【新連載】オカンといっしょ #1Brown

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 新作のオッサンは、ヤクザだった。

 レンタルおじさんが始まる遥か昔から、うちではたまに、母によってオッサンがレンタルされてくる。
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 母が仕事で遅くなる日は僕が家で一人ぼっちになるから、寂しくないようにと、TSUTAYAで映画のビデオをレンタルして来ては置いて仕事に行く。

 母が帰って来ると、僕は、さっき見た映画の話をした。

「オカン! 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』ってやつが、めっちゃ、オモロかったで!」

「よかったやん」

「あんな、マーティがおってな、デロリアンに乗ってな、昔に行くねん。ほんで、オカンとオトンを、くっつけよるねん」

「へー」

 僕は、初めてその映画を見た時に、オレも過去に戻ってオカンとオトンを離婚させへんようにしたいと思った。

「ドクっていうジジイも出てきよる。むっちゃ賢いで? 何でも発明しよるねん」

「へー、すごいやん」
 
 母はいつも、僕の映画の感想には上の空で、そっけない返事をする。

「ドクって、どこに住んでんねやろ?」

 西成区にはドクみたいなジジイがいっぱいいて、地べたに寝とる。
 
 あの中にドク、おんのかな? 探そかな?
 
 でも、オレ、まだガキやから、デロリアン、運転でけへんわ。
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 僕は、父親を一度も見た事がなかった。

『シザーハンズ』を初めて見た時に、オトンはもしかしたら両手がハサミで、山奥のお城に閉じ込められてんちゃうか? と思った。

「なー、オレのオトンって、両手、ハサミなん?」

「ちゃうよ。何をアホな事言うてんの?」

「シザーハンズみたいに、一人ぼっちで山奥のお城におんのかな?」

「普通に働いとったよ。あの人、コンピューターの仕事してはったわ」

 オレのオトンは、シザーハンズちゃう。コンピューターの人やってんや!

「なー、オカン、オトンってどんな人なん?」

「普通や」

「なー、どんな人なん? なー、もっと教えてや。どんな人やったん? なーって」

 面倒くさそうな表情を浮かべた母は、福山雅治が映ったテレビを指差して言った。

「この人が、アンタのオトンや」

 僕は、母がレンタルしてくる映画で、一人ぼっちの寂しさを打ち消していた。

 母はそれと同じように、オッサンをレンタルして、寂しさを打ち消す。

 母の新作のオッサンは、ヤクザだった。

(ツチヤ タカユキ)

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