【楽天】終わり良ければすべて良し 松井裕樹の凄みとは

【楽天】終わり良ければすべて良し 松井裕樹の凄みとは

©かみじょうたけし

■奈良大会で声をかけてきたおっちゃん

 終わり良ければすべて良しという言葉があるが、ホントに全ての事柄がそうであると思う。もちろんお笑いにしても同じ事が言える。序盤、中盤がウケても最後のオチが弱いと全体が締まらないし、何か気持ちが悪い。しかし逆に言えばオチさえきっちり決まれば面白い話になる。

 先日、高校野球奈良大会の観戦中に隣に座っていたおっちゃんが僕に声をかけてきた。

おっちゃん「いつもテレビ観てまっせ!」

僕「ありがとうございますっ」

おっちゃん「ホンマに地方大会から観に来まんねんなぁ?」

僕「やめられませんねっ」

おっちゃん「しかし汗でびちょびちょやん?」

僕「この暑さですもん」

おっちゃん「よっし、風呂いこか?」

僕「なんでやねんっ」

 気づいたら知らんおっちゃんと球場近くの「あすかの湯」てとこにおったわけやけど(風呂行くんかい!)、湯船につかりながら、実は息子が今日の第三試合に登場する野球部のOBで、息子のときは奈良県大会決勝まで行ったけど後一歩の所で甲子園を逃したんだという話をしてくれた。しかしそんな話を聞くと第三試合が気になってしょうがない。お風呂もそこそこに二人で球場に戻った。

 ここまでの展開、悪くはないが、やはり最後のオチが大事である。応援の末、勝利しておっちゃんと抱き合って喜んだ。はたまた負けてまた来年頑張って下さいと声をかけた。ではオチとは言えないし、明らかに尻すぼみである。実際には結構いいオチがついた。

 球場に到着、試合前のシートノック中だった。おっちゃんの隣に座っていた女性が突然大声を出した。

「うわっ、もうこんな時間やっ! ちょっと、あんた、保育園に孫迎えにいって!」

 どうやらおっちゃんの嫁さんのようだ。

おっちゃん「えっ、試合始まるし……」

嫁さん「あんた、かみじょうさんは風呂連れていくのに、孫は迎えにいかれへんのんか!!」

おっちゃん「あっ、いやぁ……」

嫁さん「どっちやねんな?」

おっちゃん「いきますわぁ……」

おっちゃん「ほな、かみじょうさんも保育園いこか?」

僕「なんでやねんっ」

 これ、最後の僕を保育園に誘うとこ以外は全部実話なんだけど、ホントによく出来た話だとおもう。

 長々とすみません。話を戻そう。終わり良ければという点は野球ももちろん最終回を抑えないと勝てないので同じ事が言える。7月21、22、23日のオリックス3連戦は3つともにクローザーの状態の差で勝たせてもらったようなものだ。さぁ我らの守護神松井裕樹投手について語ろうではないか!

■板東英二以上? 松井裕樹の凄さ

 7月26日現在43試合に投げ、3勝1敗4ホールド29セーブ、防御率0.20とパ・リーグのクローザーをみてもソフトバンクのサファテと共に抜けている。しかし一番大切な事はチームを勝たせる事、つまり点をやらない、打たれない事が大事。その点で見れば被打率、自責点、防御率ともにサファテを上回る松井投手こそが現在球界No.1と言ってもいいかもしれない。

 そもそもクローザーの素質は高校時代を見ても明らかだった。皆さんは間もなく始まる夏の選手権大会の奪三振記録を誰が持っているか知っていますか? そう、実は松井裕樹……ではなく板東英二さん(83個)なんです。そして2位がハンカチ王子こと斎藤佑樹投手(78個)、ちなみに斎藤投手に記録を抜かれそうになった板東さんは冷や汗をふくのにハンカチを使っていたらしい。そんなことは置いといて、3位が松井裕樹投手(68個)なのである。ただこれはあくまでも個数の順位、板東さんと斎藤投手はともに決勝まで投げ、さらに再試合も経験している。それに比べ松井投手は準々決勝までしか投げていないので比べにくい。そこで9回で平均していくつ三振をとったかを示す「奪三振率」で三人を比較したのだが松井投手の凄さが際立っていた。

板東英二 12.05
斎藤佑樹 10.17
松井裕樹 17.00

 ちょっと一人だけ次元がちがう。あの松坂大輔投手や田中将大投手なんかと比べてもその数字はダントツであった。

 ルーキーイヤーは先発でプロの洗礼もあびたが、高卒とは思えないピッチングもあり4勝。2年目、3年目とクローザーで2年連続の30セーブ以上はもちろん球団初! そして今シーズンここまで29セーブしており、球界最年少通算100セーブまで、あと8つと迫っている!

「終わり良ければすべて良し」

 今シーズンの最後にファンの皆さんと分かち合いたいセリフである。しかし一人の若き左腕が計り知れないプレッシャーと戦い続ける中で紡ぎ続けてくれている事は噛みしめなければいけない。

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(かみじょう たけし)

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