将棋の解説でよく耳にする「棋風」「受け将棋」って何のこと?

将棋の解説でよく耳にする「棋風」「受け将棋」って何のこと?

「会議」の指南役、高野秀行六段 ©石川啓次/文藝春秋

 将棋は「指す」、囲碁は「打つ」。間違えがちな動詞の使い分けだが、長らく将棋ファンにとって将棋は「指す」ものであった。ところが、最近では自分ではまったく将棋を指さず、もっぱらプロの対局を「観る」専門のファンが増えている。

 いわゆる「観る将」の誕生だ。

 ネット配信やモバイル中継、SNSの発展にともなって、「観る将」という言葉はますます一般的になりつつある。そんな「観る将」を自認しているのが、ともに“級位者”のライター・岡部敬史さんと漫画家の「さくらはな。」さん。二人が高野秀行六段に素朴な疑問をぶつけるスタイルが大好評だった『 将棋「初段になれるかな」会議 』の第二弾として、『 将棋「観る将になれるかな」会議 』がこのほど発売された。

「観る将」の“好物”は棋士の所作や服装、食べ物、趣味、師弟関係など多岐にわたるが、もちろん盤上の勝負から目をそらすことはない。勝負の行方を見守るために参考になるのが解説だが、ときおりよくわからない言葉も出てきて――。

『将棋「観る将になれるかな」会議』から気になる部分を抜粋したい。

◆ ◆ ◆

■「棋風」って何?

岡部 まず前から気になっていたのですが、将棋番組では、対局前に棋士の「棋風」について触れますが、この「棋風」とは、何を意味しているのでしょうか?

高野 まずは、居飛車か振り飛車かですね。飛車を最初の位置のまま戦うのが「居飛車」。そして飛車をどこかに振ってから戦うのが「振り飛車」。これによって戦い方が大きく変わるので、まずここを紹介します。

さくら 居飛車の棋士の方が多いですか?

高野 プロでは、居飛車がかなり多いですね。ただ、アマチュアは振り飛車を指す人も多いですよね。ですからプロの振り飛車党には、人気のある棋士が多いです。

さくら 振り飛車の棋士といえば、藤井猛九段。あとは、久保利明九段、菅井竜也七段、鈴木大介九段、戸辺誠七段などが有名ですよね。

■居飛車か振り飛車は、プロ入り前から決めている?

岡部 今の将棋では、居飛車の方が優勢ですか?

高野 たしかにタイトル戦やA級の順位戦などでは、振り飛車は苦戦していますね。ただ、これはプロでもトップ中のトップの話で、それ以外では振り飛車が特別に苦戦しているということはありません。

さくら 居飛車と振り飛車というのは、だいたいプロ入り前から決めているものですか?

高野 小さな頃からやっていると、これを変更するのはなかなか難しいんですよ。ただ、広瀬章人竜王や中村太地七段は、プロになってから「振り飛車では勝てない」と居飛車に転向しましたね。

さくら 広瀬章人竜王は、以前、四間飛車穴熊を得意としていましたよね。

高野 居飛車から振り飛車に転向した人もいて、北浜健介八段などはもともと居飛車党でしたが、今は攻撃的な中飛車を指していますね。片上大輔七段も、もともと居飛車党でしたが、今は振り飛車を指しています。

岡部 棋風には、まず「居飛車」か「振り飛車」があると。

 もう一つ気になるのが「受け将棋」「受けの棋風」などで使われる「受け」という用語。野球やサッカーでいえば「守備」と同義なのだろうか。高野六段が、実戦例をもとに解説する。

■プロの棋士は、総じて「受け」がうまい

高野 これは木村一基九段(先手)と、藤井猛九段(後手)の一戦です。

さくら 木村先生といえば、「受け将棋」で有名ですよね。ニックネームが「千駄ヶ谷の受け師」。

高野 そうです。そして藤井猛九段は、振り飛車のスペシャリストですね。局面1は、先手の木村九段が、4三に飛車を打ったところですが、この飛車はどう使いますか?

さくら 敵陣に打ったわけですから、普通は攻めに使いますよね。

岡部 4一の金取りにもなっていますし。

高野 普通はそう考えますよね。しかし、ここから4手進んだ局面2はこうなっています。

さくら 飛車が竜になって守っている(笑)。

高野 とてもわかりやすい局面を紹介していますが、たとえばこういうのが「受け将棋」ですね。

岡部 馬は受けに戻すとよく言いますが、竜を2枚も受けに使っているんですね。

高野 プロの棋士というのは、総じて受けがうまい。アマチュアの方でも攻めならばプロとくらべて遜色のない人もいますが、受けがうまい人はなかなかいない。そんな受けがうまいプロのなかでも「受けの棋風」と呼ばれるのは、やはり突出しているものがあるわけです。

岡部 技術はもちろんでしょうが、考え方が違うんですかね。

■「受けの棋風」の人は「面倒を見る」のが嫌にならない

高野 大山康晴十五世名人も受けが強いことで有名でした。その大山先生を、私の師匠・中原誠十六世名人は「五目並べではだいたい3で止めるのを2で止めてくるイメージ」といっていました。

岡部 普通の人には、なかなかできないですね。

さくら 攻めたくなっちゃう。

高野 「受けの棋風」の人は「面倒を見る」のが嫌にならない人ともいえるでしょうね。

 敵の攻めの相手をすることを「面倒を見る」といいますが、これを丁寧にできる人。

さくら 「一か八か勝負して、早く帰ろう!」とは、ならない?

高野 ならない。なかなか帰らない。

さくら 「千日手」も辞さない永瀬拓矢叡王とか?

高野 そう。帰る気がないから(笑)。将棋盤の前にいるのが大好きなんですよ。麻雀でいえば、夜中の3時になっても、丁寧に降りられる人ですかね。

岡部 すごくわかりやすいです(笑)。

「居飛車の本格派」がいるってことは、「居飛車の軟投派」もいるの? 「駒がさばける」ってどういう状態? 「味がいい手」ってどんな意味?

「観る将」が気になる質問への答えは、すべて『 将棋「観る将になれるかな」会議 』に書かれている。

(「文春オンライン」編集部)

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