興味深いものです。相手のベンチ前を通ってコーチャーズボックスに向かう際、走りながらヘルメットを取って頭を下げるコーチや、一旦ベンチ前で立ち止まり深々と頭を下げるコーチと様々ですが、それも個性のひとつなのでしょう。また、塁上付近でも選手同士や塁審との挨拶も頻繁に目にします。これはこれで良い事なのですが、とくに外国人選手に多く目に付くのが塁上での会話。ひと言、ふた言でしたら構いませんが「会話」はどうでしょう。まぁ、安打を放った相手選手のユニホームを手のひらで触り、自分のユニホームにこすりつけて、ツキをもらう動作まではOKでしょう。

 ケタ違いのパワーを誇ったアレックス・カブレラは、指名打者としての出場の時は機嫌を損ねていました。チームの方針には従わなければいけませんが、しばらくして1塁の守備に就きたい理由が判明しました。元々おしゃべり好きのカブレラは練習時間の合間でも携帯電話を離しません。そんな性格ですから、1塁手として相手選手が塁に来るとしきりに話しかけます。自チームではなく相手チームの選手から「情報収集」したかったのでしょうが困った選手でした。

 東尾修元監督の持論は「相手チームの選手とは仲良くなるもんじゃない。せめて投手同士、野手同士なら分かるけど、試合で直接対戦する相手とはとんでもない話」。最近この意識は薄れているように見えます。時代の流れと言ってしまえばそれまでですけど、その「成果」が乱闘シーンの激減でしょう。当然好ましい場面ではありませんが、選手同士の相手に対する意識の変化からかと思われます。近年の危うい場面は、日本人選手同士はほとんど見かけず、概ね外国人選手が絡んでいるものですから。

 お互いの挨拶は潤滑油として必要ですが、戦う現場では軽めのほうがスマートだと思います。結局は本人の意識次第ということになりますね。

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(中川 充四郎)

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